第3話 エネルギーを使った日はさっさと帰るべし
天国であり地獄でもあるカップル席で生きる決意を決めた俺、宵宮夕也は現在質問責めに合っていた...どうしてこうなった?
「ねぇねぇ!宵宮くんと朝野さんって付き合ってるの!?」
「えーっと、どうしてそう思うの...?」
「だって朝見たよ~?宵宮くんが朝野さんをお姫様抱っこしてたの~。」
「い、いやあれはやむを得ない事情がありましたわけでございましてでして...」
もはや自分でも何言ってるかわからない。
「あはは、二人とも顔真っ赤じゃ~ん」
横を見ると朝野さんも顔が真っ赤になっている。可愛い。
そしてこのグイグイくる女子は、
座席は通路を挟んで時雨さんの左隣。
あと、ちょっと胸がデカい。いや、ちょっとどころではない、けっこうデカい。
時雨さんも小さいわけではないのだが、遠野さんはちょっと規格外と言える。
俺も純情な男子なのでどうしても目は吸い寄せられてしまうものだ。仕方ないんだよ。
「時雨ー、夕也がこの女の胸をガン見してんぞ。」
アサヒさん?何を言ってるんですか?
あれ?左隣からドス黒いオーラを感じる...
「夕也くん、そういうのはよくないと思います」
はい、すみません...
なんて反省している俺に遠野さんからの追撃が来る。
「宵宮くーん、奥さんを怒らせちゃダーメーだーぞっ」
気軽にそういうことを言うのはやめたほうがいいと思います法律で禁止しましょう。
「あ、ねぇ宵宮くん、あの小泉さんと幼馴染ってほんと?」
誰だ今新たな爆弾を投下したのは!
「なに!?あの小泉さんと!?幼馴染だと!?」
「おい宵宮ァ!!どういうことだぁ!!」
クラスの男子が急に沸き上がる。
なにこいつらこわ...
悲しいことにこのクラスに中学校が同じだったやつはいないので俺を助けてくれるやつはいない。
「おい宵宮!!小泉さんってさっき入学生代表挨拶したあの人だよな!?高校入試トップ成績で入学した才女だろ!?加えてあの美貌、俺は一目惚れしちまったよ...!」
なんだこいつ一人だけ勢いがすごいな...
名前は...たしか
まぁ悪いやつではなさそうだけど...
「なぁ宵宮!小泉さんを俺に紹介してくれよ!!頼む!!」
前言撤回、悪いやつだ。
小泉さんとは、俺の幼馴染の
なんて感傷に浸っている場合ではない。
笠野が暴走しかけてちょっと女子からの目が
冷たくなってきている。初日からそんなにかっ飛ばしていいのか笠野。
てかみんな楓花のことは入学式の代表挨拶でちょっと見ただけだよね?なんでそんな狂信的なの?
「お、落ち着け笠野、楓花はそんなにグイグイこられると拒否反応を示すぞ。」
「わかりましたよ宵宮くん。落ち着いた大人の男の対応を見せましょう。」
「変わり身が早いなおい。てかなんだよそのちょっと作った声は。鳥肌が立ったぞ。」
クラスに笑いが起こる。
正直高校生活に不安がないわけではなかったけど、みんな面白そうな人ばかりで安心したな。これなら楽しくやれそうだ。
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質問責めからも解放された放課後、といっても入学式の日の学校は昼に終わるので、午後から親睦を深めにカラオケに行こうなんて話になって、俺も誘われたが朝のあれこれで疲れているので丁重に断らせていただいた。
また今度なと声をかけてくれる彼らはやはりいい人なのだろう。
彼らには申し訳ないが今日は帰って寝ようかなんて考えていた俺に天使の誘いが舞い込んだ。
「夕也くん、いっしょに帰りませんか?」
時雨さん、その上目遣いは人を殺せてしまうぞ。だから俺だけにやろうね。
「ゆ、夕也くん?聞いてますか?」
「あ、あぁ、いっしょに帰るね!イエスオーケーはいわかりました!」
初日からこんな美少女といっしょに帰宅できる俺の高校生活、もしかして最高なのでは?
なんて思いながら時雨さんと二人で教室を出て歩き出す。
下駄箱で俺は時雨さんに尋ねる。
「時雨さんの家ってどこらへんなの?」
「ほぇ?」
「あっ、ごめん!いきなり女の子の家聞くなんて気持ち悪いよな...」
「そ、そんなことないです。えっと、私の家はあっちの方です。高校からアパートで一人暮らししてるんですよ。」
そういって彼女が指差した方向はなんと俺が一人(アサヒさんと二人)暮らししているアパートの方向と一緒だった。
でもアパートなんていくらでもあるしな、たまたま方向が近いだけで同じアパートだなんてことはありえないだろう。
「そ、そうなんだ。実は俺も同じ方向なんだよね。それに俺も高校から一人暮らししてるんだ。まぁ、アサヒさんがいるから一人じゃないけどね。」
ちょっと動揺してしまったが、それを気づかれないように時雨さんと同じ帰り道を歩く。
他愛ない話をしながら歩く。
時雨さんが躓く。
歩く。躓く。歩く。躓く。
やっぱりこの子はツイてないんだな...
それにしても帰り道がどこまでもいっしょなんだが?そろそろ俺家に着くんだけど。
俺の住むアパートに着いた...
時雨さんと共に...
「「え?」」
「俺のアパート、ここ...」
「私のアパートも、ここです...」
そんなことある?
朝もこんなこと思った気がする...
「こ、こんなことってあるんだね。よ、よろしくね~。あ、あははは....」
このなんともいえない空気どうすればいいんだよ!
その空気をぶち壊すのはやはりこの人だ。
「あははははは!!!こんなことってあるんだな夕也!!ふふっ、ふっ、あはははは!!!」
そんなに面白いだろうか?
アサヒさん笑いすぎじゃない?
「アサヒさん!笑いすぎですよ!!」
時雨さんに怒られてやんのー。
アサヒさんが怒られてる姿なんてあまり見ないから面白いな。
ってあれ、アサヒさん顔暗くない?怒られてへこむタイプだっけ?
「いや、なんでもねぇよ...」
呟いたアサヒさんは、どこか悲しそうな顔をしていた...
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俺の住むアパート、「崖っぷち」は2階建てのちょっとボロい建物である。
名前や見た目からして不安になる建物だが、一人暮らしに必要な設備はしっかり揃っているし、風呂とトイレも別になっている。そして安い。家賃は月3万だ。
ただ、ふつうの人だったらまだ入居を躊躇うかもしれない。見た目がボロいからね。
なんならネットのレビューで幽霊物件とか言われている。見た目からそう言っているだけで根拠は無さそうだ。
というかここは幽霊物件とは真逆だぞ。
悪い霊の気配が一切しない。
俺がこのアパートを選んだ一番の理由がこれだ。俺とアサヒさんでこの物件を見たときは驚いた。変なものがなんにもいないのだ。
「夕也!このアパートにするぞ!!」
アサヒさんが太鼓判を押すこの物件はもはや神聖なまである。
霊が見える分周りの人より少しだけ影響を受けやすい俺にとってここほど安全なアパートはなかった。
よく考えたら時雨さんも霊が見えるのだからこのアパートを選んでもおかしくないのか?
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俺の部屋はアパートの2階の202号室だ。
階段がガタガタいうの怖いからなんとかならないかな。
部屋に着いたことだし鍵を取り出し扉を開けようとしたのだが....なぜ隣に時雨さんがいるんだ?
「時雨さん?ど、どうして俺の部屋の前までいらっしゃるのでしょう?」
「え、えっと、私の部屋は203号室なんですけど、夕也くんが先に行ってしまったので後をついていくしかなくて...//」
「あ、あー、ごめんなさぁぁあい!!」
このアパートは階段を上ってから201号室202号室203号室と並んでいる。つまり時雨さんの部屋は階段を上って一番奥にあるのだが、俺が先に行ってしまったため内気な時雨さんは言い出せず、そのまま付いていかざるをえなかったということだろう。
申し訳ない。恥ずかしい。
どうして俺の部屋の前までいらっしゃるのでしょうって何を言っているんだ自意識過剰か宵宮夕也!!しっかりしろ!!美少女と一緒に帰れて浮き足立ってるぞ!
「そ、それでは、失礼しますね!!夕也くん!!また明日です!!」
「あ、うん、また明日ね、時雨さん」
去り際も天使だ。
部屋に入ってようやく一息つく。
朝から忙しかった。
遅刻しそうになりアサヒさんと合体して人様の家の屋根を爆走して、落ちてくる鉄骨から銀髪美少女を助けたらその女の子には守護霊が憑いてなくて、その子と同じクラスどころか隣の席になった。
いや、そんなことある?
今日何度目かも分からないセリフを吐く。
でも今日一番の衝撃はこれだよなぁ、
隣の席のツイてない女の子は、同じアパートの隣の部屋に住んでました。
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あとがきもどき
私の文章力不足によって座席の状態が分からないということが起こっていると思うので、できる限りの図解をしてみようと思います。
1ーF教室
教卓
女女 男男 男男
女女 通 男男 通 男男
女女 男男 男男
女女 女男 男男
女女 路 女女 路 男男
女女 女女 男男
女女 男男
自分で書いといてなんですが意味分からない座席ですね
アパート
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201 202 203
階 ────────
段 101 102 103
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キャラがブレそうで怖いですが高校生は多感な時期ということで誤魔化していきたいと思います。
嘘ですキャラ崩壊には気を付けます。
見てくださる方がいらっしゃってありがたい限りです。
これからもゆっくりペースで続きが書けたらいいなと思います。
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