神を【神様ガチャ】で生み出し放題 ～実家を追放されたので、領主として気ままに辺境スローライフします～

１２６話。ルディアと共に魔王を倒す

「まさか、玉砕覚悟の突撃か！？　俺様の【嫉妬の炎】（グラッジファイヤー）で灰になれ！」

　リヴァイアサンの灼熱の炎を、【神炎】で押し返す。だが、僕の【神炎】は途中で失速して消えてしまった。

「ハッ、馬鹿が！　どれだけ強力なスキルだろうが、俺様に向けた途端にパァだぜぇ」

「【聖盾】展開します」

　メリルの生成した白く輝く魔法障壁が、僕の目前に出現する。メリルは僕の意図を察してくれた。

　日常生活では空気の読めないメリルだが、戦術に関しては眼を見張るものがある。

　今だ。魔法障壁によって、リヴァイアサンから僕の身体が隠れた。それが、ヤツの対応を遅らせることになる。

「【ウインド】【スロウ】！」

「なにぃいいいっ！？　魔法だと！？」

　僕は後方に爆風を噴射して加速した。

　さらに【スロウ】をリヴァイアサンにかけて、動きを遅滞させる。

　ヤツはメリルからの魔法攻撃は警戒していたが、僕は剣技かスキルしか使ってこないと高を括っていた。

「狙ってやがったのか！？　腹立たしいほど嫉妬するぜ！」

　魔王の【嫉妬の炎】（グラッジファイヤー）が勢いを増した。

　リヴァイアサンの言動から察するに、このスキルはヤツの嫉妬心に比例して威力が増すようだ。

　リヴァイアサンは相手が強ければ強いほど、自身も強くなる最悪のジャイアントキリングだ。

　メリルの魔法障壁が破れて、地獄の猛火が押し寄せてくる。

「うぉおおおおおっ！」

　僕は猛然とその中に突っ込んだ。

　傍目からは、自殺行為に見えただろう。

　だけど、僕には背中を任せられる頼もしい相棒がいる。

「アルト、任せておいて【世界樹の雫】！」

　僕が喰らった強烈なダメージは、効果範囲が広がったルディアの【世界樹の雫】によって、瞬時に回復される。

　これまでも、ひとりでは勝てない強敵にルディアと力を合わせて打ち勝ってきた。だから、今回もきっと勝てる。その気持ちが背中を押してくれる。

「俺様の【嫉妬の炎】（グラッジファイヤー）を突破しただと！？」

「終わりだリヴァイアサン！」

　僕は渾身の力を込めて、ヤツに加速のついた剣を叩き込んだ。

　ルディアだけではない。ヴェルンドの鍛えた武器に、アルフィンから教わった剣技、メリルの援護に、メーティスから学んだ魔法、クズハの温泉バフ。これは仲間たち全員の力が合わさっての一撃だ。

「おおっ！？　……ちくしょうぉおおお！　裏切り者が、なんでてめぇだけがそんなもにも愛される！？」

　重傷を負ったリヴァイアサンは、ヨロヨロとよろめきながら後に下がった。

「アルトは敵に対しても情けをかけられるもの。振られた腹いせに、相手を破滅させるようなヤツとは器が違うわよ」

「……マスターは私の失敗を許してくれます」

「殿方の嫉妬は、見苦しいですわよ。あなたには自業自得という言葉を送りますわ。ダオス皇子」

「ああんっ！？　俺様を見下すんじゃねぇ、アンナ！　俺様は……皇帝に、お前らの上に立つ男だぞぉ！」

　激高するリヴァイアサンが、ダオス皇子と重なって見えた。まだ、完全にはダオス皇子の魂は消えていなかったようだ。

　だが、もはや問答している余裕はない。

「はぁあああああ──ッ！」

　僕はさらに踏み込んで、追撃の剣を叩き込んだ。

　リヴァイアサンは吹っ飛ばされて、自らが開けた大穴から落下する。

「あぁあああああっ！？」

　重傷を負った上にこの高さから落ちたら、さすがに助からないだろう。

「やったわ、アルト！」

　ルディアが歓喜の声を上げる。

　その時、戦艦全体が激しく揺れた。

「きゃああああっ！？」

「大丈夫か、ルディア！」

　転倒しそうになったルディアを慌てて抱きかかえる。一歩間違えれば、僕たちも空から落ちて真っ逆さまだ。

「マスター、戦艦の墜落まで１分を切りました。脱出を推奨します」

「いや、この艦が王都に落ちたら大惨事だ。墜落を阻止するぞ、メリル」

「そんな無茶な……アルト様、一体どうされるおつもりですか？」

　アンナ王女が驚きに声を震わせる。

「申し訳ありませんが、説明している時間がありません。アンナ王女は【どこからでも温泉宿】で、脱出してください」

　僕はすぐさま、転移ゲートを開いた。

「ルディア様には逃げろと、おっしゃらないのにわたくしには逃げろと……？」

　アンナ王女は不思議なことを尋ねた。

「ルディアは僕の相棒ですが、アンナ王女はこの国の至宝ですから」

「……そう。なんだか嫉妬してしまいますわね」

　少し寂しそうにアンナ王女は微笑した。

「わかりましたわ。アルト様のお邪魔になるわけには参りません。王都の危機に逃げ出すのは不本意ですが……王都の民たちを、どうかよろしくお願いします。」

　戦艦が高度を下げて、ぐんぐんと地表が迫ってくる。その街並みは、僕にとって馴染み深いものだ。

「もちろんですアンナ王女。ここは僕の生まれ育った故郷ですから。必ず守り抜いてみせます」

　僕はそう告げると、叡智の女神メーティスを召喚した。