122話。【フルアーマー巨神兵】が完成。

「おおっ! なんとしたことだ! すさまじい力がみなぎってくるぞ!」


 バハムートが歓喜の咆哮を上げた。

 メキメキと音を立てて角が伸び、全身から発せられる輝きが増す。


「まさか、バハムートが進化した!?」


 【分析(アナライズ)】のスキルで確認すると、バハムートは神竜から神竜王へと進化していた。

 全ステータス値が爆発的に高まっている。


「他のドラゴンたちも、みんな上位種に進化しているのか!」

 

 一度、撃墜されたドラゴンたちも、みな上位種となって復活していた。

 【聖魔竜】と【天竜】に進化した彼らも、巨神兵と互角に戦えるだけの力を手に入れていた。


 彼らの吐くドラゴンブレスと、敵の巨神兵の魔導砲がぶつかり合って、爆発が咲き乱れる。

 い、一体、何がどうなっているんだ……?


「アルト様! これはナマケルの【ドラゴン・テイマー】の効果です。夢みたいな話ですけど……あのナマケルが力を貸してくれたのです」


 聖魔竜に乗って、僕の元に飛んできたイリーナが叫んだ。


「イリーナ、良かった無事だったのか! ナマケルだって!?」


 予想もしていないことだったけど……

 ナマケルも王都の人々が蹂躪されるのが、我慢ならなかったのかも知れない。ここは僕らの生まれ育った土地だからな。


「あいつが協力してくれるなんて……アルトが命を助けてあげたおかげね!」


 ルディアが声を弾ませる。


「後で、ナマケルにもお礼を言わないとな!」


 バハムートが【神炎のブレス】で、敵の巨神兵を一気に薙ぎ払う。ブレスが広範囲化して、さらに攻撃力が増していた。

 敵機は空中で、次々に爆散する。

  

「すばらしい力だ。あの矮小なる者が成長したものだな……空中戦艦まで、すぐに我が主たちを送り届けようぞ!」


 バハムートが急降下してきて、僕たちはその背に飛び乗った。


「頼む、バハムート!」


 そうはさせじと、敵の巨神兵が群がってくる。

 こちらの戦力が増したとはいえ、その数は脅威だ。


『やったのじゃあ! ご主人様、巨神兵の追加武装が完成したのじゃ! 魔法で射出するから、【どこからでも温泉宿】の転移ゲートを開いて欲しいのじゃ!』


 メーティスから緊急の連絡が入った。

 例の巨神兵の強化パーツが完成したらしい。


「ナイスタイミングだ!【どこからでも温泉宿】!」


 転移ゲートを開くと同時に、メタリックな複数のパーツが飛び出してくる。

 それらは、地上で苦戦中の巨神兵に装着された。


『ガガガガガッ! 合体完了! 【フルアーマー巨神兵】爆誕です!』


 巨神兵がガッツポーズを取る。

 その右腕にはヴェルンドのリクエスト通り、ドリルが装着されていた。

 ギュルルルル! と回転するドリルが【フルアーマー巨神兵】に突撃してきた敵機を穿く。


「【ホーミング魔導弾】、発射!」

 

 【フルアーマー巨神兵】の背中の追加パーツが開き、尾を引く光弾がいつくも発射された。それらは敵機を自動で追いかけて、次々に命中、爆破した。


「ガガガガガッ! すばらしい火力! 【フルアーマー巨神兵】は、無敵のロボです!」


「ものすごいパワーアップしているじゃないか!?」


「……後継機である私より、火力で優っているようです」


 メリルが嫉妬混じりの評価をする。

 さらに、巨神兵の背中のノズルが火を噴射し、空へと飛び立った。


「なんと、飛んだ!」


『飛行能力も追加したのじゃ! 重武装化のデメリットである機動力の低下も、これでカバーじゃな!』


 メーティスが喜悦に満ちた笑い声を上げる。


『今じゃ、ご主人様! わらわの【フルアーマー巨神兵】が敵を抑えている間に、空中戦艦に突入するのじゃ!』


「ありがとう。頼むぞ巨神兵!」


「ガガガガガッ! 露払いはお任せください、邪魔な敵機は、すべて撃破します」


 僕たちの行く手を阻もうとした敵機を、巨神兵が放った【オメガサンダー】が撃墜する。電撃の出力も増していた。


「あれも、アルト様の召喚獣なのか!? ドラゴン軍団といい、まさに神話級の戦力だ!」


 王国軍の兵士たちも、形勢逆転に狂喜乱舞した。


「バハムートのスピードも上がっているな!」


 神竜王となったバハムートは、あっという間に空中戦艦に接近する。

 敵の弾幕はメリルが魔法障壁で弾いてくれた。主砲が使用不能になった今、空中戦艦に僕たちの進撃を止める火力は無い。


「ダブルレーザーブレード起動。マスター、突入します」


「よし、行くぞルディア!」


「ええっ、魔王どもをぶっ飛ばしてやりましょう!」


 飛び立ったメリルが二本のレーザーブレードで、空中戦艦の装甲を斬り裂く。内部への侵入口ができた。

 追いかけてきた敵機を、振り返ったバハムートのブレスがなぎ倒す。


「外の敵の掃討は任せよ!」


「ありがとうバハムート!」


 僕はルディアを抱えて、戦艦内部に飛び込んだ。さあ、決着だ。

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