114話。魔王のダンジョンの財宝をゲット

「それじゃ、モカ、聞きたいことがあるんだけど。このダンジョン内にオリハルコン鉱脈はないかな?」


「オリハルコンは、蒼色の光を放っている。暗いダンジョンの中でも目立つハズだ。私の鍛冶の素材に必要なのだ」


 ヴェルンドが補足してくれた。


「きゅきゅーん!(蒼色の光? それなら、よく知っているのだ!)」


「本当か!?」


「目標物の存在を確認。これでアルフィンの剣を修理することが可能となりました」


 メリルがほっと胸を撫で下ろした。


『おおっ! オリハルコンが手に入るとはラッキーなのじゃ。錬金術にも使えるレア素材じゃからな』


 メリルが首から下げた水晶玉から、メーティスの声が響く。


『Sランクの魔獣どもを手懐けてしまうとは、さすがはご主人様なのじゃ。

 そやつらはどうやら地下で、独自の進化を遂げた種族らしいの。【禁書図書館(アカシックレコード)】にも情報が無かったのじゃ。興味深い存在なのじゃ!』


 ヘルズウサギの存在は、メーティスの知的好奇心を刺激したらしい。未知のモンスターと出会えると嬉しいのは、僕も同じだ。


「オリハルコンが手に入ったら、すごいお金になるわね! ガンガン、ガチャに課金できるわ!」


 ルディアも手を叩いて喜んでいる。


「きゅきゅう!(それでは、ついて来て欲しいのだ!)」


「よし、みんな行こう!」


 モカの案内に従って、ダンジョンを進む。

 僕とルディアは、シロに乗った。

 ダンジョン内のモンスターは、僕たちが近づくと逃げていく。どうやらヘルズウサギを恐れているみたいだ。


「……もしかしてヘルズウサギを統率するモカは、隠し階層のボスモンスターなのか?」


「こんなカワイイ子が、魔王のダンジョンの隠しボスだなんて、おもしろいわね!」


 ルディアがクスリと微笑する。


「きゅきゅーん!(その通りなのだ! ヘルズウサギこそ、最強の魔獣! ヘルズウサギを統率するボクは、ここの王者なのだ!)」


 モカはふんぞり返って、自慢げに鳴いた。

 最強の魔獣とか、ボスモンスターというには威厳が足りない気がしたが、つっこまないでおく。


「それにしても、さっきのアルトはカッコ良かったわ! 私を守ってくれた上に、ヘルズウサギを一匹も死なせずにテイムしちゃうなんて! すごいわね!」


「モンスターは僕の大切な仲間だからね。なりより、ルディアは僕が守ると最初に約束したからね」


「ワンワン!(ボクもがんばったよ)」


 シロも尻尾を振って誇らしげだ。

 ご褒美に、シロの頭を撫でてあげる。


「うわぁっ! 感激だわ! アルト、大好きよ!」


 ルディアが僕をギュッと抱擁する。

 ボリューミーな胸が当たって赤面ものだ。それにここまでストレートに好意を向けられると、ちょっと気恥ずかしい。


「そうだわ! 新作お菓子のシュークリームを持ってきたから、一緒に食べましょう。イヌイヌ族がソフトクリームからヒントを得て開発したのよ」


「あっ、いいね」


 そう言えば、小腹が空いていた。


「イヌイヌ族の牧場経営がうまくいったら、甘いお菓子がたくさん作れるわね。私は材料を提供する【農業担当大臣】特権で、試作品をもらえることになったの。ルディア様のお目にかなうお菓子を献上させていただきますワン! ですって。くふふっ! やったわ!」


 ルディアはじつに幸せそうだった。彼女はソフトクリームなどの甘い物に目が無い。


「イヌイヌ族は、ルディアと親密になろうとしているのか。やっぱり彼らは商売上手だな」


 イヌイヌ族の商売がうまくいけば、僕の懐も温かくなるので万々歳だ。


「はいアルト、あーん。どう、おいしい? これはね、アルトのために私が手作りしたのよ」


「うん、おいしい。甘くて、ふわふわの食感だな」


 ルディアが僕の口にシュークリームを運んでくれる。幸せが口の中にとろけて広がるようだった。


「ホント!? まだまだあるからいっぱい食べてね。あと、りんごジュースも……」


「マスター! ありましたオリハルコンです!」


 ヴェルンドが歓声を上げる。

 幻想的な蒼い輝きを放つ鉱脈が、姿を見せた。


「これはスゴイ! これなら最強クラスの武器が作れます。さっそく採掘しましょう! うぉおおおおっ!」


 ヴェルンドがドリルハンマーで、オリハルコン鉱脈をガリガリ掘り出した。


「やったな! モカ、この蒼い鉱石を掘り出すのを手伝ってくれ」


「きゅきゅーん!(おやすい御用なのだ!)」


 モカの号令で、ヘルズウサギたちが怒涛の勢いで、オリハルコンを掘り出してくれる。僕たちはそれを袋に詰めた。

 帰ったらアルフィンもメーティスも喜ぶだろう。


「そう言えば、他に宝箱とか、何か珍しいアイテムとかないかな? もし知っていたら教えて欲しいのだけど……」


 デリケートな話題なので、僕はモカに慎重に尋ねた。

 ダンジョンの財宝は、ボスモンスターが大事に守っているケースが多い。

 宝を寄こせと言えば、せっかくできた信頼関係を壊しかねない。テイムしたモンスターを軽んじれば、造反されるリスクが常にある。

 もしモカが宝を渡したくないようなら、諦めるつもりだった。僕にとって、モンスターとの絆こそが最高の宝だ。


「きゅきゅう?(宝箱とかは無いのだ。珍しいアイテム? よくわからない金属のガラクタが転がっている場所なら知っているのだ)」


「金属のガラクタ?」


 僕は首をひねる。


『もしや!? ご主人様、その場所に案内してもらえるように頼んで欲しいのじゃ! ここは魔王のダンジョン。わらわの考えが正しければ、それはオリハルコンなど目ではないくらいのスゴイお宝のハズじゃぞ!』


 メーティスが何やら興奮した様子で、叫んだ。


「えっ! すごいお宝!? ガチャが何回、回せるかしら! 夢の10連ガチャ!?」


 ルディアが目の色を変える。


「そうなのか!? わかった。モカ、そのガラクタのある場所まで連れて行ってくれ」


「きゅきゅーん!(お安い御用なのだ、ご主人様!)」


 いったいどんなお宝があるのだろう。

 僕は胸の高鳴りを押さえられなかった。

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