83話。神様ガチャで、神造兵器メリルをゲット
次の日──
「アルト様、こちらがアンナ王女殿下よりいただいた100万ゴールドになります」
財務担当大臣のリリーナが、100万ゴールドの金貨が入った宝箱の蓋を開けた。
眩い黄金の光が、室内に溢れる。何度見ても100万ゴールドの大金には圧倒される。これを全部溶かすのだから、【神様ガチャ】への課金は心臓に悪い。
その分、SSRの強力な神を引き当てた時の快感は、天にも昇るものがあるのだけど……
「よっしゃぁあああっ! ついに待ちに待った瞬間が来たわ! みんなで祈りを捧げてSSRを、ぜぇっーたいに当てるのよぉお!」
テンションが爆上がりのルディアが小躍りしていた。
「はい、ルディア様! 創造神様、どうかアルト様にSSRの神をお与えください……!」
その隣では、エルフの王女ティオが創造神に真摯な祈りを捧げていた。
領主の屋敷の外では、大勢のエルフたちが篝火を盛大に炊いて、SSRを当てるための祈祷なるものを行っている。
ルディアいわく、至高の神を降臨させるための聖なる儀式という触れ込みだが……
何というか、かなり宗教じみていた。
「……SSRの出現率は3%なんで、あんまり期待しない方が良いと思うけどな」
今のところ、SSRの神は初回限定特典だったルディアと、キャンペーン中に引き当てたヴェルンドだけだ。
残念だけど祈りを捧げたところで、出現率が上がるようなことは無い。
「何を言っているの!? 真摯な祈りがガチャに通じて、SSRを引き当てるのよ!」
ルディアが仁王立ちして叫ぶ。
「いや、現実的な話をすれば、SSRの出現率が2倍以上になるキャンペーンを待ってから、課金した方が良いじゃないか?」
確率論から言えば、その方が圧倒的に良い。
「ダメ! いくらアルトの頼みでも嫌よ!
この前、期間限定の水着キャラが出現する『夏の戦力強化キャンペーン』が開催されたばかりだもの。
次のキャンペーンは、きっともう少し先だわ! それまで、ガチャを回さずに耐えろというの!? 課金しないと創造神様に申し訳ないわ!」
「い、いや、でもルディア。ガチャに課金する100万ゴールドがあったら他に何ができると思う? 例えば、領地開拓に投資して、もっとお金を増やしてから、キャンペーンを狙って課金するとか……」
新しくやってくる領民たちに、家具付きの家を用意してあげなくてはならない。実は、ちょっと懐事情が厳しかった。
「もちろん、一回ガチャに課金できるのよ! 良いことアルト? SSRが出るまでガチャを回せば出現率100パーだからね! 出現率3%なんて、気合いでどうとでもなるのよ!」
「うわぁ!? もう言っていることが、めちゃくちゃだぁ!」
どうも、しばらくガチャに課金していなかったために、ルディアは禁断症状が出てるようだった。
ハアハア、肩で息をしている。
「アルト様。この100万ゴールドは、アンナ王女殿下より【神様ガチャ】に課金するために賜ったものです。
確かにキャンペーンが始まるまで待ってから、課金した方がSSRの神を当てやすくなるとは存じますが……王女殿下に結果をご報告しなくてはなりませんので、気兼なくガチャを回していただければと思います」
リリーナが上品な所作で腰を折った。
「財務担当大臣のお墨付きが出たわよ。リリーナもたまには良いことを言うわね!」
「たまには……? 私はアルト様の利益と、シレジアの発展を第一に考えております。ルディア様に苦言を申し上げることがあるのも、すべてそのためです」
リリーナは頬を膨らませて心外そうだった。
「【神様ガチャ】への課金も確かに大事なんだけど、ルディアは少々極端なんだよな」
「ふっ……『努力は裏切るけど、課金は裏切らない』という名言を知らないの? 課金すれば、必ずそれはSR以上のレアキャラという形で自分に返ってくるわ。それに課金は、世界をメンテする創造神様へのお布施でもあるのよ! 課金とは世界を救う崇高な行いなの!」
ルディアは鼻息も荒く反論した。
「そんな調子で、よくルディアは破産しなかったな……」
僕は呆れてしまった。
ガチャへの課金のし過ぎで、旧世界は荒廃してしまったというのに。
「もちろん、昔は借金してガチャに課金していたのよ。おかげで、借金取りから逃げるスキルを身に着けたわ!」
「おい」
ルディアの課金への抵抗の無さは、そんなところに起因していたのか。
ルディアを反面教師として、課金にはこれからも慎重になるべきだな。
「ま、まあ、いいや。気を取り直して。さっそくやってみるか……100万ゴールド課金、投入! ガチャ、オープン!」
僕の目の前に、複雑怪奇な魔法陣が出現した。魔法陣から紫電が放たれ、まばゆい光の柱がそびえ立つ。
「来たぁあああっ! ティオ、祈るのよ! SSRよ出ろ! SSRよ出ろ!」
「はい、ルディア様! SSRよ出ろ! SSRよ出ろ!」
ルディアとティオが、両手を合わせて必死に祈りを捧げる。
僕も固唾を飲んで、結果を待った。
「叡智の女神メーティスの使徒。神造兵器メリル、参上いたしました。これより、マスター、アルト様にお仕えします。最初の命令(オーダー)をお与え下さい」
光の中より現れ出たのは、人形のような無表情の銀髪少女だった。完璧に美しいが、感情に乏しいどこか作り物めいた顔立ちをしていた。
『レアリティSR。神造兵器メリルをゲットしましまた!』
『メリルを使い魔にしたことにより、メリルの能力の一部をスキルとして継承します。
スキル【分析(アナライズ)】を獲得しました。
【分析(アナライズ)】は対象のステータスを閲覧できるスキルです』
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名 前:アルト・オースティン
○ユニークスキル
【神様ガチャ】
【世界樹の雫】継承元。豊穣の女神ルディア
【神炎】継承元。神竜バハムート
【天空の支配者】
【薬効の湯けむり】継承元。温泉の女神クズハ
【どこからでも温泉宿】
【スタンボルト】継承元。巨神兵
【魔物サーチ】
【オメガサンダー】
【神剣の工房】継承元。鍛冶の女神ヴェルンド
【ドリルトルネード】
【剣神見習いLv552】継承元。剣神の娘アルフィン
【分析(アナライズ)】継承元。神造兵器メリル(NEW!)
○コモンスキル
【テイマーLv13】
【精神同調】
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