71話。10連ガチャでルディアが進化

「神聖石、投入! 10連ガチャ、オープン!」


 【神様ガチャ】を発動させると、すべての神聖石が輝きと共に消えた。

 これが魔王ベルフェゴールに勝つ最後のチャンスだ。


「させるかよ!」


 魔王がガチャの発動を阻止しようと突っ込んでくる。


「あんたの相手はこの私よ!」


 アルフィンが大太刀を旋風のように回転させて、魔王を足止めする。


「アルフィン、合わせる!」


 追いすがってきた女神ヴェルンドが、ハンマーを魔王に叩きつけた。

 女神ふたりの近接攻撃に阻まれて、さしもの魔王も、たたらを踏んだ。


「くそ! てめぇら……っ!」


『レアリティSSR。鍛冶の女神ヴェルンドをゲットしました!』


『レアリティSSR。鍛冶の女神ヴェルンドをゲットしました!』


『鍛冶の女神ヴェルンドが3段階まで強化されました!

 ヴェルンドが新スキル【ドリルトルネード】を獲得しました!

 【ドリルトルネード】のスキルを継承、使用可能になりました!


 【ドリルトルネード】はどんな物体でも貫き通すエネルギー派を発生させる攻撃スキルです』


「おおおおおおっ!? ドリルハンマーから、夢の遠距離攻撃ができるようになったようです!」


 ヴェルンドが喜びの雄叫びを上げた。


「さっそく使ってみます! 【ドリルトルネード】!」


 ヴェルンドのドリルより、回転する渦巻き状のエネルギー派が発生する。

 魔王は身をかわすが、壁面にどこまで続く大穴が空いた。

 すごい……


『レアリティSR。剣神の娘アルフィンをゲットしました!』


『剣神の娘アルフィンが3段階まで強化されました!

 スキル【剣神見習いLv436】が【剣神見習いLv552】にグレードアップしました!』


「やったー! 私、3段階まで強くなった! って……なんで新スキルを覚えない訳!? ヴェルンド様は覚えたのに!?」


 アルフィンは飛び跳ねて歓喜するが、すぐに顔を曇らせる。


「物理攻撃オンリーにこだわり続けて、いつまでも見習い。そんなアルフィンが私は大好きだ!」


「ヴェルンド様、それフォローになってませんよ!?」


 掛け合いをしながらも、ふたりの女神は魔王への攻撃の手を緩めない。


「チッ……!」


 魔王は激しさを増した猛攻に舌打ちした。


『レアリティR。巨神兵をゲットしました!』


『レアリティR。神竜バハムートをゲットしました!』


『レアリティR。巨神兵をゲットしました!』


「ガガガガガ! 神々の最終兵器、巨神兵! 最終段階まで強化されました! コンプリートボーナスで完全修復されました! 新たなスキルが解放されました!」


 巨神兵がカードより実体化して叫んだ。穴だらけにされていた身体が、傷ひとつ無く復元されている。


『巨神兵が新スキル【オメガサンダー】を獲得しました!

 【オメガサンダー】のスキルを継承、使用可能になりました!


 【オメガサンダー】はスタン効果のある高威力の電撃を放つ攻撃スキルです』


「やったわ! 巨神兵が完全復活よ!」


「巨神兵さんっ!」


 ルディアとティオが巨神兵にエールを送る。


「マスターから与えられた任務『ティオを守れ』。本機は任務続行、敵を排除します【オメガサンダー】!」


 巨神兵の両手から、強烈な電撃の嵐が魔王に向けて放たれる。

 多重起動した魔王の魔法障壁が、【オメガサンダー】を防ぐが、魔王は苦い顔をした。


『レアリティR。神竜バハムートをゲットしました!』


『神竜バハムートが第3段階まで強化されました。

 バハムートが新スキル【天空の支配者】を獲得しました!

 【天空の支配者】のスキルを継承、使用可能になりました!


 【天空の支配者】は超高速で空を飛翔することのできるスキルです。空中での戦闘能力が強化されます』


「我の新たな力が解放されたぞ!」


 魔王の攻撃により、大ダメージを受けていたバハムートが誇らしげに叫ぶ。

 黙れとばかりに魔王から攻撃魔法が撃ち込まれるが、バハムートは巨体に似合わぬ俊敏さで空を飛んで回避した。


 これが【天空の支配者】のスキル効果か。空中戦闘は、バハムートの独壇場になりそうだ。


『レアリティSR。温泉の女神クズハをゲットしました!』


『レアリティSR。温泉の女神クズハをゲットしました!』


『温泉の女神クズハが第3段階まで強化されました。

 クズハが新スキル【どこからでも温泉宿】を獲得しました!

 【どこからでも温泉宿】のスキルを継承、使用可能になりました!


 【どこからでも温泉宿】は、どこからでも温泉宿に帰ることのできるワープゲートを発生させる空間転移スキルです』


「温泉の女神クズハ、参上ですの! マスター、すごいですの! 【どこでも温泉宿】で、お客さんをどこからでも呼べるようになりましたのよ!」


 クズハが僕の隣に出現して、抱き着いてきた。


「クズハ、今は決戦中だ! ティオを連れて温泉宿にすぐに戻ってくれ!」


 クズハの新スキルを使えば、魔王が張り巡らせた結界を突破して脱出することが可能なハズだ。


「はいなの! わかりましたの!」


 クズハは頷くと、ティオの元に駆け出す。


「チクショウ! 次から次へと! させるかよ──ッ!」


 ベルフェゴールが、クズハに向かって大量の魔法の弾丸を飛ばした。


「ひゃああああっ!?」


「私もこれで打ち止めよ。あとは任せたわ……!」


 イリーナの魔法が、魔王の攻撃の軌道をことごとく逸らす。

 それで完全に力尽きたのか、幻影のイリーナは消えていった。


「ああっ、任された!」


 僕が請負うと、イリーナは最後に微笑んだように見えた。

 魔王が更に追撃しようとするとが、アルフィン、ヴェルンド、巨神兵、バハムートが猛撃を加えて阻止する。

 疾走するクズハがティオの手を取った。


「1名様、ご案内ですの!」


 その瞬間、クズハの目の前に『クズハ温泉』と書かれた木造の門が現れた。それはクズハ温泉の玄関そのものだった。

 その証拠に、向こう側には目を丸くしている受付の従業員の姿も見えた。


 ふたりの少女がその門を潜ると、門は跡形も無く消え去った。無事にアルト村の温泉宿に帰れたようだ。


『レアリティSSR。豊饒の女神ルディアをゲットしました!』


「やった! 私が出たわ! アルト、もうひとつ私が引ければ、魔王としてのアルトの力を引き出すことができるようになるのよ!」


 確かルディアは、前にもそんなことを言っていた。


『10連ガチャボーナスで、SSRの神をひとつ貰うことができます。今までゲットした神を指定して強化することもできますが、誰か指定しますか?』


 システムボイスが問いかけてくる。

 もちろん、僕の答えは決まっていた。


 思えばルディアに出会ったことで、この冒険は始まったのだ。

 決戦の締めくくりにふさわしいのは、やはりルディアだろう。


「SSRの豊饒の女神ルディアを指定する!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る