44話。課金ガチャでレアリティSR『剣神の娘アルフィン』をゲット

「ガチャに課金する前に……リリーナ! 今のアルト村の財政状況を教えて欲しい」


「はい! アルト様、ただいま!」


 僕が助けを呼ぶと、一部の隙もなくメイド服を着こなしたリリーナが飛んできた。

 彼女は帳簿を手に持っている。


「えっ、この娘は?」


「リリーナは僕の実家に昔から仕えてくれていた侍女で、アルト村の『財務担当大臣』に任命したんだ。

 数ある大臣の中で、もっとも重要なポストだね」


 様々な事業を手掛けるようになり、人も増えてきた。なので、ぶっちゃけ今の財政状況がどうなっているか、わからなくなってきていた。


 儲かっているようにも思えるが、闇鴉(やみがらす)やテイマーの助手も雇ったし、モンスターも増えてきている。

 こういう状況で、うかつにガチャに課金するのは危ない。


 財務を任せるなら、信頼できる人間でなくてはならない。

 わざわざ、僕のために辺境までやって来てくれたリリーナなら適任だった。


「はいアルト様! もっとも重要なポストをお任せいただけるほど、私を愛してくれているなんて……っ

 光栄でございます! リリーナはご期待に応えてみせます!」


 リリーナは僕に危ない所を助けられてから、若干、様子がおかしい。

 『アルト様は、私を愛してくださっている!』などと言っている。


 間違いではないのだけど、恋愛をしている訳ではないので、周囲に誤解されかねない気がした。


「はぁっ!? な、なにこのメイド。誰がいつ、あなたを愛しているなんて言ったのよ!?

 アルトは私の旦那様なのよ!」


 ぽっと頬を桜色に染めるリリーナに、ルディアが食ってかかる。


「失礼ですが、ルディア様。誰がいつあなた様を娶られたのでしょうか? 冗談はお慎みください」


 いつもは控え目なリリーナが、静かな怒気を込めて言い返した。


「なっ、なんですってぇええ!? 私とアルトは前世からの恋人同士なのよ! 切れない固い絆で結ばれているんだから!」


「……ステキな誇大妄想でございますね? アルト様、それで財政状況なのですが」


 ルディアを残念な娘扱いでスルーして、リリーナは語りだした。


「まず収入が、イヌイヌ族との月のソフトクリーム独占販売契約料が30万ゴールド。

 温泉宿の収入が諸々含めて現在までに12万ゴールド。魔王のダンジョンからの収入が20万ゴールド。

 ヒールベリーや農作物を売った収入が10万ゴールド。

 合計72万ゴールドです」


 おっ、初月から、そんなに収入があったのか。かなり良い成績だぞ。


「支出はモンスターの餌代が10万ゴールド、人件費20万ゴールド、雑費5万ゴールド……合計で35万ゴールドです。

 アルト様の手腕により、収支は見事なまでの黒字となっております。

 臨時収入が、合計100万ゴールドありますので。一度だけなら、ガチャに課金していただいて問題ありません」


『【神様ガチャ】は基本無料でお使いいただけますが、一部コンテンツが有料となっております。課金する際は、無理のない範囲で行って下さい』


 リリーナの説明が終わると、目の前に光の文字で注意書きが表示された。


 創造神様も2000年前、ガチャ廃人を生み出し過ぎて、世界を崩壊寸前まで追い込んでしまったことを反省しているらしい。


「ルディア様は、豊饒の女神様とうかがっておりますが。100万ゴールドものお金を軽々しく使うのをオススメするのは、どうかおやめください。

 財務状況に照らし合わせて、無理のない範囲で課金しなければ、領地経営はままならなくなります」


「ぐぅむむむむむっ!?」


 ド正論を言われて、ルディアは押し黙った。

 

 ガチャは正しく使えば繁栄をもたらすが、限度を超えれば人を破滅へと導く危険な力だ。


「ありがとう。リリーナが財政状況をしっかり管理してくれれば。僕はガチャの闇に呑まれずに済むと思う」


「はい! アルト様のお力になれて、リリーナは幸せです! これからも未来永劫、アルト様のお側に!」


 リリーナはあふれんばかりの笑みを見せた。


「よし、じゃあいくか。100万ゴールド課金、投入! ガチャ、オープン!」


 僕の目の前で、まばゆい光が弾けた。

 現れ出たのは、身の丈を越える反った剣を持つツインテールの少女だった。


「剣神の娘アルフィン。マスターの召喚に応じ参上したわ!

 お父様から受け継いだ我が剣の誇りにかけて、マスターを守護することを誓います……って、あっ! そこのルディア! なに嫌そうな顔しているの!? お父様じゃなくてハズレとか思っているでしょ!」


『レアリティSR。剣神の娘アルフィンをゲットしましまた!』


『アルフィンを使い魔にしたことにより、アルフィンの能力の一部をスキルとして継承します。

 スキル【剣神見習いLv385】を獲得しました。


 【剣神見習いLv385】は剣技を3.85倍の威力で使えるようになるスキルです。スキルレベルが上がると威力もアップします』


―――――――


名 前:アルト・オースティン


○ユニークスキル

【神様ガチャ】


【世界樹の雫】継承元。豊穣の女神ルディア。


【神炎】継承元。神竜バハムート。


【薬効の湯けむり】継承元。温泉の女神クズハ。


【スタンボルト】継承元。巨神兵


【魔物サーチ】継承元。巨神兵(強化型)


【神剣の工房】継承元。鍛冶の女神ヴェルンド


【剣神見習いLv385】継承元。剣神の娘アルフィン(NEW!)


○コモンスキル

【テイマーLv12】

―――――――

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