33話。巨神兵がパワーアップ。新スキル【魔物サーチ】を獲得

 朝、目が覚めるとルディアの顔のドアップがそこにあった。


「おおぅっ……!?」


 思わずギョッとして、ベットから転がり落ちてしまう。


「すぅすぅ〜。うーん、アルトぉ、大好きぃ……」


 ルディアの幸せそうな寝言が聞こえてきた。

 ど、どんな夢を見ているのだか。


 それにしても、僕のベッドに潜り込んで来るなんて非常識だな。

 何か間違いがあったら、どうするんだ?


「おれっ? アルト。おはようっ」


 ルディアが目を開けて、うーんと伸びをした。クズハお手製の浴衣がはだけて、ドギマギしてしまう。


「おはよう……って、なんでこんなところで寝ているんだよ」


「ええっ? 夫婦が一緒に寝るのは当たり前でしょ?」


「いや、だから、結婚していなし。部屋に勝手に入って来ないでくれよ」


 鍵をかけていたハズなんだが……


「それより、はい。今日のログインボーナスの【神聖石】よ!」


 ルディアが懐から虹色に輝く石を取り出して、渡してくれる。


「おめでとう! これで【神聖石】が、10個貯まったわね! 2連ガチャが回せるわ」


「確か2連ガチャ以上なら、無課金でもレアリティSRの神様が出現する可能性があるんだよね?」


「その通りよ! ガチャは、連続で回せばレアリティの高い神が出るようになっているの。

 無課金でも10連ガチャなら必ずSSRの神が一体もらえるわ」


 この話を聞いて僕は【神聖石】を10個貯めていたんだ。

 本当は10連ガチャに挑戦したいけど、それには【神聖石】を貯めるのに2月近くかかってしまうので、あきらめた。


 エルフのティオ王女をかくまっている以上、ダークエルフがいつ襲ってくるかわからない。

 戦力アップは、なるべく早く行っておきたかった。


 それに最近は、ガチャを回すのが楽しみになってきている。

 無課金ガチャにはリスクがないしね。


「じゃあ。さっそく、神を召喚してみましょう!」


「そ、その前に、ちゃんと服を着ろぉおお──っ!」


 立ち上がったルディアのあられもない格好に、僕は慌てて目を反らした。

 まったくルディアは無防備すぎるな……



 朝ご飯を食べた後、ルディアと一緒に外に出た。


「神聖石、投入! 2連ガチャ、オープン!」


 【神様ガチャ】を発動させると、まばゆい光が弾ける。

 これ、これ。この瞬間が、一番ワクワクするんだよな。


『レアリティR。巨神兵をゲットしました!』


『レアリティR。巨神兵をゲットしました!』


「あれっ?」


 ……すでに手に入れている巨神兵が2回出た?


「ガガガガガ! 神々の最終兵器、巨神兵! 第3段階まで強化されました! 新たなスキル解放がされました」


 喚んでもいないのに、巨神兵がカードより実体化して叫んだ。


『巨神兵が強化されました!

 巨神兵が新スキル【魔物サーチ】を獲得しました!


 【魔物サーチ】のスキルを継承、使用可能になりました!


 【魔物サーチ】は半径5キロ以内にいる魔族、モンスターの存在を感知できるスキルです』


―――――――


名 前:アルト・オースティン


○ユニークスキル

【神様ガチャ】


【世界樹の雫】継承元。豊穣の女神ルディア。


【神炎】継承元。神竜バハムート。


【薬効の湯けむり】継承元。温泉の女神クズハ。


【スタンボルト】継承元。巨神兵


【魔物サーチ】継承元。巨神兵(強化型)(NEW!)


【神剣の工房】継承元。鍛冶の女神ヴェルンド


○コモンスキル

【テイマーLv12】

―――――――


「あっ、アルト。説明していなかったけど。ガチャで同じ神や神獣が当たることもあるのよ。

 その場合は、もともとの使い魔が最大5段階まで強化されて。3段階目と5段階目に、新たなスキルが獲得できるの!」


 ルディアが得意そうに説明する。

 ああっ、なるほど。同じ巨神兵が出たのは、決してハズレだったのではない訳だ。


 【神様ガチャ】は奥が深いスキルだな。もともと強い巨神兵がさらに強化されたのには、驚きだ。


 でも、なんだろう……


「できれば新しい神獣が欲しかったな」

  

「ええっ!? でも使い魔がドンドン強化されて、レアリティRの神獣でもSSRの神に匹敵するほど強くなれるのよ!」


『キミのお気に入りの神や神獣を、最大レベルまで強化しよう!』


 システムボイスが、ルディアの解説を補足してくれた。


 えっ、ちょっと待てよ……

 神様が強化されるのは良いけれど。


 SSRの神は、課金ガチャで3パーセントの出現率だから。

 5つ同じSSRの神を当てようとしたら、天文学的なお金が必要になるんじゃないか?


「ガガガガッ、マスター。巨神兵は強くなったのです。うれしくないのですか?」


 巨神兵は心なしか、肩を落しているようだった。


「あっ、いや。うれしくないわけじゃないんだ。新しいスキルも手に入ったし。それじゃ、カードに戻ってくれ」


「ガガガガッ、任務完了につき帰還します。巨神兵は、必ずお役に立ちます」


 巨神兵は光の粒子になって溶け崩れ、僕の手に収まってカードになった。


 わ、悪い。本音を言えば、バハムートが当たって欲しかったのだけど……

 【魔物サーチ】のスキルか。


「モンスターの中には、姿を隠す能力を持ったモノもいるし。【魔物サーチ】はなかなか便利そうなスキルだな」


「テイマーのアルトにぴったりの力ね!」


 ルディアも笑顔になっている。

 確かにその通りだ。後でさっそく、試してみるか。


 すると、鍛冶の女神ヴェルンドが、ロングソードを持ってやってきた。


「マスター。量産品の鉄の剣が、とりあえず10本できました。限界まで鍛え上げたつもりですが……試してみて欲しいです」


 ヴェルンドには武器を作ってもらっていた。SSRランクの神はルディア同様、『自立行動スキル』を持っているらしい。

 実体化させ続けるのにMPを消費しなかった。


「古竜の鱗くらいなら、簡単に切り裂ける性能になったと思いますが……

 この程度のショボい剣で申し訳ないです」


 ヴェルンドは、すまなそうに頭を下げた。

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