28話。鍛冶の女神ヴェルンドに武器を作ってもらうことになる
「お、おい、なんだっ、この露出狂みたいなネーちゃんは?」
剣豪ガインが、出現した鍛冶の女神ヴェルンドを見て、呆気に取られた。
彼女は水着みたいな布面積の少ない服を着ていた。
僕も目のやり場に困ってしまう。
「ヴェルンドの持つ【創世の炎鎚】は、炎の力を宿した宝具だからよ。少しでも涼しく過ごすために、ヴェルンドは薄着をしているの」
ルディアが鍛冶の女神ヴェルンドについて、解説する。
そういば、あの巨大ハンマーからジリジリとあぶられるような熱気を感じるな……
あっ、ソフトクリームが熱で溶けて、ゆっくり食べていたイヌイヌ族が涙目になっている。
「【創世の炎鎚】のような宝具を持っている神は、SSRの中でも激レアよ! それになんといってもヴェルンドは……」
「私は武器を作る鍛冶の女神です。マスターにふさわしい武器を作って差し上げたいのですが。
この村にはオリハルコンや神鉄(アダマンタイト)はないのでしょうか?」
ヴェルンドが僕に尋ねてきた。
「そんな神話に登場するような激レア金属は無いな」
さも有るのが当然のように言われて、当惑してしまう。
「困りました。では、ミスリルくらいなら、ありますでしょうか?」
「それも無い……」
ミスリルは最高級の武具が作れる魔法金属だ。
かなり高価であり、Sランク冒険者くらいの稼ぎが無いと、ミスリル製の装備は買えなかった。
オリハルコンや神鉄(アダマンタイト)は、さらに希少な伝説級の金属だ。
1000万ゴールドかけても手に入る物じゃない。
「それではマスターの手元にあるのは、鉄くらい? それだと、せいぜい古竜を一撃で屠(ほふる)る程度の武器しか作れませんが……」
「「いや、それで十分だから!」」
ルディアを除いた、その場にいた全員からツッコミが入った。
それ以上の性能を求めるなんて、一体何と戦うつもりなんだろうか?
「えっ? 魔王と戦うにはもっと強い武器が必要でしょう?」
ルディアは、なにやら首を傾げて、とんでもないことを言っている。
「いや魔王と戦うつもりとかは無いから。そのために復活を阻止する訳だし。
僕はここで、モンスターたちとの楽園を築いて、ノンビリ楽しく暮らすつもりなの」
そのための自衛の戦力は必要だが、古竜を倒せるほどの武器があれば、武装についてはもう十分だ。
「や、やりがいがありません。より強い武器を、もっともっと強い武器を作るのが、私の生き甲斐なのに……その程度の武器で満足されては」
鍛冶の女神ヴェルンドは、シュンとしていた。
女の子に残念そうな顔をされると、ちょっと罪悪感が湧くな。
「イヌイヌ族さん。ミスリルも用意できますか?」
僕はミスリルを注文できないか、尋ねる。
「もちろん。ご用命とあらば、最優先でご用意させていただきますワン!」
イヌイヌ族は、さらなるビジネスチャンスに目の色を変えた。
「ミスリルのお値段は、1キロ、20万ゴールドほどが相場になりますワン!」
げぇっ。やっぱり高い。
ロングソードの一般的な重量が1.1kg~1.8kg。ミスリル製の剣を作ろうとしたら、材料費だけで、一本25万ゴールドはかかる計算だな。
鍛冶の女神ヴェルンドにミスリルをプレゼントしてあげたいのはヤマヤマだげと……
「うーん、それならガチャに課金した方が、費用対効果が良さそうだな」
今回も【神剣の工房】という指定した武器の攻撃力を5倍にアップするスキルが手に入った訳だし。
古竜を倒せるほどの剣をこれで強化すれば、もう無敵だと思う。
「そうでしょう。そうでしょう! お金があったらガチャにつっこむ! 世界を救うために、それはとっても正しいことだわ!」
「グスッ……ルディア、希少金属が手に入らないと私の存在意義が……」
ルディアを見つめる女神ヴェルンドは、なにやら涙を浮かべていた。
「ああっ、まあ、それもそうよね。魔王と戦える武器も用意しておきたいところだし、お金のやり繰りが大変だわ」
ルディアが腕組みして悩んでいる。
「それでしたら、出血大サービスでミスリルの剣を一本、無料で差し上げますワン。
アルト様たちと、今後ともぜひ長くお付き合いさせていただきたいですし。
これでいかがでしょうかワン?」
「こ、このワンちゃん。イイ子……!」
提案したイヌイヌ族のリーダーを、女神ヴェルンドが抱きしめた。
「て、照れるって……痛いワン!」
なにやら、イヌイヌ族が絶叫している。
強く抱きしめ過ぎたようだ。
「イヌイヌ族は力が弱いんだから、ダメだって!」
僕は慌てて、ヴェルンドを引き剥がした。
こ、これまた個性的な女神が仲間になったな。
とりあえず鍛冶の女神ヴェルンドには、アルト村の『鍛冶担当大臣』になってもらとしよう。
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