27話。課金ガチャでレアリティSSR。鍛冶の女神ヴェルンドをゲット

 独占販売権として、ソフトクリームの売上の他に毎月30万ゴールドが入ってくる。

 さらに手付金として、最初に100万ゴールド。

 これはメチャクチャ良い条件だったが……


「でも今のところ、リーンとティオ王女しかソフトクリームを作れる人材がいなくて。

 牛乳が搾れるモウモウバファローも一頭ですし。そんなに大量生産できませんが?」


 もともと、村にやってくる観光客を相手にした小さなビジネスのつもりだった。


 僕が問題点を正直に口にすると、イヌイヌ族たちは大騒ぎとなった。


「な、なんと!? 『エルフのお姫様の手作りソフトクリーム』ですかワン!」


「す、すごい付加価値だワン! 1個3万ゴールドくらいの値段にして、王都の富裕層に吹っかけて売るワン!」


「容器のデザインなんかも凝ったモノにして……ゆ、夢が広がるワン!」


「大儲け! 大儲けだワン!」


 イヌイヌ族たちの目がギラギラと輝き、興奮から息を荒上げている。

 普段はカワイイ彼らが、なにか怖かった。


「えっ? でもティオ王女は、そのうちエルフの国に帰ってしまいますし。

 『エルフのお姫様の手作りソフトクリーム』として売り出すというのは、後で困るのでは?」


「大丈夫ですワン! 最初はお姫様が実際に手作りしているところを観光客に見てもらって、ブランドを作って。

 あとは従業員を雇って大量生産できる体制を徐々に整えますワン!

 モウモウバファローも専用の牧場を作って管理しますワン!」


「つまり、ティオ姫様には最初だけお手伝いいただいて。あとは監修者として、お名前を貸していただければ良いんだワン!」


「えっ、大丈夫なんですか、それ?」


「他の商会はどこもふつうにやっていることですワン! まったく問題ありませんワン!」


「中身も大事ですが、キャッチコピーとブランドイメージで商品は売れますワン!

 ボクたちと未来永劫、お金儲けしましょうですワン!」


 イヌイヌ族は浮かれまくって小躍りしていた。


「なにか、よくわかりませんが……みなさんに喜んでいただけて良かったです」


 ティオ王女は、キョトンとした顔をしながらも、口元をほころばせた。


「金だワン! 金だワン!」


 と叫ぶイヌイヌ族に、王女の護衛のエルフたちはドン引きしている。

 世間知らずのお姫様に、毒の強いモノを見せてしまったかも知れない。


「それじゃ! イヌイヌ族のみんな! 今すぐ100万ゴールドちょうだい! ガチャに課金するのよ!」


「ワン!?」


 ルディアが必死の形相で、イヌイヌ族に詰め寄った。


「わかりました、ワン。契約を早く済ませたいのは、ボクたちも一緒。すぐにご用意しますワン」


「ご領主様! ボクたちは王国の法律に則った正しい商売を心掛けていますワン!

 どうか安心してソフトクリームの独占販売を任せて欲しいですワン!

 これはみんなを幸せにするお仕事なんですワン!」


「そうですか。それなら良いんですが……」


 尻尾をちぎれんばかりに振るイヌイヌ族に、やや不穏なモノを感じるが。


 彼らは正直者だと評判も良い訳だし。

 真っ当な商売をしているというのなら、大丈夫だろう。


 なにより、僕は領主としてダークエルフに対抗するための力が欲しい。


 この前、村の仲間の死を目の当たりにして、戦力強化の重要性を改めて思い知った。

 金で命が買えるなら、安いモノだ。


「ワン! それではこの契約書にサインを!」


 僕は差し出された契約書にサインする。

 すると目を輝かせたイヌイヌ族が100万ゴールの入った箱を持ってきた。


「よし。さっそくガチャに課金してみるか!」


 毎回、100万ゴールドを突っ込むのは、わりと勇気が要るんだけどな。

 だんだん、金銭感覚が麻痺してきそうで怖い。


 だけど、どんな神様が出現するか、ワクワクする気持ちも抑えられないんだよな……

 特に3パーセントの確率でしか出現しないというSSRの神様が気になる。


 SSRの女神であるルディアは『死者蘇生』と『豊穣の力』という、とんでもない能力を秘めていた。そのルディアと同格である訳だ。


 3パーセントなんて低確率じゃ、まず当たらないだろうけどね。


「ひゃぃあああっ! やったわよアルト! 今、特別キャンペーン中で、SSRの出現率が2倍ですって!」


 ルディアが大喜びで僕に抱きついてきた。

 僕の目の前に、光の文字が浮かぶ。


『領地開拓、応援キャンペーン!

 日頃のご愛顧に感謝しまして、今から一週間。バトルにも領地開拓にも役立つSSRの神の出現率を、なんと2倍にアップさせていただきます!

 この機会にガチャを回して、一気にライバルに差をつけよう!』

 

「う、うん? よく意味がわからないんだけど……」


 領地開拓を応援してくれるというなら、なぜSSRの出現率を100%にしてくれないんだろう。

 初回では100%だったのに。


『SSRの出現率がなんと2倍!』

 なんて目立つデカい文字で書いてあるけど……


 6%って、かなり低くないかな?


 当たりを確実に出すためには2000万ゴールドは、注ぎ込む計算になるよね、コレ。


「それに、ライバルに差をつけようって何だ?」


「そこはテンプレの煽り文句なんで、気にしなくて良いわ! さあアルト、気合い入れてガチャを回すわよ!」


 100万ゴールドの金貨を前に、ルディアが頬を叩いて、気合いを入れている。


「祈るのよ! 真摯な祈りがガチャに届いて奇跡を呼ぶの。SSRよ出ろ! SSRよ出ろ!」


 【神様ガチャ】は、すごいスキルだと思うけど……


 SSRをゲットしたいがあまり、課金し過ぎないように自重しなくちゃな。

 下手をすると本気で破産しそうだ。


 ルディアの入れ込み具合に、若干、薄ら寒いモノを感じた。おかげで、僕は冷静になれた。


 イヌイヌ族に頼めば、お金を貸してくれるだろうが。結果はどうあれ、今回はこれ以上、課金しないようにしよう。


「100万ゴールド課金、投入! ガチャ、オープン!」


 僕の目の前で、まばゆい光が弾けた。

 現れ出たのは、巨大なハンマーを持った美しい少女だった。


「鍛冶の女神ヴェルンド。マスターの召喚に応じ、参上しました。神をも屠(ほふ)る至高の武器をマスターに献上いたしましょう」


 ハンマーが振り下ろされると、すさまじいパワーと重量に地面がクレーター状に陥没した。


『レアリティSSR。鍛冶の女神ヴェルンドをゲットしました!』


『ヴェルンドを使い魔にしたことにより、ヴェルンドの能力の一部をスキルとして継承します。

 スキル【神剣の工房】を獲得しました。


 【神剣の工房】指定したひとつの武器の攻撃力を5倍にアップする。武器強化スキルです』


―――――――


名 前:アルト・オースティン


○ユニークスキル

【神様ガチャ】


【世界樹の雫】継承元。豊穣の女神ルディア


【神炎】継承元。神竜バハムート


【薬効の湯けむり】継承元。温泉の女神クズハ


【スタンボルト】継承元。巨神兵。


【神剣の工房】継承元。鍛冶の女神ヴェルンド(NEW!)



○コモンスキル

【テイマーLv11】

―――――――

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