11話。温泉の力でみんながパワーアップ
「クズハじゃないの!? 2000年ぶり!」
「あーっ! そこにいるのはルディアお姉様なの!?」
ルディアとクズハが、お互いに駆け寄って抱き合う。
「な、なんだ? 知り合いなのか?」
「この子は私の眷属女神なの。妹みたいなものよ」
「やぁー! クズハは温泉の女神なの! さっそく、この村に温泉を爆誕させるの! そして、温泉のすばらしさを世界中に広めるの! ビバ、温泉っ!」
クズハが両手を天にかざすと、村の端から水柱が噴き上がった。
「うぉおおお!? なんじゃこりゃ!」
「って、熱っ!? お湯か!」
僕の顔に水飛沫がかかる。
意外なことに温水であり、周囲にモクモクと湯気が立ち昇った。
「くふふふ! このお湯は浴びると、HPとMPが徐々に回復するの。全ステータスを24時間、2倍にする薬効もあるの! エヘン!」
狐耳娘クズハは小さな胸を張った。
「えっ? 全ステータスを2倍って……めちゃくちゃスゴイ効果のある温泉じゃないか!?」
例えばAランクの冒険者が、この温泉に浸かったら、ひとりでドラゴンも倒せるようになるんじゃないか?
「クズハの温泉は、神々も愛用した究極の名湯よ! そして、クズハは私の妹なの! すごいでしょ!」
ルディアが自慢気に叫ぶ。
神様も温泉に浸かるのか? というツッコミはさておき……
僕は自分のステータスを確認してみた。
―――――――
名 前:アルト・オースティン
レベル:25
体 力: 360 ⇒ 720(UP!)
筋 力: 410 ⇒ 820(UP!)
防御力: 320 ⇒ 640(UP!)
魔 防: 150 ⇒ 300(UP!)
魔 力: 60 ⇒ 120(UP!)
敏 捷: 240 ⇒ 480(UP!)
M P: 120 ⇒ 240(UP!)
全ステータスが2倍になりました!
―――――――
「ぉおおおおおっ──っ!?」
驚愕に全身が震えた。
「す、すげぇぞ! 体力と筋力が2倍って……農作業が何倍もはかどるぞ!」
「身体から力が湧き上がる! これならモンスターが襲って来ても、返り討ちだ!」
「おおっ! まるで10代の頃に戻ったようだわい!」
「温泉、最高ぉおおお!」
お湯の飛沫を浴びた村人たちから、驚きと喜びの声が上がる。
「おいおい……地道にモンスターを倒してレベルアップしてきたのが、バカらしくなるほどのバフ効果だな」
剣豪ガインが呆然としている。
「つーか。この村を拠点に冒険すりゃ、誰でも安全にレベルアップできるじゃね……? いや、そもそもこの温泉があるだけで、ここは難攻不落の要塞になっちまっているよな?」
僕もガインの意見に同意だ。
ここの住人は、もはや訓練を積んだ兵士より強いだろう。
「さぁ、ご主人様! ここに温泉宿を建設するの! 女将はクズハが担当するの! ガンガンお客さんを呼んで、ここを有名にするの!」
クズハが両手を広げて、元気いっぱいに叫んだ。
「いいわね! 夫婦専用の混浴露天風呂でアルトと……ぐふふふっ。夢が広がるわ!」
ルディアは、何やら不穏な笑みを浮かべている。それはともかくとして……
「モンスターたちの健康管理のために、温泉を活用するのも良いなぁ」
僕は考える。
モンスターも怪我や病気になることがある。怪我なら回復薬で治せるが、病気については対処法が無くて困っていた。
「はいですの! クズハの温泉は湯治にも最高ですの! 恋の病以外は、しばらく浸かるだけで、バッチリ完治できますの!」
「アルトとの混浴で、恋の病もズバッと解決してみせるわ!」
ルディアが興奮して雄叫びを上げるが、とりあえず無視する。
「よし。さっそく露天風呂を作ろう! ゴブリンたち作業を頼めるか? ハチミツベアーも」
「お任せ、ゴブ!」
「がぉお!(なんだかわからないけど、任せてお)」
ゴブリンとハチミツベアーが賛同してくれた。
力仕事は、ハチミツベアーが担当してくれるのなら、はかどるだろう。
「それじゃ、クズハが指示を出しますの! みんなで最高の温泉宿を作るの!」
「「「お──っ!」」」
「クズハちゃん、最高!」
村総出での温泉宿作りが開始された。
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