第37話勇気

2月になった。

今日は、バレンタインデー。


「冴島先生!これ、受け取ってください!」

「ありがとうございます」

「キャー!!!」

万里は、弘次からもらった紙袋にチョコレートを入れた。


「美有希!今だよ!!」

「由起!?」

女子生徒がはけた後、由起が美有希に耳打ちする。


「冴島先生。これ…」

「河村さん。ありがとうございます」

「先生!これどうぞ」

「渡辺さん。ありがとうございます」

由起も、カモフラージュのために、万里にチョコレートをあげたが…。


「あの子よ。背の低い方」

「え~っ?超ブスじゃん」

あの後。真紀は校内の掲示板に美有希にバラの花束を渡す万里の写真を貼っていた。



その後。美有希は、同級生や上級生からもいじめられていた。

そして、2月始めに万里と一緒に校長室に呼ばれていた。


「河村さん。この写真はどういう事ですか?」

「これは…」

「校長先生!河村さんは悪くありません!僕が勝手に渡しただけなんです!!」

「冴島先生!今は河村さんに聞いているんです。…河村さん。どういう事ですか?」

「それは…。冴島先生が、私の家族のお仏壇に花を添えてくれるために持って来てくれたもので…」

美有希は、とっさに嘘をついた。


「それは、嘘…ですね?」

「──!」

「この花束は、河村さんのために持って来られた──冴島先生、違いますか?」


“嘘がバレてしまった…”

下を向く美有希を見て、万里が口を開いた。


“嘘はつきたくない──”


「申し訳ありません!僕が河村さんに渡したくて渡したんです!河村さんは悪くありません!!!」

「先生!!!」

「僕は、河村さんを愛しています。僕なら、どんな罰(ばつ)でも受けます!だから…だから…!!!」


「冴島先生。ようやく本当の気持ちを話してくれましたね…」

「校長先生…」

「じゃあ残念ですが、冴島先生には、来月で辞めてもらいます」

「はい…」


「校長先生!冴島先生は悪くありません!!私が甘え過ぎたんです!!!」

「河村さん…」

「冴島先生は、家族を亡くして記憶を失くしていた私に、とても優しくしてくれました!そんな先生に私が甘え過ぎたんです!!先生は、悪くありません!!!」

美有希が、興奮のあまり泣き出した。


「河村さん。冴島先生の事が好きですか?」

「はい!大好きです…!!!」

「だったら、よく聞いてください。冴島先生には来月末でここを辞めてもらいますが、これは『けじめ』です」

「『けじめ』?」

「はい」


そう言って校長は、自分の過去を話し始めた──。

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