第33話無垢な君

「お邪魔します」

午後8時。万里は河村家に居た。


「先生、ごめんなさい。家に呼び出してしまって──」

「いいえ。それより、『図書室でできない話』って何ですか?」


「あの…。」

なかなか話し始めない美有希に、万里が話しかける。

「河村さん?」

「先生!」

「はい!!」

「好きです!!!」

「はい…って──ええっ!?」

美有希の急過ぎる告白に、万里は椅子から転げ落ちそうになった。


「どういう事ですか?」

「あの…。私が記憶を失くしている間一生懸命になってくれて、色々してくれて──。それで、好きになっちゃいました…」

「河村さん…」

「でも…。僕達は『生徒と教師』ですよ?」

万里は内心(ないしん)とても嬉しかったが、どの生徒にも言っている言葉を言う。

「それは…」

「それは…分かりますよね?」


「分かって…います──」

美有希は、視線を落とした。


「分かってください──」

万里は『教師』として、そう言うしかなかった。


「冴島先生!」

すると、美有希が抱きついてきた。

「私の気持ち…迷惑…ですか?」

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