第32話道を踏み外して充ちた心

「そうだよ。私は、美有希を愛してるの!いけない事だって分かってる!!でも…でも…!!!」

そう言って、由起は泣き出した。

そんな由起を、美有希は抱きしめる。


「何で?私は嬉しいよ?…『たまたま由起が愛してくれたのが私だった』ってだけでしょう?」

「美有希──」

「私は、“男女関係無い”って思ってるよ」

「ありがとう──」


「美有希は、先生に告白しないの?」

由起が美有希から身体を離し、尋ねる。

すると、美有希は首を横に振った。


「私なんて、迷惑だよ…。冴島先生、たくさんの生徒から告白されてるみたいだし…」

「大丈夫だよ!美有希も、告白してみなよ!!!」

「由起…」



そして翌日。

「河村さん?何か悩み事とかあるんですか?」

「えっ!?」

「何か…。元気が無さそうなので。悩み事があったら、何でも言ってくださいね」


美有希は、意を決して万里に話しかけた。

「冴島先生!お話があります!!」

「はい。何でしょうか?」

「今日、私の家に来てください!」

「図書室ではダメなんですか?」

「それは、ちょっと──」


万里は少し考えた後、答えを出した。

「分かりました。今日は職員会議があるので少し遅くなると思いますが、大丈夫ですか?」

「はい。待ってます」

「じゃあ、お伺(うかが)いさせていただきます。では」

そう言って、万里は体育館に向かった。


“河村…『図書室で出来ない話』って何なんだろう?”

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