第24話ねぇ、思い出して

「兄さん。ちょっと良い?」

「万里か?良いよ」

万里が、健人の部屋に入る。


「──そうか。思ったより速いスピードだな」

「うん」

「でも心配だな」

「何が?」

「記憶が戻るスピードが速すぎる気がするんだよ。あまりにも速すぎると、彼女の心が壊れる気がする…」

「えっ!?」

「とにかく。あんまり周りが焦(あせ)りすぎない事だな。心が壊れたら、元も子もないからな」

「──分かった。ありがとう、兄さん」



翌日。万里は美有希の家を訪れていた。

「河村さん。あれから、何か思い出しましたか?」

「いえ…」

“あれ?何か様子がおかしいな──”

昨日より、明らかに様子がおかしい。

しかし健人の言葉を思い出し、詮索(せんさく)せずにスルーした。


「じゃあ、今日はこれで」

「冴島先生!」

「はい。何でしょうか?」

「いえ。何でもありません…」

“やっぱり、おかしいな…”

「?じゃあ、さようなら」

「さようなら」

万里は、河村家を後にした。


万里が帰り、美有希は自分の部屋に戻る。

“冴島先生…あなただったんですね──”

美有希は、一般入学者選抜の日の事を思い出していた。


「会場に入ったら、すぐに名前とか言ったら良いんでしょうか?」

そう聞いた人物こそ、万里だった。

それを、この日の朝思い出していた──。

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