第23話脱け殻

8月中旬。美有希は、中学卒業までの記憶を取り戻していた。


「とりあえず、渡辺と1組の有森の事は思い出したんだろ?」

「はい…」

「じゃあ。ココを受験して受かった事は、自覚してるんだな」

「いや。ここを受験する手前くらいまでらしいんです…」

「そうか…」

部活中。万里と弘次が話し合っていた。

「河村…。近所の人が面倒を見てくれてるらしいけど…。色々と大変だよな?」

「そうですね。まだ家族が死んだのも信じられないみたいで、時々脱け殻みたいになっています」

「夏休みが終わるまでに記憶が全部戻るとイイけどな」

「そうですね…」


一方。美有希の家では、由起と加奈芽が来ていた。

「美有希、まだ思い出さない?」

「うん…」

「由起ちゃん。『記憶喪失』なんて本当にあるんだね~。美有希ちゃん、本当に思い出さないの?」

美有希が頷(うなず)く。

「『自分が高校生だ』って言われても、全然実感が無くて…」

「…」

「もちろん由起や加奈芽の事は思い出したんだけど。高校受験辺りからの記憶があやふやで──」

「そっか…」


「『家族全員が交通事故で死んだ』って言われても、実感がわかないというか…」

そう言って美有希は、遠くを見つめた。

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