第21話懐かしい思い出

数日後。何とか葬儀(そうぎ)を終え、万里と由起は美有希の家に居た。


「渡辺さん。──河村さんとは小学校からの付き合いなんですよね?」

「はい」

「何か、記憶を引き出せそうな思い出とか無いですか?」

「いや。急に言われても…」

「そうですよね。すみません」

まだ美有希は、記憶を取り戻せていなかった。


「スマホの写真とか、アルバムとか見せたら良いかも!」

そう言ってアルバムを見せたりするが、良い反応が無い。


「美有希、タイポップスが好きだった!」

「『タイポップス』?」

“意外だな…”

「美有希!2階に行こ!!」

そう言って美有希の部屋に向かう。


“あ…bird(バード)だ”

初めにポスターが目に飛び込んできた。

birdはタイのトップアーティストだ。

万里がタイに居た間も、よく彼の曲を聴いていた。

「これはK&B。美有希が大好きなアーティストなんだって。もちろん、birdも大好きなアーティストらしいけど…」

由起が、K&BのCDジャケットを見せる。

“何で、河村がK&Bを知ってるんだ?”

急に万里の顔が赤くなる。

「──先生?」

「…はい!何でしょうか?」

「顔が赤いけど…」

「いえ。何でもありませんよ」

そう言って、必死に笑顔を見せる。

「変なの…」


「美有希。──思い出さない?」

首を横に振る美有希。

“恥ずかしいな…”

「そっか~。『会いたい』って言ってたK&Bでも、ダメか~」

「『会いたい』?」

「うん。2人組のアイドルでさ。Kは数年で芸能活動止めちゃって消息不明らしいんだけど、Bは日本に居るみたいで。『せめてBとは会えないかな~』って言ってた。8歳差くらい?って言ってたかな?」

“ココに居ますけど~!!!”


──そう。

K&Bは、タイにいた頃兄の健人と組んでいたアイドルグループだった。

健人は大学進学のため数年で活動を止めたが、万里は中学卒業まで約6年間活動していた。

もちろん、birdとも仕事をした事もある。


「そろそろ、曲切っても良いんじゃないかな?」

「そうだね」

万里に促(うなが)されて、由起は曲を切った。

“あ~。恥ずかしかった…”

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