第20話突然の事故

夏休みが始まった。

柴田の台本も出来上がり、キャスティング等も決定し、撮影は順調に進んでいた。

ちなみに、美有希は裏方の仕事で由起は役者。

万里も役者として少しだけ出るようになっていた。


そんなある日──。

「本当に大丈夫なの?」

河村家では、美有希以外父・孝一(こういち)の実家に泊まりに行く準備をしていた。

「大丈夫!仕方ないよ。明日からまた学校で撮影があるんだから、休めないよ」

「そうね…」

毎年家族全員で行っていたが、今年は仕方がない。

準備が整い、3人が車に乗り込んだ。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい。お爺ちゃんとお婆ちゃんによろしくね」

「分かったわ」

そう言って、出発した。



翌日。

美有希が学校に行く準備をしていると、電話が鳴った。

「はい。河村です」

「河村さんのお宅ですか?」

「はい。そうですが…」

「河村 孝一さん・絋美(ひろみ)さん・省吾さんのご家族の方ですか?」

「はい。そうですが…」

「──」


「冴島先生!美有希がまだ来てない!」

学校では、まだ美有希だけが来ていなかった。

「渡辺さん。河村さんに連絡してください」

「分かりました!」

すぐにスマートフォンで連絡をするが…

「出ない…」

「まだ、欠席の連絡もありませんが」

「何かあったのかな?」

由起が今度は家に連絡をするが…

「家電も出ない…」

「渡辺さん。河村さんの家、分かりますか?」

「はい。分かりますけど…」

「着いて来てください!みんなは撮影を始めていてください。児嶋先生。渡辺さんと河村さんの家に行ってきますので、よろしくお願いします」

「分かりました。気を付けて」

「渡辺さん、着いて来てください」

「はい」

そう言って2人は、万里の車で美有希の家に向かった。


「先生、ココです」

“ここが、河村の家…”

インターホンを押す。

「こんにちは。晴海(はるみ)高校の冴島と申しますが…」

返事が無い。

「美有希!私~居る~?」

まだ、返事が無かった。

「留守かな?」

「先生!開いてる!!」

「渡辺さん!勝手に中に入るのはちょっと…」

「い~の!私と美有希とは小学校からの親友なんだから!」

そう言って、由起はズカズカと入って行く。

「ちょっと渡辺さん!すみませんお邪魔します!!」

「美有希~?」

「河村さん」

2人で探していると…。


「ちょっ…美有希!どうしたの!?」

「渡辺さん!見付かりましたか?」

「先生!美有希が!!」

美有希はリビングで倒れていた。

万里が美有希を抱き抱える。

「河村さん!」

「美有希!美有希!!」

2人が叫(さけ)んでいると、美有希はゆっくりと目を開けた。

“ボーッとしてる?何かおかしい…”

「河村さん!」

「──」

“やっぱりおかしい…”


そうしていると、電話が鳴った。

万里が受話器を取る。

「河村さんのお宅ですか?」

「はい。そうですが」

「東都中央病院の者ですが。なかなか来られないので、お電話を…」

「どういう事でしょうか?」

『3人が死んだから遺体を引き取りに来て欲しい』という内容だった。

「先生…」

「渡辺さん。河村 コウイチさん・ヒロミさん・ショウゴさんって知ってますか?」

「美有希の家族です。美有希は、4人家族なんです」

「その3人が交通事故でお亡くなりになったそうで、東都中央病院まで遺体の引き取りに来て欲しいそうです」

「──ここは?」

「美有希!心配したよ~」

「河村さん。大丈夫ですか?」

「私の名前は…?」

「…美有希?」

「私の名前は、『ミユキ』って言うんですか?」

「──」


美有希は一気に家族を失ったショックで、記憶を失っていた──。

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