第16話耐えられない…

「万里。何かあっただろう?」

家に帰ると、健人がすぐに尋ねてきた。

「何で分かるの?」

「元々精神科医になりたかったからな~。相手は、例の子か?」

万里は、ゆっくりと頷(うなず)く。


「──そうか。ようやく話してくれたのか。それは良かったけど…か」

「うん」

万里が一通り話した後、健人が口を開いた。

「そのお兄さんに“騙(だま)されてる”って思ってるのかもな。だから、若い男性を信じられなくなってる。万里も『若い男性』だからな~」

「──」

「でも…それだけ詳(くわ)しく話してくれたって事は、万里の事は信用してる証拠(しょうこ)だと思うぞ!お前、もっと自信もっても良いと思うぞ?…まぁ、『先生と生徒』っていうキツい壁はあるけどな。でも、先生と生徒で結婚してる奴等なんて世の中には結構いるはずだぞ!」

「けっ…結婚!?」

“『love』までは考えてたけど、まさか結婚までは…”

「え?結婚とかは考えてなかったの!?ウブだね~」

「兄さん!」


「でも…『love』の好きなんだろ?」

万里が再び頷く。

「だったら、彼女を守ってやれ!とりあえず悩み事を聞いてやれ!!それがお前の役目だ!!!」

「──分かった。ありがとう、兄さん」

「良いよ。いつでも聞いてやるよ。お前の兄だからな」

「…」

「お前は悩み事を1人でため込む癖がある。オレはそれが心配だ。それに…精神科医ごっこも出来るしな」

「兄さん…」

「悩みができたらいつでも来い。聞いてやるから」

「ありがとう」

そう言って、万里は健人の部屋を出た。


“僕は気付いてしまった”

『美有希を愛している』・『隣の家のお兄ちゃん(柊平)に嫉妬(しっと)している』


そして…

“僕の方に振り向いてもらいたい”

“僕だけをみて欲しい”──。

部屋に戻り、ベッドに突っ伏す。

「これじゃあ、教師失格だ」


教師2年目で、生徒を愛してしまった──。

「あと10ヶ月。耐えられるだろうか?」

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