第12話『白雪姫』って、こんなんだっけ?

昨年の文化祭の職員劇は『白雪姫』をやった。


「じゃあ…王子様役は全員一致で。冴島先生、よろしくお願いいたします」

「はい…」

文化祭での職員の出し物でやる『白雪姫』の配役を決めている最中だった。

「じゃあ…お姫様役は…」

「はいはいは~い!オレがやりま~す!」

「え~!?」

職員全員がどよめく。

「えっ?西山先生がやるんですか?」

「だって。『白雪姫』のパロディー版なら、男同士がやった方が盛り上がるでしょ?」

「確かに…」

「いや…」

どうやら、賛否両論らしいが…。

「松本(まつもと)先生。シナリオ、大丈夫ですか?」

「任せてください!演劇部のシナリオも書いてるんですから!楽しみにしててください!!」

松本も奮起している様子だ。


そして台本が出来上がり、万里は驚いた。

例のキスシーンが、白雪姫からするようになっていたからだ。

“さすがパロディー版…”

普通なら眠っている白雪姫を王子様がキスをして起こすはずだが、台本には恥ずかしくてなかなかキス出来ない王子様にしびれを切らした白雪姫がキスをして勝手に起き王子様に驚かれ追いかけ回される…と書かれていた。


“台本、早く覚えなきゃな──”

また始めのページに戻し、台本を読み返す。

『白雪姫:7人の小人じゃないの?』

『小人1:4人で悪いか!』

『小人2~4:そうだそうだ!』

“さすが松本先生。台本面白い!”

数回読み返した後、万里は台本を閉じ、眠りについた。


翌日。

「冴島先生!もう覚えたんですか!?」

「はい。何とか…」

「『台本全部』を一晩で…」

「徹夜(てつや)した…とか?」

「いや。5回くらい…かな」

そう。万里は、元々物を覚えるのが早い。

「はい。じゃあ、始めましょうか!」

演劇部の顧問・松本が元気に言った。

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