第10話こんなハズじゃあ、なかったのに…。

「ただいま!お母さん。私、クラスで1位だったよ!!」

「そう…」

河村家だ。美有希が家に帰ってきてそう言っても、あまり母親は関心が無いようだった。

「お母さん…」

美有希は知っていた。河村家には、学校の成績より大切なものがあるのだ。

「美有希。それよりも、友達は出来たの?由起ちゃんや加奈芽ちゃん以外に!」

「…まだ」

「勉強を頑張るよりも、お友達をたくさん作りなさい!由起ちゃんや加奈芽ちゃんとばかり一緒に居たらダメじゃない!スポーツも出来て友達が多い由起ちゃんをもっと見習いなさい!」

「…」

「返事は?」

「はい…」

“クラストップをとっても誉められないなんて。うちの家族、絶対おかしいよ──”

そう。美有希の父親も、母親と同じ様な考えなのだ。

だから、勉強が出来なくても友達の多い弟の省吾(しょうご)の方が両親から誉められる事も多い。

父親からも「同じ姉弟で、何故ここまで違うのか?」とバカにされる事も多かった。


“こんなハズじゃあ、なかったのに…。本当はもっと誉めて欲しいのに──”

自分の部屋に戻ると、涙が溢(あふ)れてきた。

「何で私の事、認めてくれないの!?」

美有希の切ない声が響いた。

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