第7話規則は守るもの?

夜の見回りが始まった。

深夜の1時20分頃。

学年主任の宮崎が見回っていると…。


「こら!何してるの!?」

「うっわ!バレたわ」

「ごめんなさい!」

「謝って済むと思わないの!ほら、ロビーに来なさい」


「冴島先生、ロビーに来てください!先生のクラスの生徒が、男女の部屋を行き来してたんですよ!!」

「えっ!?」

「冴島先生。遭難の次は、逢い引きですか~?」

弘次がからかう。

「西山先生、からかわないでください!」

「冴島先生、女子全員起こしてください。自分は男子生徒を全員起こしますので」

副担任の児嶋が言う。

「えっ!?」

「こういうのは『連帯責任』なんですよ。早く!」

児嶋はスポ根の塊(かたまり)のような人物だ。

「はい!」


慌(あわ)てて女子全員を起こしに行く。


1部屋目…

「みんな、起きて!」

「何?先生~」

「とにかく全員、ロビーに来て!」

「はぁ~い」


2部屋目…

「…あれ?河村だけ?」

その部屋には、美有希だけが眠っていた。

男子の部屋に行っていたのは、美有希の部屋の生徒達だったのだ。

“寝顔、可愛いな…。──って違う!起こさなきゃ!”

「河村さん起きてください!」

「…う~ん…。──先生?」

「あぁ」

“あぁ…起き抜けも可愛い!”

「大変です。ロビーに来てください」

「ロビー?どうしてですか?」

「事情は後で話します」

「…分かりました」

“急に起こされて、怒ってるのかな?”

「僕は次の部屋に行かなきゃいけないから!」

そう言って部屋を出て、3部屋目に向かった。


“この部屋も、みんな寝てるのか…”

「みんな、起きてください!」


「…じゃあ、全員揃(そろ)いましたね。急に起こされてしまった人はワケが分からないと思うので、これから説明します」

3組の生徒全員正座させられている。

「この中に男女の部屋を行き来していた人達が居ます。私は、『夜はしっかり寝てください』と言ったはずですよね!?」

宮崎の声が、ロビーに響く。

「宮崎先生。あまり大きな声ですと、他のクラスの生徒達が起きてしまいますよ…」

と、児嶋。

「すみません。とにかく!男女の部屋を行き来するなど言語道断です!!」

「そうだぞ!お前達!!」

「冴島先生からも、何か言ってください!」

“うわ~。こういう時って、何を言えば良いんだろう?”

「とにかく!昨日はオリエンテーリングやキャンプファイヤーがあったりしたし、今日も行事がたくさんある。『夜はしっかり寝てください』と言った宮崎先生の言葉を何故聞かなかったんだ?」

「だって…。“夜中にトランプとかしたら楽しいかな~?”とか思ったから…」

「それで男子部屋に行ったのか?」

「はい…」

美有希と同部屋の菊地(きくち)が答える。

「──もう。明日も早いし、とにかく寝させましょうか?もう2時ですし」

「そうですね。じゃあ、各自部屋に戻りなさい」

「は~い」

そう言って、生徒達は各部屋に戻って行った。


「すみません。僕の監督不行き届きです」

「いえ、大丈夫ですよ。主担任1年目なんてこんなモンですよ」

児嶋がフォローするが…。

“本当に『こんなモン』なのかな?”・“ナメられてるのかな?”等、暗い考えがどんどん浮かんでくる。


「髪の色といいピアスやスカート丈(たけ)や今回の事といい…。規則って守るためにあるものだと思うんだけどな…」

と、万里は呟(つぶや)いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る