第64話◇到底足りない
追い詰められたヴィトスは、その真実を受け入れられないのか、表情を大きく歪めた。
その顔は茹だったように赤く、その瞳にはこの状況を生んだディルに対する憎しみだけが浮かんでいる。
「私の命は、これ以上一回分だろうと、貴様には奪わせない!」
ヴィトスがディルを指差す。
瞬間、その指先から光熱攻撃が放たれるが、ディルはまたしてもこれを回避。
「甘いわ案内人!」
だがディルの横を通り過ぎた光の線は、獲物の回避に反応するように角度を変え、今度は背後からディルを貫かんと中空を駆けた。
さすがは第六階層探索免許保持者。
「あんたがな」
しかしそれさえも、ディルを捉えることは叶わない。
まるで背中に目でもついているような動きで、ディルが避けたからだ。
光熱は床を灼き焦がして、消えた。
「~~~~ッ! 一体どうなっている!」
ディルには、己がなぞるべき未来が見えている。
ディルの持つ可能性の中で、目的達成に最も近い幻像を見せてくれる
逆に言えば、達成不可能な道は見えないのだが、ディルは己の可能性を広げる為に様々なダンジョンアイテムを携行し、それらの使用方法を頭に叩き込み、また自身の体を鍛えていた。
ディルは己の幻像を追うべく、ダンジョンアイテムを発動。
――設定、〇.一秒・四倍速。
靴に搭載された任意発動型のアイテムだ。
一時的に今の自分の強化する代わりに、未来の自分に一時的な弱体化を付与するアイテム。
これは『強欲領域』由来、つまりはこの層で入手したアイテムの加工品だ。
『素早さ』の詰まった『強欲の種』を、ダンジョンアイテムの加工を生業とする錬金術師に渡し、作らせたもの。
直接、口にしなかったのは何故か。
『強欲の種』そのものにも、デメリットがあるからだ。
ディルの加速の直後、一瞬前まで彼がいた箇所を光の槍が貫く。
「我が光を、そう何度も避けられるわけがない!」
「避けてるだろうが」
だがヴィトスの驚きも尤もと言える。
よほどのことがなければ、人は光を見て回避することなど出来ないのだから。
そのようなダンジョンアイテムがないとは言わないが、ディルが見ているのは光ではなく自分限定の未来。
光熱の弾幕を越え、更に加速。
「く、来るな……ッ!」
ディルは、ヴィトスの眼前に立つ。
――設定、一秒・十倍速。
この時のディルは、他者にはどう見えているのだろうか。
あまりの速さに、把握できるのは彼の残像だけかもしれない。
とにかく、一秒の中を十倍の速さで動くディルは、その間に彼の命を――二十は奪った。
「あ、あぁ……あぁあ……!」
一秒後にそれを理解したヴィトスは悲鳴を上げながら、転がるようにしてディルから離れていく。
「随分溜め込んでたじゃないか。これで合計二十八回の死だ」
フィールたち三人組の分で三回、授業妨害で一回、アニマを襲わせた分で一回、ムフを泣かせた分で三回、そして今の二十回。
「も、もう気が済んだだろう!? 今回の件でどれだけ君の不興を買ったのだとしても、もう溜飲が下がったんじゃないのか!?」
実のところ、彼の命の残数を聞く必要はなかった。
ディルにヴィトスを殺すつもりはないのだから。
そんなことをすれば、リギルを牢の外に出せなくなる。
最初から、ディルの幻像はヴィトスの命が残り一つになるところで案内を終えるように設定してある。
それでも尋ねたのは、ヴィトスに知ってもらう為だった。
残った命は、一つを残して、全て失われるということを。
「逆だよ、ヴィトス。逆なんだ」
「な、なんだ……?」
「本当なら、あんたの命なんか、何百あったって足りないんだ」
それくらいの罪を、ヴィトスは犯したのだ。
最早、ディル相手に交渉も懐柔も不可能と悟ったのか、ヴィトスの視線がパオラへ向く。
「き、君は法を守る立場だろう! こ、このような横暴を止めるべきじゃないのか?」
「貴様、自分が穴に飛び込む前に抜かしたことを忘れたのか? 逮捕に抵抗したばかりか、我らの殺害を宣言したのは貴様の方だろうが。今すぐ装備を解除し投降するというのなら、そこのマヌケ面を止めてやってもいいが」
「マヌケ面のやつが、この場にいるのか?」
ディルはパオラの方は向かずに、口だけでとぼけてみせる。
「あぁ、昔の仲間でな」
「パオラよ、お前が俺たち以外とパーティーを組んでたなんてショックだよ。この浮気者め」
「マヌケ面とは、貴様のことだ」
「とても傷ついた」
自分を無視して軽口を叩き合う姿に、侮辱されたと感じたのだろう。
ヴィトスは口角泡を吹きながら叫ぶ。
「……どこまでも私をコケにするつもりか、この異常者共がッ!」
やつはディルたちに背を向けて駆け出したかと思うと、黄金の柱の前で立ち止まった。
「ここから逃げ切れるとでも思っているのか?」
パオラの問いに、ヴィトスは自棄になったように笑う。
「貴様らが、想定より優秀だったのは認めよう。だが、私はここで終わるような人間ではないのだ」
彼は腰からナイフを引き抜くと、壁の黄金を削った。
実のところ、柱や壁の破壊といった行動では、まだ甲冑騎士の群れはやってこない。
黄金を盗むという行為に反応するのだと、調査で判明していた。
だから、今ヴィトスがやったように。
削った黄金を手にとった上で、己の懐に入れたりすると。
盗人を罰するために、甲冑騎士の部隊が駆けつける。
甲冑騎士にとっては、ヴィトス以外の人間も同罪。
ディルとパオラだけ見逃してくれるなんてことはない。
その混沌こそが、ヴィトスの狙いだろう。
「……いいや、貴様は終わりだ」
パオラが憐れむように呟いた。
そこかしこから、金属の擦れるような音と、足音が聞こえてくる。
「逆だ愚か者共が。私は『垂れ糸』の場所を知っている。私だけが、ここから脱出する術を持っているのだ。そして、これからやってくる騎士の軍勢を前に、私を追跡することなど貴様らには出来やしない!」
「貴様は何か勘違いしているようだな」
「……なんだと?」
「貴様に、この場を逃げ果せるなどという
甲冑姿の騎士たちが、ディルたちを囲むように登場。
抜剣し、襲いかかってくる。
「パオラ、出番だぞ」
「……黙れ」
そして、パオラの
敵が振るう数十の剣は、
防御側の剣の持ち主は全員――パオラとまったく同じ姿をしている。
「な……なんだ、それは」
逃げ出そうとしていたヴィトスだったが、目の前の光景に呆然と立ち止まっている。
「あんたも聞いたことくらいはあるだろう? こいつの、格好つけた通り名を」
――『一騎当千のパオラ』。
一騎当千とは本来、単騎で千の兵を相手にできるほど、強いという意味だ。
だがパオラの場合は、言葉そのままの意味となる。
からくりはシンプル。
彼女の持つ深淵型能力は『己の分身を作り出す』ものなのだ。
ただし、これは元々、致命的な問題を抱えていた。
こんな妄想をしたことがないだろうか。
自分がもう一人いれば、片方が休んでいる間に、もう片方が仕事をし。あるいは片方が仕事をしている間、片方が遊べる。両方で仕事をして効率を倍に、なんてことも可能。
そんな妄想だ。
だが、実際に分身能力を得ても、そのような都合のいい運用はできない。
もう一人の自分が休んだり遊んだりしているのに、自分が仕事をさせられることを自分は嫌がる。
もう一人の自分が既に仕事をしているのなら、自分まで仕事をせずともよいではないかと自分は考える。
一個の自我を持って分裂した以上、それはもう極めて近しい他人に過ぎず。
たとえ自分自身であっても、容易に制御など出来ないのだ。
プライドの高いパオラならばなおのこと。分身体は、本体からの命令にさえ反発を覚えて従わなかった。
彼女もまた、『外れギフト』の持ち主だったのだ。
それが今や、最大で千人の将となれる能力にまで昇華された。
「ディル、貴様わざと黄金を削らせたな」
本体から、険しい視線が飛んでくる。
すでにあたりは剣戟の音で満たされ、乱戦の様相を呈していた。
光熱攻撃で甲冑騎士の頭部を灼き溶かしながら逃走するヴィトスを、ディルは視界に捉える。
「お前にも仕事をやらないといけないだろ?」
「おい」
「冗談だ。大丈夫、ちゃんとルートは視えてるさ」
「ならばさっさと辿れ」
「あぁ。とは言っても、俺に見えるのは、俺がなぞるべき道だけだ」
「『お前らは死ぬかもしれんが、恨むなよ』か? 聞き飽きたわ、たわけ」
そう言うパオラの口許には、薄笑みが浮かんでいるように見えた。
「今日の連れはお前だけだから、『お前は』だな」
「さっさと行け」
パオラの分身体が更に増え、ディルの道を阻む甲冑騎士たちを押しのけていく。
彼女の能力が実用レベルになるまでは紆余曲折あった。
だが結果だけを語るなら。
全ての分身体を望むように操るコツは、一つ。
『自分の利益の為』ではなく、『自分の大切なものの為』に命令すること。
自分が楽をする為に生み出しても、全員が楽をしようとしてしまう。
全て自分なのだから、欲望も同じ。
同様に、自分の愛する者の危機を救う為に生み出すと、全員がそれを救う為に動く。
全て自分なのだから、救いたいという想いも同じ。
かつて、パオラは仲間の為にこの能力を進化させた。
探索騎士になってからは、正義の為に運用しているようだ。
今日はどちらか。
聞くのは野暮というもの。
ディルはヴィトスを追う。
追いつくのはそう難しくなかった。ダンジョンアイテムさえ不要だった。
甲冑騎士には弱点となる核が存在し、これを破壊することで倒すことができる。
核の位置は概ね頭部に集中しているので、熟練の探索者であれば倒すのはそう難しくない。
だが群れとなると違う。
矢の名手でも、数十の獣が一斉に自分に突っ込んでくる中で全ての個体の急所を撃ち抜けるものだろうか。
おそらく、難しいだろう。
ヴィトスにも同じことが言えた。
「くそ……! 来るな!」
ヴィトスは、己の視界上の敵に関しては手際よく討伐していたが、常に全方位を見渡す瞳など人間にはついていない。
やがて背中を斬られ、足を斬られ、体当たりされ、体勢を崩したところをまた斬られる。
「や、やめろ……! これ以上は……!」
元々、最終手段としてこの策は頭にあったのかもしれない。
甲冑騎士で混乱を招き、その隙に逃げるという策だ。
だが、それが有効だったのは――ディルに命を二十八つも奪われる前までだ。
命の残数に余裕のある状態ならば、多少死んでも構わず甲冑騎士の群れから抜け出せたかもしれない。
だが、今のヴィトスの慌てぶりを見る限り、そのような余裕は感じられない。
「おいディル」「さっさとしろ」「鳥が小動物の雛を嬲る様を、黙って眺めるのは悪趣味だぞ」
周囲のパオラ
口は悪いが、ディルを襲おうと迫る甲冑騎士たちの相手をしてくれているのだ、不満は言うまい。
確かに、ヴィトスは甲冑騎士たちに嬲られていた。
「まずい……もう命が……!」
そしてついに、ヴィトスの背中に切り傷が刻まれた。
もう、余分には死ねないようだ。
ここから先のダメージは、彼の最後の命を削っていく。
元々持っていた、一つの命を。
それだけではない。
一体を光熱攻撃で倒し、別の一体を殴りつけるヴィトス。
先程までなら騎士を吹き飛ばすくらいの力はあった筈だが、カンッという音が響くに留まる。
「……まさか」
「どうした? 『腕力』でも奪われたか?」
別の個体が、ヴィトスの腕を軽く裂いた。
その瞬間、彼の顔が十歳は老け込む。
「今度は簡単だな、『若さ』を奪われた」
ヴィトスが縋るようにディルを見た。
「なんとかしてくれ……!」
厚顔無恥もここまで来ると、突き抜けた個性の一つかもしれない。
ディルは一体二体と甲冑騎士の頭部を斬り飛ばしつつも、積極的に救援はしない。
甲冑騎士はまだ残っている。
「性格の悪さとかを、奪ってもらえたらいいのにな。あぁ、『記憶』を奪われたら性格もリセットされるか?」
想像したのか、ヴィトスの顔が蒼白になる。
「私が必要だろう!?」
「でもあんた、投降する気がないんだろう?」
「う……ぐ……」
ガシャンガシャンと音を鳴らしながら、甲冑騎士が彼に近づいていく。
ディルはそれを見ていた。
幻像は、もう消えている。
案内は終了したのだ。
「わ、わかった……! 投降する! だから――!」
「――パオラ」
「聞こえている!」
複数のパオラが、残る甲冑騎士に殺到し、瞬く間に討伐。
彼女側の被害もそれなりにあったようだが、分身の傷や死は本体に反映されない。
甲冑騎士が砂のように溶け、あとには『強欲の種』が残る。
ディルはヴィトスを斬った個体の位置を覚えていたので、そこに近づき幾つかの種を拾った。
「この中に、あんたの奪われたものが入ってる」
「! か、返してくれ!」
ヴィトスが機敏に反応し、虚空に手を伸ばす。
「いいぞ。だからまずは、あんたがリギルを返せ」
「……ッ」
こういう男は、決して本心から改心はしない。
そんなことは分かっている。
「断ってもいいぞ? その時は、この種を潰す」
「待て! 待ってくれ!」
やつが大事にしているのは自分だけ。
どう教え諭しても、己の悪行を悪とは認識せず、どこまでも他者を責める。
そのような人物に、己の罪を認めさせる方法があるとすれば。
本人が最も大事にしている『自分自身』が損なわれる、という恐怖を与える他ない。
だが彼は、リギルを解放する為には生きた自分の証言が必要だとも理解している。
つまり、殺されることはないという余裕が、心の底に常に残っているのだ。
だから、死以外の恐怖を与える必要があった。
命以外の全てを失う可能性を示す必要が。
そういう意味では、この強欲領域に落とされたのは、幸運だったと言えるだろう。
「あんたの価値は、リギルを外に出せるって一点にしかない。ダンジョンから出たあとで、さっきの約束を反故にするなら、あんたをまたここに連れてくる」
「…………」
ヴィトスは何か言いたげだったが、怯えるように口を噤んだ。
さすがに理解したのだろう。
誰が止めても、それを阻もうと動いても、ディルは必ずそれを実行すると。
ディルに抗うという選択が、己を脅かすのだと、ヴィトスは理解したのだ。
「よし。じゃあまた甲冑騎士の群れが来る前に、さっさとこっから出るか。……あぁ、だがその前に」
ディルはヴィトスに近づいていき、戸惑うやつの顔を――殴りつけた。
彼が吹き飛び、床を転がる。
これ以上、彼が反抗しないよう意識を奪うという目的もあったが。
「一発は、無効化されずに殴っておきたかったんだよな」
二十八回殺したとは言っても、やつには傷一つつかなかったので、実感が得られなかったのだ。
「よしパオラ、分身にこいつ運ばせてくれ。その間に俺が種を……」
『強欲の種』は非常に高価な品なのだ。捨て置くのはもったいない。
「断る。それと、種は既に回収済みな上、そもそも証拠品だ」
パオラの分身体は、いつの間にか消えていた。
そして床のどこにも、種は残っていない。
きっちり拾っていたらしい。
「はぁ……。半分寄越せと言いたいが、まぁ騎士を倒したのはお前だしな」
「そういうことだ」
それに、パオラは『ヴィトスの種』をディルから回収しようとはしていない。
やつに罪を自供させる為に、ディルがそれを握っている方がよいと理解し、見なかったことにしてくれたのだ。
堅物の彼女に、これ以上は求められない。
「じゃあ種はいいとして、なんでこいつを運ぶのを嫌がる。犯罪者を連行するのもお前の仕事だろ」
「貴様が気絶させたのだ、貴様が運べ」
パオラが折れないので、ディルは渋々ヴィトスを肩にかつぐ。
最低限の止血はしたので、死にはしないだろう。
「事件解決だろ? なんでブスッとしてるんだよ、お前は」
ディルは再び
ここから地上へと直通の『垂れ糸』を探す。
それに触れれば、地上に開いた、非公式の入り口へと転移できる。
ディルが歩き出すと、パオラもついてきた。
わざわざ道の正しさを尋ねてこないのは、元仲間ゆえだろう。
「貴様が、肝心なことを相談しなかったことが不愉快なだけだ」
「言ったら、無駄なリスクだって止めただろうが」
「……だが、また黙って決めた」
「またってなんだよ」
「とぼけるつもりか?」
第八階層で妹の肉体を取り戻したあと。
妹が目覚めないという現実を前に、ディルは以前のような探索業は続けられないと悟った。
そしてパーティーを抜けたのだ。
その際に、相談らしい相談をしなかったことを、パオラはいまだに根に持っている。
「……悪かったよ」
リギルも、アニマも、レオナも、ディルの意思を尊重し、その
きっと、裏切られたように感じたのだろう。
「謝るな」
「じゃあ、どうしろって?」
「大きな決断をする時は、仲間に話すべきだ。それだけだ」
パオラが、拗ねるようにディルから視線を逸して言う。
そんな彼女の様子に、ディルは小さく笑った。
「わかったよ、パオラ」
「ならばいい」
それからしばし、なんとも言えない沈黙が流れる。
「それにしても、やはり貴様にとってリギルは特別なのだな」
「はぁあ?」
再び口を開いたかと思えば一体何を言い出すのだ、とディルは顔を顰めた。
「ムフ嬢の分ですら三回だったというのに、リギルの分は二十回だったろう?」
ヴィトスの命の残数を削る時、確かにそう聞こえるようなことを言ったかもしれない。
だが。
「いや、リギルの分はゼロ回だ」
「……では、あの二十回分の死は、誰の分だ?」
ディルは、当然とばかりに答える。
「そりゃもう、さっきぶん殴ったのを含めて、『この事件を解決するために、時間外労働を強いられた俺の分』に決まってるだろ?」
「……まったく、貴様というやつは」
呆れを隠さず、パオラが溜息をこぼした。
「今度こそ危険手当を出してもらう。あと残業代な。お前からも口添えしろよ」
「ディル」
「なんだよ。俺には請求する権利が――」
「お前は立派だ。友を救出する為に、あらゆる手を尽くした。お前とリギルとの間の友誼が、私は少し羨ましい」
パオラはいつも厳しい口調とは違い、柔らかな声、温かな表情で言う。
「……気持ち悪いことを言うな」
「私が囚われても、貴様は同じことをするか?」
その声は、少し寂しげ。
「当たり前だろうが」
ディルの即答が意外だったのか、パオラが目を丸くする。
「そ、そうか……。ありがとう、ディル。嬉しいよ」
珍しく照れたような表情になり、こころなしか頬を染めるパオラだったが。
「どういたしまして。お前の美巨乳が塀の中だなんて、許せないからな」
続くディルの言葉に、纏う気配が氷のようなものへと変わった。
「……感謝は撤回し、貴様は死刑に処する」
「ははは、その方がお前っぽくていいな」
「貴様はいい加減、照れ隠しに露悪的な態度をとるのを改めろ!」
危険極まりないダンジョン内。
ディルたちは、彼の
外に出る頃には。
彼とパオラの間に広がっていた溝は、いつのまにか縮んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます