第21話『Candy Rainであると決めた日 終』

 収録終了直後、泣き始めてしまったあやさん。


スタッフ「ど、どうしたの!?」


綾「っ、ごめんなさい」


笑海えみ「とりあえず、控え室に戻ろう。」


まいさんが綾さんの手を引く。控え室に戻ると、綾さんはしゃがみこんでしまった。


笑海「綾さん」


綾「ごめんなさい、ごめんなさい」


苺「謝らないでください。」


綾「衣装、汚れちゃう」


苺「お着替えしますか?」


綾「うん」


着替えたあとも、綾さんの涙は止まらなかった。


笑海「綾さん、泣かないでよ。」


苺「大丈夫ですよ」


綾「ううん、今日の収録で、Candy Rainキャンディーレインは使えないって思われたら、私のせいよ」


笑海「……」


綾「私……私、アイドルがしたい。モデルのお仕事はありがたい、楽しい、でも、アイドルもちゃんと出来ないのに、もうモデルさんはやりたくない」


「……分かりました。任せてください。」


綾「えっ……」


「モデルの仕事はアイドルのレッスンに差し支えないよう減らします。綾さん1人の露出は大幅に減ります。ファンも減るかもしれません。それでも、いいですか。」


綾「いいです……!私が欲しいのは、Candy Rainのファンだから……!」


笑海さんが綾さんを抱きしめる。


笑海「ありがとう」


綾「ううん、こちらこそ、ありがとう。今日、ふたりと話している間、幸せだった、ずっと」


苺「私も綾さんとのお仕事、楽しみでした」


苺さんの瞳に涙が溜まっている。


綾「……頑張るね。ふたりにはもう迷惑かけたくない。」


Candy Rainが「Candy Rain」でやっていくと覚悟した日。私にとっても、印象深い日となった。


「今日の予定はこれで終了です。この後はもう帰られますか?」


綾「お腹空いた!よし!愛しい苺ちゃんと笑海ちゃんに、ご飯を奢っちゃう!」


笑海「えっ、いいの?」


綾「うん!何が食べたい?」


苺「……餃子……」


笑海「餃子!?」


綾「よし!じゃあ餃子!」


「行ってらっしゃいませ。お疲れ様でした。」


Candy Rain「お疲れ様でしたー!」


このあと私は事務所におもむいた。そして、綾さんのモデルの仕事を減らしてもらうよう、何度も頭を下げた。綾さんの思いは私をかいして伝わり、1週間後には、綾さんは全てのレッスンに参加できるようになった。Candy Rainはこれからぐんぐん伸びる。私はそう確信した。3人の瞳ははるか遠くの同じ山を見つめていた。エイチフェスの後も輝く、Candy Rainの姿を。

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