第19話『Candy Rainであると決めた日 2』

 ボーカルレッスンのスタジオ。


まい「……あやさん、今日も来られないんですよね。」


笑海えみ「うん。」


苺「……毎日お仕事で、すごいですね。」


笑海「うん」


苺「……」


笑海「明日は会えるね、綾さんに。」


苺「はい。」


笑海「緊張するね、テレビ。」


苺「はい。」


Candy Rainキャンディーレインは夜中の音楽番組で少しだけ紹介してもらえることになった。


笑海「……飲み物、買いに行ってくるね。」


苺「はい。行ってらっしゃい。」


レッスン開始まであと15分。


 一方、綾は今日も雑誌の取材。すっかり「ひっぱりだこ」になった。


「お疲れ様です。」


綾「お疲れ様です。」


「大丈夫ですか?少し、疲れが見えます。」


綾「そ、そうですか?ダメですよね、そんなことじゃ。ふたりはもっと頑張ってるんだから。」


「……モデルのお仕事、減らしましょうか。」


綾「えっ……いや……」


綾の心が揺らぐ。私はどうしたいんだろう。何をしたいんだろう。何になりたいんだろう。わざわざモデル事務所からスマイリープロダクションへ移籍してきたのに、またモデルをしている。


綾「……明日は、Candy Rainのお仕事です。楽しみ、すごく。ふたりに会えるのが。」


「はい。おふたりも、気合十分でしたよ。」


綾「……うん。」


綾が俯く。突然始まった「注目の芸能人」の人生。疲れたなぁ。苺ちゃんと笑海ちゃんに会いたいなぁ。


 苺と笑海のボーカルレッスンもスタートした。


苺「あの、ここの高音、どうしても少し、その……変な感じに……」


ボーカル講師「そう?それはそれで苺さんらしいと思うけど。」


苺「そうですか?」


ボーカル講師「うん。ね?」


笑海「そうですね。いいと思います、私は。下手とか、そんなふうには聞こえないかな。」


苺「……それなら、良かったです。」


ボーカル講師「ふたりとも大丈夫?なんか、今日の声、全然元気ないけど。」


笑海「えっ、ほんとですか?……すみません。」


ボーカル講師「心のケアは基本だよ。」


苺「……元気ないですか?」


ボーカル講師「全然元気ない。」


笑海「……Candy Rain、本当に3人の必要あるのかな……」


苺「えっ」


笑海「綾さんひとりで、3人分くらい稼いでる。」


苺「……」


笑海「エイチフェスまでに、綾さんだけが大スターになっちゃう気がする。私たちにはどうすることも出来ない。才能だもん。」


苺「……もう綾さんとは隣を歩けないということですか?」


笑海「……」


苺「Candy Rainって何ですか……?」


笑海「分かんない。」


ふたりだけじゃ、練習が進まないよ。綾さんも一緒に練習したいな。

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