第16話『アイドルをやりたい理由 終』

 愛灑あいさは泣きながら、自分の思いの丈を訴える。


愛灑「……みんなといるのは楽しいよ。みんなのことが好き。だから……」


かおる『……だから……?』


愛灑「壊したくないの。アイドルのことで喧嘩したり、言い合ったりすることがあるのが、嫌なの」


薫『……』


愛灑「モデルの時もそうだった。みんな、いつも仲良しなのに、モデルのことになったら、怖い顔で言い合って……嫌だった……なんで好きなことなのに、そんな顔するの、って……」


華雪かゆき『好きなことだから、ですよ。好きなことだから、怖い顔になるんです。』


愛灑「……」


華雪『愛灑さんとアイドルがしたいです。』


薫『私もだよ……!』


陽菜子ひなこ『愛灑さんも、怖い顔してるときありますよ。』


愛灑「え……いつ……?」


陽菜子『ババ抜きしてるとき。』


薫『あぁ、ババ抜き、楽しかったね。』


愛灑「……ババ抜き……」


華雪『どうして怖い顔だったんですか?』


愛灑「どうしてって……負けたくないから……」


陽菜子『その情熱、ほんの少しだけでも、UTOPIAユートピアに、アイドルに、注いでくれませんか。』


薫『UTOPIAは4人じゃないとダメなんだ。』


愛灑「……」


華雪『あっ、お腹鳴っちゃった……』


薫『あはは、も~、今緊迫したシーンだよ?』


華雪『えへへ、ごめんなさい。』


陽菜子『愛灑さん探しに一生懸命でしたもんね。』


愛灑「……ずっと、私のこと探してたの?」


薫『だって、愛灑に何かあったら、悲しいからね。……愛灑、アイドルをやりたくなくてもいいよ。でも、私たちと一緒にいてほしい。アイドルをやってみてほしい。一緒に探すよ、アイドルをやりたい理由を。』


愛灑「……」


薫『怒られるのは、期待されているから。怖い顔になるのは、真剣だからだよ。大好きだからだよ。私は、愛灑が大好きだから、怖い顔で愛灑を探してたよ。』


愛灑「……うん」


陽菜子『一緒に頑張ってくれますか?』


愛灑「……うん。アイドルをやりたい理由、一緒に探してほしい。」


華雪『はい、もちろんです!』


あや「よし!じゃあ、新しい一歩を踏み出したUTOPIAのみんなに、私が奢ってあげましょう!今どこにいるの?」


華雪『え!いいんですか!?』


綾「いいよ~!」


陽菜子『今、ここは……鷲沢わしざわ通りです!あ、先生に連絡しないとですよ!』


薫『したよ。今日はゆっくり頭を冷やしなさいって。』


華雪『さすが薫さんです~♡』


綾「よーし!じゃあその辺にあるのは……焼肉屋さん!そこにしよっか!そこで待っててね~!」


薫『ありがとうございます!』


綾「うん!じゃあまたあとで!」


愛灑「あっ……みんな……」


薫『うん……?』


愛灑「ありがとう。……私、頑張る。」

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