第10話『粉雪』

 今日は粉雪こなゆきのボーカルレッスンに差し入れを持って行く。


「お疲れ様です!」


舞央まお「お疲れ様~!マネージャー!」


「差し入れです。」


彩乃あやの「わざわざすみません!ありがとうございます!」


ゆい「差し入れ……」


「喉に優しい紅茶です。先日、ARC-EN-CIELアルカンシエルにも大好評だったんですよ。」


舞央「へー!色んなユニットに差し入れ持って行ってんの?」


「そうですね、暇が合えば。」


彩乃「すごいですね……!アイドルの励みになると思います!あ、上から目線ですみません!」


「いえいえ、ありがとうございます。」


唯「美味しい……!」


舞央「あー!先に飲んじゃって、ずるいよぉ?」


「美味しいですか?」


唯「はい。とても上品な味わい……」


彩乃「唯ちゃんが上品だよ……」


舞央「いや、ほんと、それ。」


彩乃「いただきます!……んー!本当に、上品なお味です!」


「そうですか、よかったです!」


舞央「紅茶が美味しいって言えるなんて、偉いねぇ、2人とも。……ん!たしかにこれは美味しいわ!」


「何よりです。」


彩乃「明日、レコーディングなんです。」


「そうでしたね。どうですか?調子は。」


舞央「2人とも上手いんだよ~。唯ちゃんの内から出る上品さと、彩乃ちゃんは幼少期から培ってきた表現力!」


彩乃「舞央さんも、いつものおちゃらけ具合が冗談みたいに素敵な歌声です。」


舞央「ちょっとけなされたよね?今。」


彩乃「ふふ、褒め言葉ですよ!」


舞央「褒められてたのかー!?」


唯「ふふ」


舞央「あれ、笑われちゃった。」


彩乃「……唯ちゃん、可愛いなぁ。」


舞央「可愛いよねぇ。」


唯「な、なんですか、急に……」


彩乃「私、2人といると落ち着きます。粉雪でよかったって思います。」


舞央「え、何よそれ……泣いちゃうんだけど、おばちゃん。」


彩乃「ふふ。子役の頃は、周りの皆さん大人の方ばかりで、緊張しっぱなしで……。」


舞央「そっかそっかぁ……子役やってたのかぁ。偉いなぁ。」


舞央さんが彩乃さんの髪を撫でる。


彩乃「……お姉さんができたみたいです。」


唯「……」


舞央「なぁに?唯ちゃんもなでなでして欲しいのぉ?」


唯「ち、違う!」


舞央「おいで~、よしよしよし~♡」


彩乃「ふふ、くすぐったいです」


唯「ん~、鬱陶しい!」


舞央「わ~、ひどーい!お姉ちゃん泣いちゃうよ~?」


彩乃「ふふ」


私の存在を忘れて、じゃれ合う粉雪。でも、たしかに粉雪の歌声は息が合っている。心が揃っているんだ。


「舞央さん、妹がいるんですか?」


舞央「いないよー?ひとりっこ!」


彩乃「え!そうなんですか!?」


唯「面倒見がいいから、下がいると思ってた……」


舞央「面倒見いい!?ほんと!?えー、嬉しいなぁ~♡」


粉雪は心配いらなそうだ。

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