第9話『DEMURE』

 今日はDEMUREデミュアにお願いがあると呼ばれ、ダンススタジオにやって来た。


「どういった用件でしょうか。」


そこには、ジャージ姿のDEMUREが待ちかまえていた。


ヒカリ「私たちのダンス、見ててほしい!」


れいむ「え~、もういいですよぉ。マネージャーさんも忙しいんでしょうし……」


「いえ、今日は大丈夫ですよ。」


れいむ「あれぇ……そこは今日も忙しくあってほしかったなぁ。」


佑巴ゆうは「嫌なら踊るな。」


れいむ「あ、いえいえ、踊りますよー」


「だ、大丈夫ですか?」


ヒカリ「よし!やるぞ、見ててな!」


「はい。」


ヒカリさんが曲をかけ、ダンスがスタートする。エイチフェスのために作られた、DEMUREの楽曲だ。さっきのやる気のなさが嘘みたいにキレの良いダンスを披露する、れいむさん。ヒカリさんは覚えたてのダンスをしっかりと真面目に取り組んでいる。佑巴さんはダンス経験者ということもあり、自分らしさも出ている。だが……。


ヒカリ「どうだった?」


「それぞれのクオリティは上がってきていますが……バランスをもう少し考えてみた方がいいかもしれませんね。それぞれが、それぞれの思うようにダンスをされています。今のパフォーマンスでは……3人で『DEMURE』という感じは、まだかなり薄いと思いました。」


ヒカリ「……3人で『DEMURE』か……」


れいむ「難しいけど的確なこと言いますねぇ」


ヒカリ「3人の動きを揃えればいいのか?」


「うーん……動きを、というか……心を、揃えてほしいです。」


ヒカリ「心を揃える?……どうすればいいんだよ。」


「休憩時間、皆さんはいつも何をされていますか?」


ヒカリ「私は復習してる。」


れいむ「……ゲームしてますねぇ。」


佑巴「宿題。」


「それぞれで、ですか?」


ヒカリ「当たり前だろ。」


「うーん……」


コミュニケーションを取ってほしい。そして、3人自身にコミュニケーションが大切なことに気づいてほしい。


れいむ「みんなで復習すればいいんですか?」


ヒカリ「2人は復習する必要なさそうだもんな、いつも。」


佑巴「うん」


ヒカリ「ほら!才能の塊みたいな感じだもんねー、羨ましい羨ましい。」


れいむ「……才能の塊なら、こんなところで底辺アイドルしてませんけど。」


ヒカリ「お?噛みついてきた。」


れいむ「帰りたいんですけど、いいですかねぇ。」


佑巴「私も。明日も学校だし。」


ヒカリ「あーそうですか、帰れ帰れ!」


「ちょっと。皆さんはエイチフェスの出演が決まっているんですよ……?もう少し自覚を持ってください。」


れいむ「出たいと言った覚えはありませんけど。」


ヒカリ「……!」


れいむさんは帰っていった。このままじゃ、DEMUREは「アイドル」になれない。どうすれば……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る