第7話『Dynamic♥Heart』
今日は
帆夏「今からですか!?」
巳海「思い立ったが吉日!ついでにケーキ屋さんに寄るまでがセットだよ!ね、愛里!」
愛里「うん。私のお気に入りのスポーツショップとケーキ屋さん。」
「では、そこまで車で送りましょうか?」
巳海「えっ、いいんですか?」
「はい。」
帆夏「ありがとうございます!」
愛里「ふふ、やったぁ、チョコケーキ食べられる~」
Dynamic♥Heartの3人を乗せ、私は教わったスポーツショップに向かった。
帆夏「すみません、私のお買い物に付き合って頂いてしまって……」
愛里「いいの。私がケーキを買うのもあるんだから。」
巳海「そこのケーキ屋さん、美味しいよ~。帆夏ちゃんも食べてみてね。」
帆夏「あっ、はい、ありがとうございます。」
巳海「そんなに気を遣わなくてもいいのにー!」
愛里「歳もひとつしか変わらないんだし。」
巳海「同じユニットだしね。できれば、タメ口で話して欲しいなぁ~」
帆夏「い、いいんですか?」
巳海「うん。入所した時期で言えば、断然、帆夏ちゃんの方が先輩だしねぇ」
今回のエイチフェスに選ばれたトゥインクルエンターテインメントの4ユニットは、どれも1ヶ月ほど前に組んだばかりのユニット。まずは人間関係を作っていくところからだ。
「到着しましたよ。」
巳海「ありがとうございます!」
「私もご一緒してもよろしいですか?」
愛里「いいよ。なんで?」
「少しだけ皆さんを観察しようかなぁ、と。」
巳海「えー!なんか緊張するなー!」
愛里「早く行こうよ。」
巳海「はい、行きます」
帆夏「ふふっ」
巳海「ちょっと、笑わないでよ!」
お店に入ると、愛里さんと巳海さんは慣れた様子でジャージのコーナーに歩いていった。
「慣れてますね。」
巳海「そりゃもう、何回も来ましたから。」
愛里「体操で使うのはあっちだけど、面白くていつも色々見ちゃう。」
愛里さんが自分の手を見つめ、寂しそうに微笑んだ。
帆夏「……あの、どうして体操を辞めちゃったんですか?」
愛里「怪我した。手を、怪我したんだ。だから、もう出来なくなっちゃった。」
帆夏「……アイドルは、大丈夫なんですか?」
愛里「うん。バク転とかはさすがに無理だけど、普通にしてる分には、大丈夫。」
巳海「……。あ、これは?ほら、帆夏ちゃんに似合いそうだよ。」
愛里「あ、いいね。このメーカーの、結構好き。」
帆夏「可愛いです!」
巳海「ね、かわいいよね!って、敬語ー!」
帆夏「あっ……ご、ごめん。」
ジャージを無事購入し、ケーキ屋さんでの買い物も終え、各自を家に送り届けることに。
帆夏「さっきのケーキ屋さんの男の子……私、見たことある。」
巳海「あー、たしか、アイドルやってるって。」
愛里「男の子のアイドルって、全然出てこないよね。なんでなんだろ。」
帆夏「たしかに、なんでなのかなぁ。」
現在、圧倒的な人気を誇っている女性アイドルの方ばかりを売り出したい、男性アイドルの存在など需要はないと考えている事務所の方針には、この無垢な3人にはまだ気づかないでほしい。なぜか、そう願ってしまった。
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