158話 脱走失敗の末路(後編)
暴走琴ちゃんに為す術無く捕縛されてしまった私。
「それじゃあお姉ちゃん。お待ちかねの罰ゲームの続きをやろっか」
「あの……琴ちゃん?お待ちかね、なんて言ってるけど……お姉ちゃん別に待ってなんかないんだけど……!?こ、心優しい琴ちゃんは……お姉ちゃんに酷い事なんかしないよね!ねっ!?」
逃げられなかった罰ゲームと称して琴ちゃんの手によって手足を縛られる。唯一動かせる口を必死に動かして、得意の
「ふふ……大丈夫。わかっているよお姉ちゃん。…………フリだよね」
「フリでもなんでもないんだけどぉ!?」
「嘘。口では形ばかりの抵抗をして、その実期待しているんでしょ。私に好き放題されるのを……望んでいるんでしょ。苛められるのを……楽しみにしているんでしょ」
今の琴ちゃんには何を言っても暖簾に腕押し。怪しく光る眼差しを向けながら不敵に嗤い、私の服に手をかける。
「さて……と。それじゃあ始める前に。まずはお姉ちゃん、ちょっとだけジッとしておいてね。危ないから」
「あ、危ない?琴ちゃん……何を……?」
「何って……お洋服脱がせてあげようと思ったんだけどね。手足を縛られた状態だと脱がせてあげられないでしょ。だから……」
「だから……?」
「勿体ないかもだけどいっそのこと切っちゃおうって思ってね」
「……ッ」
そんな恐ろしい事を言いながら、琴ちゃんは私に馬乗りになりながらギラリと光る大きな裁ちばさみを見せつけてきた。
「こ、琴ちゃん……止めて……あ、危ないでしょ……?そ、そもそもなんで脱がせる必要が……?」
「だって……そのうち服を着る必要がなくなるからね。そういうわけで……大人しくしておいて。お姉ちゃんを傷つけるような真似は二度としたくないし、細心の注意を払うつもりだけど……それでもお姉ちゃんが暴れたら……万が一でも手元が狂う事もあり得るから、ね」
「ひっ……!?」
「……ふふ。良い子」
流石の私もそんなものを目の前に出されて大人しくしていろと言われたら大人しくするしかない。言われたとおりに抵抗を止めて息を呑みつつ身体を硬くすると、琴ちゃんは嬉しそうに……容赦なく服をはさみで切り始める。
シャキン、シャキンと音が鳴り。琴ちゃんに買って貰った可愛い服が裂かれていく。時折はさみの峰の部分が肌に当たる度に緊張が走り、その冷たい感触に鳥肌が立つ。
「ふぅ……これでよしっと。ごめんねお姉ちゃん、怖い思いをさせちゃって。でも……これはこれで刺激的だったよね。ゾクゾクしちゃうよね」
「は、ははは……」
時間にして数十秒の恐怖体験を味わった後、見事に私の服は布きれと化した。こ、怖かった……そんな天真爛漫な笑顔で刺激的だったよねと言われても……刺激強すぎるって言うか、生きた心地がしなくて乾いた笑いしか返せないよ琴ちゃん……心臓の上をはさみが通る感覚とか……別の意味でゾクゾクしっぱなしだったよ……
「さて。邪魔な服は無くなったわけだし。これで心置きなく――えーい♡」
「は、はぅっ……!?く、はは……はははははは……ッ!は、くひゃ……あははははははははっ!?」
はさみの恐怖から解放されホッとしたのもつかの間。服を切り取られ露わになった私の身体を、琴ちゃんの10本の指が生き物のように蠢く。完全に不意を突かれた事や油断もしていたせいで、先ほどくすぐられた以上にそのくすぐりは効果的だった。
「あは……お姉ちゃんかわいい……♪そんなに嬉しそうな声を出しちゃって……もっとしてあげるね」
「ち、ちが……あひゃ、ひゃ……うひゃひゃひゃひゃ……は……ッ!!?」
与えられる刺激から逃れようにも、がっちりと両手足を縛られていて逃げ場などどこにもない。ただただお姉ちゃんとしての尊厳の欠片もない、情けない笑い声を漏らすしか出来ない私。そんな私の姿を見て気をよくしたようで……琴ちゃんの攻めは更に激しさを増す。
「(なん、で……どうして……?なんか、いつもよりも……身体、敏感に……)」
笑い声をあげながら……私の中でそんな疑問が湧き出てくる。おかしい……琴ちゃんに触れられる事も、くすぐられる事も……今日が初めての事ではない。二人でじゃれ合ってくすぐり合う事なんて、それこそ10年以上前からやっていた事だ。
だと言うのに……何でだ?なんで、私の身体……こんな敏感になっているの……?
「お姉ちゃん。なーんかいつも以上に感じちゃってない?凄いね。縛られるだけでこんなに反応良くなっちゃうんだ。私知らなかったよ。やっぱりお姉ちゃんって……苛められるの大好きなんだね」
「ひが、ひぃがう……はぁ、ハァ……!ちがう、のぉ……」
「隠さなくて良いよ、そんなに良いならもっともっと続けてあげる」
「やめ――ん、ひぃ……ひゃぁ、ひゃは……あひゃはははははは……ッ!!!?」
止めどない暴風雨みたいな琴ちゃんのくすぐりに身をよじって奥歯をかみ締め必死に堪えようとするけれど、それも数分だけしか保たなかった。ねちっこく触れてくる琴ちゃんの指には為す術はなく、すぐに気が狂ったように下品な笑い声を響かせてしまう。
「んふふふ……縛られるのがそんなに気に入ったなら。オマケも付けてあげるからねお姉ちゃん」
「はぁ、は……ひぃ…………ぇ……?ちょ……ちょっと、琴ちゃん……!?これ、なんも見えな……!?」
一瞬、琴ちゃんの攻めが中断される。解放されて乱れに乱れた呼吸を元に戻そうとした矢先。琴ちゃんに視界をゼロにされてしまう私。こ、これ……さっきも付けさせられてた……目隠し……!?
真っ暗……光が一切入ってこない。何も見えない、音だけしかわからない。数秒前まであれほど触れていた琴ちゃんに与えられていた刺激もピタリと止まって……世界でただ一人だけになったような……そんな孤独感に苛まれる。
「あの、琴……ちゃん?」
「……」
「琴ちゃん……?聞こえる?ねえ……」
「…………」
「琴ちゃん……ど、どこ……?まさか私を置いて――」
「…………こーこ♡」
「ひゃわっ!?」
突然耳元でそんな声が聞こえてきて。同時に耳元をすぅっと琴ちゃんの舌が走って行った。ただでさえ弱い耳なのに……視界を遮られて更に敏感になってしまったようで……甘い痺れが耳を発信源として全身に駆け巡る。
「本当に耳弱いよねお姉ちゃん。ああ……今の感じてるお姉ちゃんちょっと可愛すぎるよ」
「はっ、ハァ……それ……だ、め……」
「うん、わかってるわかってる。…………お姉ちゃんの『ダメ』は『もっとシて』って意味だもんね。安心してよ、お姉ちゃんが狂うまで……どこまでも付き合ってあげるから」
その言葉は、私を甘い地獄へと堕とすには十分過ぎる一言だった。そこから先はノンストップ。耳たぶを舐めるように指先でなぞったり手のひらで耳を塞いでみたり……ずちゅりぐちゅりと耳の中を舌で抜き差ししたり。
「あ゛ぁああああッ!!?ひ、ひゃは……んひゃあはははははぁはははぁ!!?」
「あー……いい……凄くいい……恥も外聞もないお姉ちゃんの素の声……私だけに見せてくれるドロッドロに狂うお姉ちゃんの姿……やだ、すっごい興奮しちゃう……♡」
その間も全身をくすぐることを忘れてなどいなかった。いいや、忘れるどころかエスカレートしていた。首の下、脇、脇腹……太もも、膝小僧、足裏……私の弱いところなど全てお見通しと言わんばかりに執拗に弱点ばかり攻め立ててくる琴ちゃん。しかも私が刺激に慣れないように、揉みしだくようにくすぐったり、指先で突いたり、触れるか触れないかの絶妙なタッチで撫でたりと……手を替え品を替えくすぐり続ける。
「(これ……だめ……見えないから、どこからくすぐられるか……わからな――)」
目隠しされたことでくすぐりの効果はそれはもう覿面だった。どこからどのタイミングでくすぐられるのかわからず身構える事など出来ない。五感のうちの一つを封じられて感覚がより敏感になってしまっていて……こんなの耐えられるわけがない。
執拗なくすぐりで目隠し越しに涙が溢れ、口元はだらだらと涎まみれに。全身に汗が滝のように噴き出して……
「あは、ははは……あっひゃひゃひゃ……!!?も、もぅ……やらぁ……ゆるひ、へぇ……ことひゃん、やめて……ゆるひてぇ……!」
「っと……ごめんお姉ちゃん。流石に限界だったかな?一旦ストップしてあげるね」
情けない笑い声と情けない姿を晒しながらも、精一杯琴ちゃんに『止めて』とお願いする私。軽い酸欠状態になっていた私に気づいた琴ちゃんは、私の懇願を素直に聞き入れて止めてくれた。
ようやくまともに息を吸えるようになった私は、無我夢中でこの部屋中の酸素を全て吸い尽くす勢いで大きく息を吸う。あ、危なかった……もうちょっとで意識が……
「……お姉ちゃん大丈夫?汗たくさんかいたよね。お飲み物、飲もうね。はい。お口開けてね」
「んー……ンく…………ゴクッ」
まだ頭がクラクラしている中。琴ちゃんに言われるがまま、琴ちゃんに口移しで何かの液体を口に含まされる。まともに思考できないまま音を立てて飲み込んで……
「お姉ちゃん、おいしかった?」
「ん……いきかえった……」
「それは良かった。まだまだあるから、遠慮しないで飲んでね」
「うん……ありがと、のませて琴ちゃん」
あれだけ狂ったように笑わされたら、そりゃ喉も渇くはずだ。餌を待つ雛鳥のように無心で口を開け、琴ちゃんの口移しで不思議な味がする飲み物を次々と飲み干す私。
…………それが、琴ちゃんの次なる罰ゲームの準備だと知らぬままに。
「(…………あ、れ?)」
ようやく息も整ってきた頃。ぶるりと身体を震わせる私。そのままモジモジ太ももを擦り合わせる。この……感覚は……
「んー?どうかしたのかなお姉ちゃん?」
「い、いや……別に、なんでも……」
否。なんでもない事などない。この感覚は……間違いない。まあ、あれだけ水分を摂ったわけだし、ほぼ裸のままあれこれされたんだ。そうなってもおかしくはない。ないんだけど……な、なんでこんなタイミングで……?ちょっと前に行ったばかりだってのに……
「どうしたのかなお姉ちゃん」
「えと……そのぅ……」
同じ台詞を同じような口調で琴ちゃんに放たれる。ど、どうする……こんな恥ずかしい事、琴ちゃんに言いたくないんだけど……
いやでも……よく考えろ私。このまま黙っておいて決壊したら、それこそ取り返しがつかない事になりかねない。特に拘束されている今の状態じゃ、一分一秒の判断の遅れが致命的になりかねない。
「……もう一度聞くよ。どうかしたのかなお姉ちゃん?」
「…………と……れに」
「ん?」
「…………トイレ、に……行きたいなーって……」
恥を忍んで琴ちゃんにそう訴える私。ああもう……最愛の妹分に排泄のお願いとかどんな羞恥プレイだよ……で、でも仕方ないじゃん……!?急に催しちゃったんだし……
そんな私に琴ちゃんは、まるで待っていましたと言わんばかりの口調でこんな事を言い出した。
「なーんだトイレか。もう、そういう話ならもっと早く教えてよお姉ちゃん」
「うぅ……だ、だってこんな事言うの恥ずかしいし。琴ちゃんだってこんな情けない事を聞かされるなんて嫌だろうし――」
「折角使った利尿剤が、効かないんじゃないかって心配になっちゃったじゃないの」
「…………」
その衝撃の台詞に一瞬頭が真っ白になる。尿意とは別の寒気が全身に広がってくる。まて、待って……?今、琴ちゃん……なんて言った……?
「くすぐったり、お耳を攻めたり……それだけじゃ正直いつもやっている事と変わらないでしょ?罰ゲームなんだしもっとそれらしい事したいなって思ってたんだよね」
「は、はは……あの、琴ちゃん。ナイスジョーク……」
「ああ。安心してよお姉ちゃん。防水シーツはちゃんと付けてるし、それに……そもそもここは私とお姉ちゃん……二人だけの世界。何も遠慮しないで良いんだよ」
「冗談……だよね?ね?さ、流石にそれは……ちょっと……ねぇ?ほ、ほら……冗談はやめて一旦解放してほしいな琴ちゃん……かなり、ギリギリだし。い、いくら琴ちゃんでも……お姉ちゃんが情けなく漏らしちゃうところとか……み、みたくないでしょ……?」
「あはは、何を言うのお姉ちゃん」
震える声で琴ちゃんにそう言う私。そんな私を前にして、琴ちゃんは私にしていた目隠しを剥ぎ取って――
「この私の顔が、冗談を言っているように見えるのかな?」
「…………ッ!!!」
混じりっけ無しの本気の、何かを期待するようなキラキラした視線で私を見つめていた。あれだけ汗を流したというのに、全身から冷や汗が吹き出てくる。怖い……今の琴ちゃんは……間違いなく本気だ。本気で……私を……
「い、いや……やめて……それだけはやめて……!?」
「ああ、ダメダメ。そんな暴れちゃ怪我しちゃうよ。……大丈夫、だいじょうぶだよお姉ちゃん。生理現象だもの。なにも恥ずかしくなんてないよー。よーしよし」
どうにか逃げ出して一刻も早くトイレに駆け込みたい。無駄だと知りつつも拘束された手足を必死に動かして手枷足枷を外そうとジタバタする私。けれど当然ながらそう易々とそれが外れるわけもなく。
そして追い打ちをかけるように、琴ちゃんは私をよしよし撫でてくる。……それも、頭ではなく、お腹を。太ももを。両足の付け根を……お臍の下を撫でてくる。その刺激は、私の尿意を更に加速させてくる。
「こと、ちゃ……それ……だめ……だめぇ……!?」
「うんうん、お姉ちゃんの『ダメ』は『もっとシて』だもんねー。わかるよ……なら、思う存分狂わせてあげるからねお姉ちゃん」
イヤイヤと子どものように首を振って、なんとか止めさせようとするけれど。今の琴ちゃんが聞く耳なんて持つはずもなく。それどころかさっきと同様に脇や脇腹のくすぐりを再開させて来た。
「あ、ひ……あひゃひゃははっ!?だ、だだ……だめ、それ……力……ぬけ……いやぁああああああ!?」
「大丈夫。遠慮しないでいいんだからねー」
くすぐられることで力が抜ける。力が抜ければ当然、下半身も緩んでしまって限界が更に近づく。
大事な従姉妹の前で恥ずかしい姿を晒すまいと踏ん張っているのに、その従姉妹の手によって辱められるこの状況……なんて絶望的なんだろう……
「我慢は身体に毒だよお姉ちゃん。ああ、可哀想に……こことかすっごい張ってるね。出したいよぅって自己主張しちゃってるね」
「だ、め……だめだめ……琴ちゃん、ゆるしてぇ……!?」
「よーしよし。今、解放してあげるからねー」
ぷっくりと膨らんだ下半身。溜め込んでいるそこをよしよしされると、目の前がチカチカする。
心身共に限界一歩手前。もう頭がどうにかなってしまいそう。
「ほら、お姉ちゃん。もう耐えられないんでしょ?大丈夫。私はどんなお姉ちゃんでも大好きだから。他の誰かがどう思おうと、私だけはどんなお姉ちゃんでも愛せるから」
「こと、ちゃ……」
「だから、出しちゃえ…………小絃」
「~~~~~~ッ!!!」
その一言が最後の一押し。私のダムは限界を迎えた。そして……琴ちゃんが見ている前で、私は――
「…………これだけやれば。お姉ちゃんの心も折れたはず。今のお姉ちゃんは、もう私に逆らう意志はないはず。これだけ徹底的に折れば、これだけ徹底的にわからせてあげたら……もう二度と私の前から逃げ出したりしないよね……ね、お姉ちゃん……」
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