151話 同棲(監禁)生活2日目(深夜)
理性なき暴走特急と化した琴ちゃんに『マッサージしてあげる』と半ば強引に押し倒され。そのまま逃げられぬように背中に跨がられた私が見たもの、それは……身に纏う全ての衣類を脱ぎ捨てた琴ちゃんの艶やかなお姿だった。
長く美しい黒髪を扇のように拡げ、染み一つない芸術的とも思える輝く肌を惜しげもなく晒し、肉食獣が獲物を捉えた目で私を見下ろす琴ちゃん。その光景に私は思わず息を呑む。
「……お姉ちゃん?大丈夫?意識ある?というか……息、してる?」
「…………ハッ!?」
息を呑むって言うか……あまりの絶景に指摘されるまで息が止まっていたようだ。あ、あぶねぇ……危うくこの映像を網膜に焼き付けたまま天に召されるところだった……それはそれで私的にはアリな召され方だろうけど…………見惚れている場合じゃないだろ私!
……何故?何故全裸……!?ダメだ……ここはお姉ちゃんとしてビシッと琴ちゃんに一言言ってあげないと……!
「こ、こここ……琴ちゃんッ!」
「ん?なぁにお姉ちゃん」
「ご馳走様です!!!」
「…………お姉ちゃん、晩ご飯後のご挨拶ならもう終わったハズだけど?」
思わず漏れ出す本音。アホか私は!違う、そうじゃない……!興奮しすぎて茹だった頭をブンブン振り、何とか正気に戻してもう一度。
「言い間違えた!そうじゃない、そうじゃなくて…………何で!?なんでいきなり脱いでるの琴ちゃん!?」
どうにか目を逸らし琴ちゃんにそう問いかける私。そんな私の問いかけに、もぞもぞと私の背中に乗っかかりながら、琴ちゃんはなんともない風にこう返してくる。
「何でも何も。私、ちゃんと言ったでしょう?マッサージしてあげるって」
「言ったけど!言ってたけど!それと琴ちゃんの脱ぐことに、何の関連性があるというのでせうか!?」
「マッサージの邪魔になるからだけど?汚れたらいちいち洗濯しなきゃいけないじゃない」
マッサージで!?マッサージするだけで服とかそんなに汚れるかなぁ!?
「変なお姉ちゃん。お風呂に一緒に入ったって思えば別にどうという事はないよね?それとも……なぁに?小絃お姉ちゃんは……私がこんな格好になって何か不都合な事でもあるの?もしかして……私の事を意識しているの?」
「それ、は……!」
「お姉ちゃんは私の尊敬するお姉ちゃんなんだし……別に何にも問題ないよね?不都合なことなんて何一つないよね?まあ、私としては……問題があった方が寧ろ嬉しいところだけど」
「…………う、ぐぅ……」
弁が立つ琴ちゃんの言い分に何一つ反論できずに口ごもるしか出来ない私。何と言う悪魔の選択肢……ここで私が正直に『問題ある』と発言すれば――
『嬉しい……!お姉ちゃんも私を意識しているんだね。私の身体、気になるんだね。だったら――好きにして良いんだよ』
とかなんとか言って、絶対身体に物を言わせて既成事実やらなにやらをゲットしちゃうだろうし。『問題ない』と発言しても――
『問題ないならマッサージ始めるね』
ってなって……後はあれやこれやと琴ちゃんは全力で私を堕としに来ちゃうだろう。……どっちを選んでも結末は変わらない気がする。滅茶苦茶する。
「(……そもそもの話。理性を失った状態の今日の琴ちゃんとお風呂に入るのは危険で、だからこそ琴ちゃんを騙し体調が悪い演技をしてまでお風呂回避をしたって言うのに……これじゃあ何のために必死にお風呂回避したんだよぉ……!)」
結局琴ちゃんと裸の付き合いをしている事になる。いいや寧ろこんなことになるなら普通に風呂に入っていた方がまだマシだったかもしれない。
「うぐ……うぐぐぐぐ……!」
「お姉ちゃんも反論なさそうだし。それじゃマッサージ始めるよ」
「えっ!?あっ……ま、待って……もうちょっとだけ待っ――ぁ……く、っ」
結局……問題のあるなしの回答が出せぬままタイムアップとなり。琴ちゃんは強制的にマッサージを施し始める。
琴ちゃんのマッサージ自体は昨日今日始まったわけじゃない。それこそ……私が目覚めてからリハビリついででちょくちょくやって貰っている。……だから琴ちゃんは理解していた。どんな力加減で、どんな風に触れられると私が悦ぶのか……私以上に理解していた。
「どうお姉ちゃん?痛くない?力加減はどんな感じ?」
「ぅ、ん……きもちいい……」
「……ふふ♪良かった、続けるね」
音瀬小絃、あれだけ抵抗していたのは口だけか貴様。微かに自分の中に残る理性にそう蔑まれても仕方ないレベルの秒殺だった。そのつい守りたくなっちゃうような小さく細長い愛らしい指に、一体どんな魔法がかけられているのか……琴ちゃんの指は驚愕するほどピンポイントに私のツボを突いてくる。
「あは……♪身体の力、抜けてきた。いいよーお姉ちゃん。その調子。力抜けるとより筋肉をほぐしやすくなるからねー」
「ん……」
こうされると後はお手上げなすがまま。琴ちゃんに身を任せ、眠気を誘う心地よさをただただうっとり甘受するしか出来ない。肩から背骨に沿って腰へ。腰までいったら背中の側面、二の腕肘……そしてまた肩へ。腰に跨がり体重を使って見事な力加減で圧をかけてくる琴ちゃん。事故の後遺症で凝り固まった身体がみるみるうちにほぐれていく。
「ふぅ……お姉ちゃん、とりあえず軽くやってみたんだけど。今みたいな感じで良かったかな?」
「(…………え。あれ?もうおわった……?)」
眠気やらなにやらと戦っていたところ。いつもはじっくり時間をかけてマッサージを施行する琴ちゃんにしては珍しく5分も経たないうちに終わりを告げるような一言を私に投げかけてくる。
ほんのちょっとの物足りなさを感じながらも、思っていた展開に発展しなかった事にホッと息をつく私。
「……さいこう、だったよ琴ちゃん……ありがとー……」
「どういたしまして、と言いたいところだけど。ふふふ……ねえ、お姉ちゃん?」
「んー……?」
「どうして終わった気でいるの?今のはまだ準備運動なのに。ここからが本番だよ」
「ん、んー……?…………本番?」
……そして油断した直後に私を襲う、琴ちゃんのそんな一言。
カポッ……と何かの蓋を開けた音が背中越しに聞こえたかと思うと、しばらくするとぬちゃぬちゃと粘性の水音が耳に届く。なんだなんだと思っているうちに……再び琴ちゃんの手のひらが私の背中に触れてきた。……これまで体験した事のない奇妙な感触がおまけで追加されていた。
「ひゃ、ひゃぅん!?な、何!?なにこれ!?」
「あはは、ビックリした?大丈夫。身体に悪いモノは入ってないから安心して」
「だ、だからこれは一体なんなの琴ちゃん……!?」
「オイルだよ、マッサージオイル。お姉ちゃんも聞いたことはあると思うんだけど。オイルを使うことで筋肉の緊張の緩和とか、あとコリとかうっ血とかを解消出来るんだって。ついでに可動域も広がるから身体も柔らかくなるし、血液の流れとかも促進するから、むくみの解消にも繋がって、自律神経とかにも良いらしいよ。まさに今のお姉ちゃんにうってつけだよねー」
そんな説明をしながらも、琴ちゃんは手を休めることなく私の身体を解していく。……確かにさっきまでのは準備運動だったとわからされる。さっきのマッサージも十分過ぎるくらい気持ち良かったのに……オイルを追加し、琴ちゃんも本気で施してくれてるお陰で……その気持ちよさは比にならない。
「待って、まって琴ちゃん!?わざわざオイルなんて使わなくて良いって!?も、勿体ないし……それにほら!オイルで汚れちゃうじゃん!ベッドも、それから琴ちゃんも!?」
これ以上続けられると色んな意味で私がもたぬ。そう思い琴ちゃんに中止を提案する私。
「なんで?これでお姉ちゃんが元気になるならオイルなんて安いものじゃない。それに……ベッドだって大丈夫。ラバーシーツを敷いておいたし」
けれど琴ちゃんはしれっとそう返し私の提案をバッサリ切り捨てる。…………そうか、そういう事か……!?なんで最初、タオルで身体を拭くだけなのにラバーシーツを敷いているんだろうなーって気にはなってたけど……こういう事か……!?
「それに……私も汚れても大丈夫だよ。だって……そのために服を脱いだんだし♡」
「…………はじめから、琴ちゃんはこれを狙って……!?」
「んー?何の事ー?……それよりも。ほら、マッサージ続けるよ。お姉ちゃんも大人しくしておいてね」
確信犯な琴ちゃんは、楽しそうにマッサージを続けていく。完全にはめられた私は……為す術も無く、逃げることも出来ずに琴ちゃんの下でテクニシャンな琴ちゃんの手で良いようにされるだけ。
ぬるぬるとした手が私の身体を縦横無尽に這え回る。とろとろのオイルと、オイルを温めた琴ちゃんの温もりが背中を中心に全身に広がっていく。それは……全然不快な感触じゃなくて……寧ろえもいわれぬ心地よさで。
「ん、しょ……よいしょ……ん……っ」
そしてオイルが加わった事により、必死になって考えないようにしていたある事が無視できなくなってきた。
背中に感じていた程よい重み、柔らかな感触。それは紛れもない……琴ちゃんのお尻で……私をマッサージする度に、腰は揺れ……琴ちゃんのお尻は私の身体を擦れていき……それがまたマッサージとは違ったもの凄くいい感触で――
「(おまけに……これ生のお尻なんだよな……)」
うつ伏せだから視覚ではわからないが……今の琴ちゃんは全裸。そう……全裸だ。そんな状態でこんなに押しつけられたら……否が応でも意識してしまう。
「ふっ……ん、んっ……しょ……っと」
「(胸、が……なまちち……が……)」
追い打ちをかけてくるように密着してマッサージする琴ちゃん。感動するくらい実った私の大好物であるたわわに実ったその両のお胸が……むにぃと擬音を発しながら私の背中をやらしく……違った、優しく包み込む。これでお尻同様何も付けていないのだから……お尻同様にマッサージする度オイルまみれのその胸を私の背中に擦りつけてくるんだからたまったものではない。
「(ぜ……絶対、わざとだ……琴ちゃん、わざと……!)」
こんな事しなくてもマッサージは出来る。てか、こんな事すると逆にマッサージし難いハズ。理性が失う前からこういうことは度々あったからわかる…………どう考えても私を挑発している……私を堕落させようとしている……
「(がまん……がまん……っ)」
テクニシャンなマッサージ+極上の琴ちゃんの身体……堕ちる材料はこれ以上なく揃っていた。あまりの快楽に全身に鳥肌が立つ。軟体動物にでもなったようにぐにゃっぐにゃに骨抜きにされてしまう。気を抜けば変な声が漏れ出しそうになる……
年下に好き放題され、淫らに喘ぐ……これが理想のお姉ちゃんを目指している者の姿か?嫌だ、恥ずかしい……琴ちゃんに聞かれたくない……なけなしの理性を総動員させ、枕をかみ締め声だけは堪えようとする私。
「我慢してるお姉ちゃん可愛いね。……でも。我慢しないで良いんだよ。だって……ここには私しかいないじゃない。良いんだよ、私の前なら快感に溺れても。私の前だけなら……」
琴ちゃんもそれがわかっているのか。密着しながら耳元でそう囁く。枕に顔を埋めた私は埋めたままブンブンと首を振って拒絶するんだけど……
「んー……強情だなぁ。そういうお姉ちゃんも好き。でも……」
「えっ……!?やっ、きゃあ!?」
「いい加減、私の方が我慢の限界なの。ごめんね」
そう言って琴ちゃんは唐突に私の身体をうつ伏せから仰向けの姿勢に変えてくる。咄嗟のことで禄に抵抗が出来なかった私は……もろにその光景を目の当たりにしてしまった。思わず身を乗り出しかけるほどの、これ以上ない魅惑的な琴ちゃんの女の身体を。
「「…………は、ぁ……」」
さっきは背中越しだったからまだ耐えられた。けれど……これはもう、目が離せない。至高の身体、これ以上ないくらいタイプな身体。……私の理想を体現した、私に好きになって貰うためにと作り上げた琴ちゃんの身体……それはため息が出るほど美しかった。
おまけに……その身体を引き立てるように、マッサージオイルが琴ちゃんの白い素肌をテラテラと怪しく濡らしていた。元々の美しさに艶やかな光沢が合わさって……滴る色香を身に纏っていた。
「……綺麗。綺麗よお姉ちゃん。むしゃぶりつきたくなるお尻とか、噛みたくなるようなうなじとか、舐め回したくなる背中も素敵だったけど……やっぱりお姉ちゃんのお顔が見えるこっちは格別だよね」
「嫌……言わないで……」
他の人にならいざ知らず、それをこんな美しさの塊である琴ちゃんに言われるなんて、恥以外の何物でもない。それでも琴ちゃんは息を荒くし、オイルの蓋を再度乱雑に開けて……加減なしに注いで……
「お胸も、お腹も……大事なところも……全部、丸見え。…………これが全部、私のモノになると思うと……」
「琴……ちゃん……もぅ、やぁ……」
「…………続けるよ」
そうしてマッサージは再開される。オイルで濡らされた脚の上を、琴ちゃんの細長い指が走る。足先、ふくらはぎ、膝、太もも……触れるか触れないかの絶妙なタッチでくすぐられていく。
「(…………これ、ちょっと……やばい……)」
仰向けにされた事で琴ちゃんのマッサージはその趣向が先ほどまでと打って変わってしまっていた。明らかにマッサージが目的とは思えない……ただただ快楽に酔わせるための触り方……
そんな琴ちゃんに呼応するように、私の身体も卑しく反応してしまう。マッサージの心地よさ以上に……欲情にまみれた生々しい感触が身体のうちから溢れだす。もじもじと腰が動く、ブルリと全身が震える、頭真っ白になって目がチカチカする、未だ触れられてもいない左右の胸の頂が……琴ちゃんのその手で触れて欲しいと悲鳴を上げながら自己主張する。
「(…………何しているんだろう私。何が目的だったっけ……?)」
ええっと……そうだ、琴ちゃんだ……琴ちゃんの理性を……戻してあげないと……まずは、ここから抜け出して…………なんで抜け出す必要があったんだっけ?えと、それは……あ、ああそっか……私、いま……琴ちゃんに監禁されてたんだった。だったらどうにかして…………いや、そもそもなんで監禁されてたっけ?…………あ、そか。母さんのバカな実験のせいで……琴ちゃんの理性が……
快楽に飲まれないようにと自分を保とうとする私。だけど何を考えても話が堂々巡りして、全然考えがまとまらない。
「……何考えてるのお姉ちゃん?他のこと考えるなんて……随分余裕みたいだね」
「は、っ……ぁ…………ち、ちが……ちがうの……これは……」
「ごめんね。手緩かったみたいだね。…………ここからは、本気出すから。もう私の事以外考えられなくしてあげるから」
挙げ句琴ちゃんに余計な事を考えている事がバレてしまい……琴ちゃんにスイッチが入る。更に過激に触れられる。触られていなかったところに本格的に手を付けられ始めた。太ももの付け根を念入りに擦られ、お臍の中を指で穿られ、二つの胸の膨らみを両の手で掬われて……
それでも最後の慈悲なのか、はたまたソコはメインディッシュとでも言いたいのか。一番敏感なところには絶妙に触れずじまいで……
「どう?ちゃんと気持ちいい?私が与える気持ちいい事だけ……私だけ感じてくれてる?」
「や、やぁ……いやぁ……も、ゆるしてぇ……!これ、いじょうは……だめ、なの……」
「…………嫌?本当に嫌?やめてもいい?……嘘。素直になりなよお姉ちゃん。こんな可愛い蕩けたお顔で言っても説得力ないよ。本当はもっと触って欲しいんでしょ?もっと私と触れ合いたいんでしょ?」
「ちが……私……は……」
「何も違わないよ。……良いんだよ、私はお姉ちゃんのモノだから。お姉ちゃんが望むことを、望まれたようにしてあげるから」
情けなく喘ぐ私に、裸の琴ちゃんはピッタリと隙間なく引っ付いて。私の耳の中に舌を侵入させながらそう囁く。全身敏感になってしまっている今の私には、そんな琴ちゃんの言葉は甘い甘い毒だった。
「もう一度聞くよお姉ちゃん。どう?ちゃんと気持ちいい?私が与える気持ちいい事だけ……私だけ感じてくれてる?」
だめ……もう何も考えられない……何を考えていたのかもわからない。ただただ私は……琴ちゃんに……
「…………して」
「んー?」
「…………もっと、して……!もっと私に……琴ちゃんをかんじさせて……!」
「……はぁい♡」
恥も外聞もない、姉としての立場もプライドもかなぐり捨てたそんな私の叫び。琴ちゃんはこれ以上ないくらい幸せそうに、そしてこれ以上ないくらい蠱惑的に笑い。私の望みを叶えてくれた。
◇ ◇ ◇
ぽん、ぽん……
「……ふふ……ごめんねぇ、お姉ちゃん……ちょっと……頑張りすぎたかも。疲れちゃったね……ゆっくり休んでね」
ぽん、ぽん……
「……ああ……眠ってるお姉ちゃんかわいいなぁ……いつまでも見られちゃうよ……」
ぽん、ぽん、ぽん……
「……ちゃんと温かいなぁ……胸の鼓動も……ちゃんと聞こえる……心地良いなぁ……」
ぽん、ぽん、ぽん……
「もうちょっと……もうちょっとで……きっとおねえちゃんは……私のものに…………そうすれば、きっと……あんな夢なんて……見ずにすむ……お姉ちゃんを失わずに……すむ。……そうすれば、おねえちゃんもわたしも……しあわせに……なれるよね……」
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