番外編 楽しいオシオキタイム(あや子さん編)
~Side:あや子~
小絃ママのいつものトンデモビックリ実験で、バカ小絃と入れ替わる羽目になった私。
『お姉ちゃん……小絃お姉ちゃん……♡好き、好きよ……だぁーいすき……♡』
琴ちゃんの重すぎる小絃への愛で押し潰れそうになり。
『うぁああああん!琴ちゃん成長しすぎでしょ!?囁きボイスたまんねぇ!むっちゃ良い匂いするぅ!おっぱいとかふにふにでモチモチで……食べたい!寧ろ食べられたいいいいいい!!!』
思考を
『(息が……くるし……そ、それに……小絃の全細胞が悲鳴を……)』
そして慣れないボロボロの小絃の身体に苦しめられながらも。それでもどうにか生還し、まさに地獄のような一日を乗り越えた私。
「さて。それじゃあ早速だけどあや子ちゃん」
「……はい」
そんな私を待っていたのは愛する我が嫁の紬希と、
「当然わかっているよね?今から楽しいオシオキのお時間です♪」
「…………はい」
昨日以上の地獄であった。
「あの……紬希。オシオキ前に弁明させて貰っても……宜しいでしょうか?」
「聞くだけならタダだし別に良いよ。何かな?」
「こ、今回は私……悪さをしたわけじゃないの。いつもみたいにちっちゃい子たちにちょっかいかけたわけでもなく。いつもみたいに紬希があまりにかわゆ過ぎて暴走しちゃったわけでもなく……ただ小絃ママの実験に巻き込まれて小絃と入れ替わっちゃっただけなの……」
「そうだね。小絃さんからもそう聞いてるよ」
「だ、だったら……!」
身を乗り出し身の潔癖を訴える私。聡い紬希はどうやら事情を全部理解してくれているらしい。ならばオシオキは勘弁してくれるかも——
「だから入れ替わり自体は怒ってないよ。…………今からやるのは、正直に小絃さんとの入れ替わりを私に一言も相談してくれなかったことに対するオシオキと。私があや子ちゃんの入れ替わりに気づけないような鈍感女だと思われたことに対するオシオキと。ついでに教え子さんに変な事を教え込んでいたことに対するオシオキなんだし」
「…………」
あ、ダメだ……なんとかオシオキを回避しようとしたけれど。どうやらこれは許して貰えそうにない空気らしい。
「そもそも自分のせいじゃないって言っていたけどさ。小絃さんのお母さんの実験に付き合うって言いだしたのは、他でもないあや子ちゃんだったって小絃さんからも聞いているんだけど?」
「そっ、それは……ただ酔ってて判断力が欠けていたせいで私のせいってわけでは——」
「…………ああ、そうだった。忘れていたよ。すぐ羽目外しちゃうし健康に気をつけて欲しいから、私と一緒の時以外はお酒飲まないでねって約束したのにそれをあっさり破ったオシオキも追加しなくちゃね」
いかん、墓穴掘った。罪状が増えた……
「ち、ちなみに……オシオキって、具体的にはどんな感じなのかしら……?」
「それは勿論、デコピンしたり拳骨したり。あとはお尻ペンペン——」
「お尻ペンペン……!」
「——をすると、あや子ちゃんの場合寧ろ喜ぶよね。逆効果だって事はこの私がよぉくわかっているから……あや子ちゃんには別メニューのよく効くオシオキにします」
紬希のお尻ペンペンと聞き、思わず期待の声を漏らさずにはいられなかった私。
……しまった……反応まちがえた……
「そ、それで?紬希は私にどんなオシオキするつもりなの?」
「そんなに怯えなくても大丈夫。そんなに大したオシオキじゃないから安心してよ。だって——あや子ちゃんはもうすでに体験した事なんだし」
「そっかぁ、一度体験した事なら安心よね」
……うん?体験した事?
「と言うわけで、小絃さんのお母さん。よろしくお願いします」
「はいはーい。そんじゃあや子ちゃん、また実験にお付き合いヨロシクね!」
「…………ッ!?こ、小絃ママですって……っ!?あ、嘘ダメやめ——」
紬希の呼びかけと共に、予期せぬタイミングでどこからともなく現れた小絃ママ。マズいと思い回避行動に移ろうとした私だったんだけど……一歩タイミングが遅かった。
背後から謎の装置を装着させられ。つい最近体験した強烈な目眩と共に視界は暗転し、私の意識は遠くなる。そして——
◇ ◇ ◇
「——入れ替わり自体は理解したつもりでしたが、それでも自分で実際に体験してみると……改めてビックリです。本当に凄いですね小絃さんのお母さんって」
「いやぁ、そんなホントの事を言われると照れちゃうわよ紬希ちゃん。……でももっと褒めて!褒め称えて私の天才的な頭脳と技術力を!」
目を覚ました私の目に映ったのは小絃ママ。そして他でもない……私自身だった。
「ま、また……入れ替わりを……と言うか、まさか……まさか私の身体に入っているのって……!?」
「そっかぁ。これがあや子ちゃんのいつも見ている世界なんだね。……うふふ、視点すっごく高いなぁ。ちょっとドキドキしちゃうね♪」
「い、いやぁアアアああああ!?つ、紬希が!?わ、私のミニマムラブリーエンジェル紬希が、私みたいなデカ女にぃいいいい!!!??」
ハタチを過ぎてもなお瑞々しくロリロリしい。ちょっとエッチでぷにぷにで可愛いを形にした、奇跡の存在にして永遠のロリ幼女にして私だけのお嫁さんな紬希。彼女はいつも色んなところが小さいと嘆いておりました。そういうコンプレックスを持っているところもとってもキュートで、願わくば一生そのままでいて欲しいと私は常々願っておりました。
そんな私の尊くもささやかな願いをあざ笑うかのように。今私の目の前には紬希とは似ても似つかない、ドデカい図体の私の身体を得た紬希の姿があります。
なんて事をしてくれたんでしょう……ッ!
「こ、こここ……小絃ママ!?なんてことしてくれたんですか!?私の紬希が、紬希がぁ!?そ、その悪魔のような入れ替わり装置は封印するって約束してくれたハズでは!?」
「あー、ごめんごめん。あたしも一応はあや子ちゃんと小絃との約束だったし封印するつもりはあったのよ?」
「だったら何故!?Why!?」
「でもねー、紬希ちゃんに頼まれちゃったのよねー。『あや子ちゃんへのオシオキに使わせてください』って。そう頼まれたらこれはもう仕方ないわよね!」
「仕方なくないと思うんですけどォ!?」
悪びれた様子は一切なく、嬉しそうにそう答える小絃ママ。し、仕方なくって絶対嘘でしょ……!?どう見ても『また貴重な実験データが取れそうでラッキー♪』としか考えてないでしょ小絃ママ……!?
これか!?これがオシオキなのか……!?こんなの耐えられそうにないんだけど……!?愛する紬希を紬希と脳が認識出来そうにないんだけど……!?
「でもさあや子ちゃん。そこは寧ろ喜ぶべきじゃない?」
「何の話ですか!?」
「だって一番大好きな人になれたのよ?嬉しいでしょ?」
「…………!」
その一言でハッと気づく。言われてみれば……今の私は、紬希になっているのよね……
視線を落として手を見てみる。ちっちゃくて真っ白で紅葉みたいな愛らしい手だった。その手でそっと頬を触れる。瑞々しく吸い付くようなもちもちの頬。幾千幾万と触れてきた私だから鏡を見なくてもわかる。これは……間違いなく紬希の手だ、紬希の頬だ。
「と言うことは……」
今、紬希の身体を自由に出来るのは……他でもないこの私で。勿論世界一大切で大好きな紬希を傷つけるような真似は絶対にしないと誓うけど…………ちょっと色んなところに手が触れちゃったりするくらいなら……問題無いのでは?いつもは嫌がられたり全力で拒否されるような場所だったとしても、身体の主導権が私にあるのであれば……おさわりしても許されるのでは……!?
「…………(ゴクリ)」
「…………あや子ちゃん。目つき……と言うか顔つきがなんかいやらしくないかな?」
「きっ、気のせいです……!」
思わず生唾を飲み込んで、震える手をそっと高鳴る胸に置こうとしたところで。ジト目の紬希(in私ボディ)の突き刺さる視線に気づいて慌てて手を上げ何もしないとポーズを取る私。危なかった……更に罪を重ねてしまうところだったわ……
「そ、それにしても人が悪いわ紬希。こんなオシオキを考えつくだなんて」
「ん?何の事かなあや子ちゃん?」
「もう勘弁してよね。紬希が紬希じゃなくなるなんて心臓に悪いし……こんなオシオキは出来ればもうこれっきりにして欲しいわ」
「……オシオキ?」
悪夢のようなオシオキだったけど、私も悪いところはあったわけだし今回だけは甘んじてオシオキも受け入れよう。
そんな事を考えながら、大きくため息を吐きつつ紬希にそう文句を言うと……紬希はどうしてか、不思議そうに首を傾げていた。
「あや子ちゃん……オシオキって何の事?」
「え……?いやあの……何の事って。これが今回のオシオキなんでしょ?紬希が紬希じゃなくなるっていう世にも恐ろしいオシオキ……」
私がそこまで言うと、紬希はああなるほどと言った表情になり。そして笑顔でこう返す。
「あはは、面白い事言うねあや子ちゃん。ねえあや子ちゃん——
…………まさか、この程度でオシオキが終わったと思っているのかな?」
「へ?」
◇ ◇ ◇
紬希のそんな一言から数分後。
「きゃーっ♡あや子ちゃん、かわいー♡」
「ぎゃぁあああああああ!!??」
私は今、真の地獄を味わっている。
一体どこから用意したのか、私が苦手なふりっふりの甘めの服やワンピースを代わる代わる着替えて鏡の前で私に似合わない愛らしいポーズを取りつつ歓喜の声を上げる紬希。
「うふふ……いつもは全力で拒絶されるから叶わなかったけど……夢が叶ったよ。こういう可愛い格好のあや子ちゃんをずっと見てみたかったんだー私♪」
私の身体の主導権を握った紬希は泣き叫びやめてと懇願する私をよそに。私の身体を着せ替え人形にしてやりたい放題好き放題していた。
「やめて!?そんな服着ないで紬希!?似合わなさすぎる……!?」
「えー?すっごく可愛いのになぁ。仕方ない。それじゃあ今度はこっちのロリィタ衣装を」
「いぎゃぁああああああ!!??」
拒絶反応で絶叫が漏れ出す。想像しただけで吐き気が止まらない。わ、私みたいな高身長の女にロリィタ衣装!?正気なの紬希は!?
「やめなさい紬希!それは流石にバイオテロ過ぎるわ!?見る物全てを不幸にする絵面を出しても誰も幸せにはなれないわよ!?」
「少なくとも私は幸せだよ。……えへへ。絶対似合うって思っていたけど私の目に狂いはなかったね。琴ちゃんに頼んで衣装作って貰ってた甲斐があったよ」
「目に狂いがなかったですって……!?どう考えても狂っているわよその目は!?紬希、悪い事は言わないから今度一緒に眼科に行くわよ……!?つか、何を琴ちゃんに頼んでるのよ!?そして琴ちゃんも何でそんなもの作ってくれちゃってるのよ!?」
「良い仕事してくれた琴ちゃんに感謝だね。はい、チーズ♡」
嬉しそうにそう言いつつ。性懲りもなくポーズを取って……今度はあろうことかスマホで写真まで撮る紬希。
「写真はやめて……やめなさい!紬希!そんなものを記録に残してどうする気なのよ!?」
「折角だしSNSに投稿して、私のお嫁さんは可愛いって全世界に伝えようかと。あ、小絃さんのお母さん。あや子ちゃんとのツーショットが撮りたいので写真撮っていただけますか?」
「はいはーい、お安いご用よ紬希ちゃん」
「やぁめぇてぇええええええええ!!??」
力ずくでやめさせようとするけれど、この紬希のちっちゃな身体では……私の身体を乗っ取った紬希を止められない。
「いつもはあや子ちゃんに無理矢理可愛い服を着せられたり色々されてるからね。文句は一切受け付けませーん。そもそもこれはオシオキなんだし、大人しくそこで自分が可愛くなるところをしっかり見て楽しみなさいあや子ちゃん」
「も、もう許して紬希ぃいいいいいい!!!?」
結局。入れ替わり装置の効果が切れて元に戻るまでの間。この
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