57話 類は友を呼び、シスコンはシスコンを呼ぶ
『立花マコ』
そう名乗った彼女は、全然そうは見えないけれど……なんとあの麻生さんの同級生なんだとか。それはつまり、成人していて……もっと言うなら私の実年齢とほとんど同じらしくて……
「(どう見ても小学生にしか見えん……)」
合法ロリな紬希さん以上にちっこくて若々しく見えるのに、紬希さんよりも年上とか全然信じられん。私と同様に母さんのコールドスリープ装置でも使ったのでは……?
いや、でも胸は並の大人の女性よりも……下手しなくてもうちの琴ちゃんよりもおっきいんだよなぁ……低身長だけど爆乳……そのアンバランスさが歪というかなんというか……不思議生物すぎるわ……
「あ、あの……あのっ!立花先生……!お、お会いできて光栄です!わ、私……ずっと立花先生に会いたくて……!先生のお料理の本、読ませて貰って……ずっと尊敬してて……!」
「あや、そうなん?いやぁ、そう言って貰えるのは嬉しいな。これからもよろしくねー紬希ちゃん」
「は、はいっ!……あ!ご、ご迷惑でなければ……ぜ、是非ともサインを……!」
「んー?サイン?……うーん、私ってばコマと違って字すごい下手なんだけど……それでもいい?」
「勿論です……!お願いします、家宝にしますから……!」
目の前の珍獣の存在に目を白黒している私の隣では、私に付いてきてくれていた紬希さんがその珍獣に握手をされてドキマギしたりサインを貰って感涙を溢したりしている。
『マコちゃーん!この後どうすれば良いか教えてー!』
『もー!マコ先生新しい子ばっかり構ってズルーい!』
『そーよそーよ!不公平よ!私にも熱烈授業してよぉ!』
「ああもう、まだ自己紹介の途中だってのにあの人たちは。……はいはーい!今行きますからちょっと待っててくださいねー!……ごめん、小絃さんに紬希さん。ちょっと向こうの弟子たちの指導してくるよ。すぐ戻るから待っててね」
紬希さんだけじゃない。この通り教室中の生徒さんも漏れなく紬希さん同様に、この先生のことを尊敬(?)しているみたいで……
「ああ、本当にありがとうございます小絃さん……!」
「ふぇ……?」
「小絃さんのお陰ですよ……!立花先生に会えたのは……!わ、私……立花先生にお会いするべく、そして立花先生直々にお料理を教えて貰うべく。何度も何度もこの教室に受講申し込みをしてたんですけど……先生の教室って相当に人気で、競争率も高くて……今まで一度だって参加出来なかったんです……!でも、でも……!まさかこんな形で先生とお会い出来るだなんて、本当に夢みたい……!」
「は、はぁ……ええっと……良かったですね紬希さん……」
「はいっ!」
30分近く自分の妹の素晴らしさを語るというさっきの奇行を見せられて、私の中ではハッキリ言って相当変わった人ってイメージしかないんだけど……でも紬希さんほどの人がガチで尊敬していて、しかもあの琴ちゃんの上司をしている麻生さんの親友って事は……やっぱり凄い人……なんだよね?全然そうは見えないけど……
「……その。随分と変わった……もとい、個性的な先生ですね……あの人」
失礼を承知で紬希さんにそう言ってみると、紬希さんは苦笑いを見せる。
「あはは……ま、まあ私たち先生のファンからしてみればいつもの事ですが。先生のアレは…………初めて見たら確かにびっくりしちゃいますよね。先生には双子の妹さんがいらっしゃるそうなのですが……先生ってその妹さんの事を、とても大事になさっていてですね。ちょっと熱が入ると、先ほどのようについ自慢の妹さんの事を語ってしまうそうでして……」
「ビックリってレベルじゃ無いと思うんですが……ビックリ通り超してドン引き半歩手前って感じだったんですが……」
と言うか、ファンの前であの姿を晒して……よく受け入れられているよねあの先生……
「で、でもですね!それを差し引いても先生って本当に凄い人なんですよ!話を聞いたらきっと小絃さんもわかってくれると思います!と言うか、多分小絃さんと先生……すぐに仲良くなれると思いますよ!」
「え……?ど、どうしてそう思われるんですか?」
「だって……お二人ってとても似ているんですもの!」
「…………にて、る?」
それは……素直に喜んでいい事なんですかね紬希さん……?私の中の紬希さんは……客観的に見るとあんな風に見えているんですか……?だとしたら地味にショックだ……
「ごめーん、待たせた!さてさて。キミがヒメっちからお願いされた小絃ちゃんだね?」
そんな事を紬希さんと話していると、話題の先生は私たちのところまで戻ってきた。
「ふーむふむふむ、なるほどねー」
「……あ、あの。何か……?」
戻ってくるなり警戒していた私の懐に易々と飛び込んで。値踏みでもするように私の顔を覗き込んでくる立花先生。なんか……麻生さんに観察された時とはまた違った意味で緊張してしまう。
この先生……かなり距離感バグってない……?めちゃくちゃ近い……奇行に目が行ってたせいでわかんなかったけど……よく見れば顔とかめちゃくちゃ良いし……
「あー、ごめんね。ジロジロ見ちゃって。ちょっと確かめたいことがあったからさ」
「確かめたいこと……?」
一体私の何を確かめると言うんだろうか……?
「ヒメっちから聞いたとおりの子だわ。よーくわかったよ。小絃ちゃん……貴女ってさ」
「は、はい……」
「私と、同じ匂いがする。そう——シスコンの匂いが」
「…………はい?」
…………なんて?
「話には聞いてたけど……直接見てハッキリわかったよ。その気配……間違いなく筋金入りのシスコンだわ。ああ、いや。小絃さんの場合は正確にはシスコンというかイトコンになるのかな。……あ、どうでも良いけどイトコンって糸こんにゃくっぽいねハッハッハ!」
「ホントに心底どうでも良いですね……」
「加えてシスコンな上に……妹分に興奮しちゃう変態淑女。貴女からそんな私と同じ匂いがするわ。8個くらい年下の、自分を慕ってくれる優秀で可愛い妹分に恋をしている……そんな匂いがプンプンするわ」
自信満々に先生はそう言ってくる。えらく具体的な匂いだな……
「……って言うか、ちょっと待ってくださいよ!?し、シスコンで変態淑女……!?こ、この私がそうだと言うんですか!?」
「あれ?違うの?」
「ち、違います!先生と一緒にしないで貰えます!?」
流石に不名誉だと反論開始する私。取り消していただきたいその言葉……!
「確かに私は……従姉妹を、琴ちゃんを大事に想っています。世界で一番大切な妹分だと思っています。ですので百歩……いや千歩くらい譲ってシスコンなのは認めましょう。ですが……ですがですよ!断じて私は変態淑女などではありません!大事だからこそ、妹分をそんな目で見たりなんてするわけないじゃないですか!」
「ほうほう?」
私にとっての琴ちゃんは……命がけで守るべき尊い存在。そんな子を……いかがわしい目で見たりなんて絶対にしない!
「そうかそうかなるほどねー。ごめんよ、失礼な事言っちゃって。…………じゃあ小絃ちゃんは、プロレスごっこと称して妹分に積極的に抱きついたり。成長記録を残すと称してその大事な妹分の一日をカメラやビデオに収めたり。健康チェックと称して妹分の下着の匂いクンカクンカしたり。身の安全を守ると称して妹分に近づいてくる悪い虫を片っ端から追い払って独占したり——そんな事は一切していないと?」
「…………ぅ、ぐ……ッ!?」
先生に問われて思わず口ごもり目を逸らす。そ、そんな事は……一切……いっさい……
「どうなの小絃ちゃん?ん?」
「…………その。そこまで……露骨じゃ無いですけど……」
「けど?」
「…………た、たまに……なら。あ、あくまで……常識の範囲内でなら…………してたり……」
「
◇ ◇ ◇
「——そうなんです!それはもう、琴ちゃんってば可愛すぎでして……!」
「わかる、わかるわー。妹って存在はホントに凄いよね。神秘的だよね。コマったらいつまでも可愛いままだもの。何年経っても色あせるどころか、寧ろドンドン可愛さに磨きがかかっちゃうのよねー」
「ですよね!おまけに私がちょっと目を離した隙に、その可愛さはそのままに……大人の魅力まで手に入れちゃっていまして!」
「そう、そうなのよ!どこでそんな色気を覚えたの!?お姉ちゃんを誑かしてどうしようって言うの!?ってなるよねー!」
「それで……その日々の可愛さを、美しさを形に残したいと思って……つい琴ちゃんに黙って写真に撮っちゃったりして。……いえ、写真に撮るだけでは飽き足らずその他諸々の余罪も…………い、いけない事だってわかってはいるんですよ!?で、でも琴ちゃんが魅力的過ぎて……自分が抑えきれなくて……」
「大丈夫、それは全国全ての妹を持つ姉の本能だからね。そうなるのは仕方ない、小絃ちゃんは悪くないわ。……私もそうだもの」
「……マコ先生」
「……小絃ちゃん」
ガシィッ×2 ←変態シスコンお姉ちゃんたちが手を組む音
「ありがとうマコ先生。……私、マコ先生となら旨い酒が飲めそうです」
「私もよ。ふ、ふふふ……こいつぁトンだ逸材を拾ってきてくれたみたいだねヒメっちよ……」
「……わぁ♪すっかり意気投合しちゃってる。うんうん、私の思った通り立花先生と小絃さん、相性バッチリですね」
~一方その頃のとある妹分~
『——ハッ!?な、何この悪寒……いけない……また小絃お姉ちゃんの側に悪いオンナの気配がするような……!?こ、こうしちゃ居られない……!早くお姉ちゃんの元に急がないと……!』
『こーらこらこら。琴ちゃーん?だからまだ仕事終わってないって言うか、今まさに会議中でしょうが。ちゃんと終わらせるまでは絶対に逃がさないんだからねー』
『や、やだ……離してください係長!?お姉ちゃんが……お姉ちゃんがぁ!?』
~同じく一方その頃のとある妹~
『——ハッ!?な、何でしょうこの悪寒……またマコ姉さまの近くで良からぬオンナの気配がするような……!?こ、こうしては居られません……!すぐに姉さまの元へ行かないと……!』
『なに突然興奮してんだコマ。そしてお前はどこへ行くつもりだ?『お仕事へ行った姉さまの代わりに、今日は私が姉さまのご飯を作ってあげるんです♡』って張り切ってただろうに。せめてあたしの分のメシ作ってからにしろよなー』
『は、離して下さい叔母さま!?姉さまが……マコ姉さまがぁ!?』
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