19話 続・10年経って何が変わった?
「——うはぁ……こりゃまたすっごいなぁ……」
「どうしたの小絃お姉ちゃん?」
「いや、なに。この10年、なんだかんだで色んな事があったんだなーって感心しちゃってね」
今日も今日とて空白の10年を埋めるべく、同居人にして私のお嫁さん(※自称)な琴ちゃんと一緒に当時の新聞やらネットニュースやらを見ながら10年を振り返っている私。
「ふふ……目をキラキラさせちゃってるお姉ちゃん可愛い……♪そうなんだね。私からしてみたら普通の事だけど……お姉ちゃんからしたらそんなに新鮮だったりするんだ?」
「するする。見る物全てが新鮮だよ。なんと言えば良いのかな……そう、疑似タイムスリップした気分よ」
たかが10年と思うかもだけど。私目線から言わせて貰うと結構な変化だったりするわけで。例えば空を自由に飛ぶドローンだったり、物体を作り出す3Dプリンターだったり。昔漫画とかテレビドラマで見たまんまの未来の世界にお邪魔してるような感覚に浸れている。
「今使ってるスマホとか最たる例だよね。電話も出来る、メールも打てるのは当然として。他にも色んな事出来るんだよね?」
強く勧められ押しに負け。つい先日琴ちゃんに買って貰った自分のスマホを見ながら感嘆する私。
……え?お前ますます琴ちゃんへのヒモっぷりが増してるよなって?ほっとけ。
「そうだね。前にも説明したけど、これ一つで支払いとか出来たりするし。ゲームも動画も見れるし。アプリを使えば外国語を翻訳できたりするし。GPSが内蔵されてるからリアルタイムで道案内出来るし」
「うへぇ……10年で色々と発展しすぎでしょ」
こーんな小さな箱の中に、それだけの機能がみっしり詰まっていると思うと驚愕する。ホントにスマホ一つあるだけで何でも出来るじゃないの。SFみたいな感じだわ。
「つーか……技術が進歩すれば価値観もそれだけ変わるもんなんだね。ちょっとビックリ。10年前だとさ、自分の現在位置が筒抜けになるとか危険だッ!——って否定する声も結構あったと思うんだけど。今じゃそれがあって当たり前な感じなんだよね」
「そうだね。そういう否定的な考えもあるとは思うけど……やっぱり機能としてはかなり便利だからね。知らない場所に行っても簡単に道案内してくれるし。子どもにGPSを持たせておけばスマホのアプリ一つで居場所が探知出来るし」
「ますますSFじみてるなぁ……私的にはそういうの悪用されたりしないか心配になるよ。GPSで居場所がわかるって、例えばだけど……お、お風呂だったりトイレだったりの場所も特定されちゃったりとかしないの?」
「あはは、流石にそこまで高性能じゃないから安心して。あくまでも大まかな位置の特定の為の機能なんだし」
あ、なんだ。それなら安心かな?
「…………まあ、小絃お姉ちゃんに仕込んでるやつは、いつお姉ちゃんが迷子になったり誘拐されても大丈夫なように普通のよりも高性能だから……お風呂もトイレもバッチリ特定出来るけど。ついでに音声も映像もバッチリだけど」
「ふーん。…………うん?」
……あれ?今なんかさらりとヤバい事を口にしなかったかね琴ちゃんや?ちょ、ちょっと……ちょっと待って?それつまり私……日常的に琴ちゃんに盗聴・盗撮されてるって事じゃ……
「そんな事よりお姉ちゃん」
「待って、『そんな事』でさらっと流さないでくれないかね琴ちゃんや……!?」
「技術の発展と言えば……こういうのとかどうかな?多分これもお姉ちゃんにとってはかなり技術の発展を感じる物だと思うんだけど」
話逸らされた……い、今の件は後でじっくり話聞かせて貰うんだからね……!?
「そ、それで?その厳つい暗視ゴーグルみたいなのってなぁに琴ちゃん?」
「VRゴーグルだよ」
「ぶいあーる……?」
「んー……これは口で説明するよりも、実際に体験して貰った方が早いかも。お姉ちゃん、これ付けてみて」
「へ?あ、ああうん……こ、こうかな?」
ごつい機械を手渡され、言われるがままに装着してみる。
「付けた?それじゃいくよお姉ちゃん」
「え、えっと琴ちゃん?これから一体なにが始ま——」
「はいスタート」
「うぉっ!?」
琴ちゃんのかけ声と共に、突如ゴーグル越しに今まで自分が見ていた視界とはまるで違う世界が浮き上がる。え、えっ!?な、なにこれ……ナニコレ!?
「こ、琴ちゃん!?な、なんか私今知らない草原にいるんだけど!?な、なんか見た事もない動物?がそこらじゅうにいるんだけど!?ここどこ!?琴ちゃんどこ!?」
「大丈夫、大丈夫だよお姉ちゃん。私はここにいるよ。……ふふ、凄いでしょ」
「すごいって言うか……ヤバい!」
どこまでも広がる世界に、まるでファンタジー映画に出てくるようなモンスターがあちらこちらでうごめいている。明らかに現実じゃない。ほ、ホントなんだこれ……!?
「VR……Virtual Realityの略なんだけど。要するに仮想現実の事だね。行った事がない世界とかを疑似体験出来る——そんな機械なの」
「い、いよいよもってSFの世界じゃない……凄い、すごーい!」
映像はメチャクチャ綺麗でしかも平面じゃなく立体的に見えるから、臨場感が半端ない。360度見回しても途切れる事ないから。これが仮想現実だって言われなきゃ気づけないレベルだ。
まさかこんなにもリアルに現実じゃない現実を体感できるなんて……科学が進歩するにも程があるでしょ……未来の世界かよここ……あ、まあ私にとってはマジで未来の世界か。
「んん!?え、なんか近づいてきた!?え、えっ!?なんかちっこい犬みたいなのが私に近づいてきてるよ琴ちゃん!?うわっ!?じゃ、じゃれついてきた!おお……おおぉ!」
「あはは、良かったねお姉ちゃん。気に入られたみたいだね」
そうこうしていると、画面の奥から犬っぽいやつがひょっこり現れて。私の周りをうろうろし始める。とんだり跳ねたり地面にごろごろと身体を擦りつけたり。
な、なんか……見てて癒やされるな……動物園に来たような気持ちになれそうだわ。
「こいつ、よく見ると可愛いな……さ、触れたりしないのかな……?」
「あ、ごめんお姉ちゃん。流石にこれは触覚までは——」
「えいっ!」
「っ~~~~~~!?」
試しにこっちも近づいて、勇気を出して触ってみると……
「凄い!ホントに触れた!へぇ……こんなにリアリティあるんだね。温かいし、柔らかいし。10年の技術は伊達じゃないわー」
「…………」
視覚だけでなく触覚までリアリティ溢れていた。すげー!VRすげー!ほんのりと温もりを感じるし、トクントクンって鼓動も感じる。なによりもこの柔らかさ!手を動かす度に手のひらに合わせて自在に形を変えてくるこの柔らかな感触……あー、やばい。ずっと触っていたいなぁ。
「あはは、こいつ撫でたらうっとりした顔してるや。本物の犬みたいだ」
「…………んっ」
「んー?お腹撫でさせてくれるの?へへへー、良いよー。いっぱいなでなでしてあげるねー♪」
「……はわ……!?ッ、ぅ…………あ……あっ……」
「よーしよしよし。気持ちいい?気持ちいいかな?」
「…………ぅ、ん……とっても、きもちいいよお姉ちゃん……♡」
「…………うん?」
……あり?すぐ近くで、なんだか艶めかしい声が聞こえた気がする。あれ、あれれ?ちょっと待って?よく考えたらなんかおかしくない?私がしてるのはこのゴーグルだけで……視覚はともかく、触覚まで感じるハズないのでは……?
何か変だと思い、恐る恐るゴーグルを外してみると。
「……あん♡お姉ちゃんったら、真っ昼間から……ダイタンなんだから♡」
「…………」←(絶句)
…………知らん間に、琴ちゃんを押し倒して馬乗りになり。そして琴ちゃんのその10年で大きく実ったたわわなお胸を……その。がっつりと揉んでた私。
押し倒されてた琴ちゃんは、頬を上気させ潤んだ瞳で私を見つめながら。抵抗らしい抵抗もせずに受け入れていた。というか、寧ろ私が揉みやすいように気遣ってシャツをはだけてた。あ、あわ……あわわわわわ……!?
「ご、ごごご……ごめん!ちがう、違うの!?わざとじゃないの!これは事故なの!」
「いいよ、お姉ちゃん……もっと触って……気の済むまでお姉ちゃんの好きにして……♡」
「勘弁してぇ!?」
◇ ◇ ◇
「…………大変、失礼しました……」
「どうして謝るの?お姉ちゃんにめちゃくちゃにされるの……気持ちよかったし嬉しかったし。なんならもっと続けても良かったのに」
「だからもう勘弁してください……」
1時間後。とりあえず平謝りして胸を揉んだ事を謝罪しつつ、スイッチ入った琴ちゃんをどうにか宥める事に成功した私。VRする時は周りに人がいないか確認する必要があるのね……反省したわ。
…………それにしても。すっごい気持ちよかったなぁ……琴ちゃんのお胸……自分も一応女だし、胸に手を当てたらあるにはあるんだけど……琴ちゃんのそれは、私のとは比較にならない。超弩級な破壊力抜群のもはや兵器と言っても過言じゃない……想像を絶するレベルの柔らかさと大きさと揉み心地で永久に触っていられそうな——って!だから、反省しろや私……!?反省どころか、なにさっきの感覚反芻してるんだよ……!?
「じゅ、10年で変わった事と言えばさ琴ちゃん」
「ん?なぁにお姉ちゃん」
「なんか新しく覚えておいた方が良いマナーとかあったりするかな?ほら、ついこの前教えてくれたじゃない。感染症が広まった影響で……外出る時は基本マスクしといた方が良いとか。そういう感じのやつ」
10年で研究も進み、今はかなり落ち着いているらしいけど。なんでも私が寝てた10年で、ものすごい感染症が世界で広がって。その対策として外出する時とかはマスク着用するのが当たり前みたいな感じになったと聞く。その名残から今では常にマスクをしてないと白い目で見られちゃう事もあったりするらしい。
いやはや……昔は人前でマスクするなんてマナー違反だ!とかなんとか言われてた時期もあったのに、時代が変わればマナーもがらっと変わるもんだよなーって実感しちゃうよね。
「意外と知らないマナーとかがいつの間にか出来てたりするし。恥かく前に教えて貰えたらなって思ってるんだけど……どうかな?何かある?」
「……ふむ。覚えておいた方が良いマナー……ね」
「……?」
……あれ?私がそのように問いかけると。なんだか一瞬、琴ちゃんの顔が悪い顔になったような……?気のせい、か?
「……うん、一つあるよ。覚えておいた方が良いマナー」
「あ、やっぱりあるんだね。良かったら教えて欲しいな」
「うん、喜んで。……あのねお姉ちゃん。近年、グローバル化が進んできてさ。その流れで海外の良い文化を日本にも取り入れようって風潮が強くなってきたんだよ」
「へぇ、そうなんだね」
外からの良いところを取り入れて、今よりももっと良い物にしようって考えは私好きだな。
「その影響もあってね、海外のマナーも日本で取り入れられるようになったんだよ。日本に入ってきた文化はいくつかあるけど……一番はやっぱりアレかな」
「アレとは?」
「——親しい人と挨拶する時は、頬にキスするやつ」
「…………え」
親しい人との挨拶で……頬にキス……キス?
「お姉ちゃんも聞いた事くらいはあるでしょう?挨拶代わりにハグしたり、キスしたりする文化」
「う、うん。そういう挨拶がある国もあるのは……一応知ってるけど……」
「あれがもう日本でもやるのが当たり前みたいになったんだよ」
「ま、マジで……!?」
「まじまじ。やらないとマナー違反で失礼って思われちゃうの」
そりゃ私も海外ドラマとか海外のインタビューとかでそういうシーンは見た事はある。そういう文化があるってのも知ってはいるけど……まさか日本でもやらなきゃいけなくなったとは……
「で、でも琴ちゃん?私今日に至るまでそんな挨拶した事ないし、琴ちゃんもやってなかったような……?」
「…………ああ、うん。だってほら。いきなりそれをやるとお姉ちゃんビックリしちゃうでしょう?お姉ちゃんのリハビリが進むまでは教えるのは後でにしようって思ってて」
「そ、そうだったのか……」
確かにいきなりそんな挨拶を……ほっぺにチューを大人になってセクシーさに磨きがかかった琴ちゃんにされてたら。多分私、興奮のあまり鼻血の出し過ぎてまた病院に逆戻りされていたかも……
なるほど、私に気を遣ってくれてたのか。琴ちゃんは優しいなぁ。
「でもお姉ちゃんも随分元気になってくれたし。今後のためにもこの挨拶は覚えておいた方が良いよね。……と言うわけでお姉ちゃん。折角だし今からちょっと私と一緒に練習してみない?」
「えっ!?い、今から!?」
「そう今から」
そ、そんな……いきなりそれが常識だからって言われても……私心の準備とか全然で……
「……だめ?まあ、お姉ちゃんが私としたくないなら……強制はしないけど」
「ぐっ……!だ、だめじゃないんだけど……」
寂しそうな顔をする琴ちゃん。そ、その顔はダメだって……反則だって……
「ち、違うの……琴ちゃんとなら、寧ろこっちが頼み込んで土下座してでもやりたいって思ってて……!で、でも他でもない琴ちゃんを練習台にするなんて失礼極まりない気がするし……それに気恥ずかしいやらドキドキしちゃうやら、大事な妹分を変な目で見ちゃいそうな自分が嫌になるやらで……」
「……私はいつでもウェルカムだし。練習台だろうと都合の良い女扱いだろうとお姉ちゃんになら喜んでなるのに。……そっか、もういいよお姉ちゃん。無理しないで。要するに、私とはしたくないんでしょう?だったらそうハッキリ言って欲しいな」
「だから違うって!したくないわけじゃないんだって!
「でも……お姉ちゃん全力で嫌がってるし」
「…………ぐ、ぬぬぬ……」
目を伏せてため息を零す琴ちゃん。うっすらと涙も浮かべているようにみえる。私、そんな琴ちゃんの顔を見たいわけじゃない。
…………し、仕方ない。ここは覚悟を決めるべきか……
「……わ、わかった。こんなの挨拶なんだし……や、やってやろうじゃない」
「ほんと!?やった……♪」
あっさりと晴れ渡った良い笑顔に切り替えて喜ぶ琴ちゃん。うぅ……私、ちょっと琴ちゃんの寂しそうな顔に弱すぎる気がする……む、昔の琴ちゃん甘やかせてた頃のくせが抜けきってないわ……
「じゃ、じゃあ……琴ちゃん。い、いくよ……」
「ん……きて、お姉ちゃん……」
手を大きく広げ、どうぞといった風に私を迎え入れる琴ちゃん。そんな琴ちゃんの正面に立ちジッと彼女の顔を見る。
……改めて見ると。ホント琴ちゃん、綺麗になったよなぁ……端正で肌も美しくて……クールに見えて表情豊かで……
「……お姉ちゃん?」
「あ、ごめん見惚れてた」
「えっ」
「…………ごめん、今の無し。忘れて。思わず思った事が口に出た……」
「も、もっと言っても良いんだよ?寧ろ言って」
「忘れてってば。……こほん。じゃ、じゃあ今度こそ……」
冷静に、落ち着いていこう。これはあくまで挨拶。間違って唇にしないように。琴ちゃんの大事なファーストキスを(いや、ファーストキスじゃないかもだけど)奪わないように慎重に。
……ゆっくりと、身体ごと震える唇を……軽く……そのぷにぷにの、白い頬に。親愛の気持ちを込めて、私は彼女にキスをした。
「——ッハァ……!」
一瞬触れた後、即離れて息を整える私。やった……やったぞ、私だってやれば出来るんだぞ……!押しに弱いヘタレではあるけれど、やるときゃやる女なんだぞ……!
「ど、どどど……どうかな、琴ちゃん。い、今みたいな感じでいいのかな……?」
どもりながらも琴ちゃんに今の挨拶の感想を聞く私。どうだろうか、ちゃんと挨拶になってたのだろうか?
「…………」
「あれ?琴ちゃん?」
「…………」
「おーい、どうしたの?お姉ちゃんの話聞いてる?」
「…………(ポロポロポロ)」
「琴ちゃ……琴ちゃん!?えっ!?何!?まさか泣いてるの!?」
何故泣く!?私の挨拶、泣くほど下手だった!?そんなにダメダメだったのか!?
「ご、ごめんお姉ちゃん……う、嬉しくて……あこがれ続けたお姉ちゃんから、キスされたのが嬉しくて……感動的で、ちょっと感無量すぎて。あ、だめ泣く……涙止まんない……」
「そんなに……?」
すっごい嬉しそうな顔でうれし泣きする琴ちゃん。いやあの……そこまで喜んで貰えるなら良かったけど……でもこれただの挨拶なんだよね?こんなので喜びすぎなのでは……?
「——あらあら……チャイム鳴らしても出てこないなら二人とも何してんのかと思えば。真っ昼間だってのに爛れてるわねー」
「うぉっ!?」
と、止めどなく溢れている琴ちゃんの涙をハンカチで拭いてあげていると。うちの母さんがニヤニヤしながら私たちの後ろに立っているではないか。い、いつからいやがったんだ母さん……
「なぁに?小絃ったらようやく琴ちゃんの嫁になる決心をしたの?自分からキスしちゃうなんて随分積極的じゃない。早く孫の顔を見せなさいよね」
「や、やかましいわ……!ていうか、あれ別にそう言うやらしい感じのじゃなくてただの挨拶の練習をしてただけであって……!」
「へ?挨拶?」
突然の訪問者の母さんに慌てて誤解を解こうとする私。そこで私は、ふととある事に気がつく。……待てよ?親しい人と挨拶としてほっぺにキスしなきゃいけなくなったって事は……それはつまり……
「じゃ、じゃあまさか……母さんにもしなきゃいけないの……?」
想像してみる。自分がこの人にキス……キスかぁ。それは……うぅん。なんかやだなぁ……
「いきなり何の話してんのよ小絃?挨拶って何のことよ」
「ん?いや、だから挨拶だよ。日本でもほっぺにチューする挨拶をしなきゃいけなくなったんでしょ?」
「え?ほっぺにチューが挨拶?」
何を今更な事を確認してるんだろう?今やそれが世間の常識になったんでしょうに。そう答えてやると、母さんは怪訝そうな顔でこんな事を言い出した。
「はぁ?何それ?外国じゃないんだからさー。するわけないでしょ」
「…………ん?」
「そーいうのは恋人同士でやるのがふつーじゃないの?そんな常識、少なくともこの日本にはないと思うけど?」
「…………」
……母さんのこの口ぶり、この態度。少なくとも嘘をついているようには全然見えない。……と言う事は、まさか。
「こーとーちゃーん?これ、どーいうことかなぁ?」
「……」
「もしかしなくても、ほっぺにチューする挨拶が常識になったって話。琴ちゃんがでっち上げた嘘だったりするんじゃないのかなぁ……?」
「……」
振り返り、そっぽを向いている琴ちゃんをジト目で問い詰める私。そんな私を前にして。琴ちゃんは……
「…………えへへ♡」
「もう、琴ちゃん!」
昔よく見た……イタズラが見つかった時みたいな、ちょっぴりお茶目な愛らしい顔でにこーっと笑ってごまかしていた。このぉ……とんだ小悪魔ちゃんめ。
…………可愛いから、許すけど。
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