第11話 虹色メダルの価値
ロボ丸が新しいボディを手に入れた翌日、ドロシー一行はギルド本部へと足を運んでいた。
採取したスライムコアを納品し、受注したクエストを完遂させるためである。
それと、ダンジョン内で入手した謎の虹色メダルについての情報を集めるためだ。
ギルド本部に来る前に、図書館で虹色のメダルについて色々と調べてみたが、満足のいく情報は全く得ることができなかった。
だが、もしかしたら、ギルド本部の職員なら、何かしら情報を知っているかもしれない。
何故なら、ギルド本部の職員は皆、ダンジョン探査のエキスパートだからだ。
同時に、ギルド本部にはダンジョン探査に関する膨大な量の資料が収められている。
もしかしたら、その資料の中に、虹色メダルの情報があるかもしれない。
こうした一縷の望みをかけて、ドロシーはギルド本部へと赴いたのだ。
「受注したスライムコアを納品しに来ました。」
ドロシーは、受付窓口にスライムコアの入った採取袋を置き、受付嬢に声を掛けた。
「少々お待ちください。今確認いたしますので。」
受付嬢はドロシーから採取袋を受け取ると、カウンターの奥に引っ込んでいった。
数分後、集計を終えた受付嬢が窓口へと戻ってくる。
「確かに、納品を確認しました。こちらがクエスト報酬となります。どうぞお納めください。」
銀貨と銅貨が数枚入った皮袋が、ズシリとカウンターに置かれた。
報酬を受け取ったドロシーは、虹色メダルについての話を切り出した。
「すいません。ダンジョンを探索中にこのようなものを発見したのですが……。」
そう言って、ドロシーは虹色メダルをカウンターに置いた。
「これは……ダンジョンメダルですか?でも、虹色のメダルなんて聞いたことが……。」
受付嬢は虹色メダルを手に取ると、懐からルーペを取り出し、それをしげしげと見つめた。
「……確かに、メダルに彫られた独特の紋様は、ダンジョンメダル独自のものですね。この紋様は失われた古代魔法を使って彫られたもので、現在の技術では複製が困難な代物です。贋作や模造品の類ではないでしょう。しかし……。」
受付嬢はしばし思案すると、少々お待ちを、と言ってまたカウンター奥へと引っ込んでいってしまった。
ドロシーはそっと、カウンター奥へと聞き耳を立てた。
どうやら受付嬢は、上司らしき人物と何やら話し込んでいるようだ。
それからさらに数分後、受付嬢の上司らしき初老の男性がメダルと一冊の資料を手に戻ってきた。
「失礼ですが、このメダルはあなたが見つけたものですか。」
「えぇ、そうです。実はかくかくしかじかでして……。」
ドロシーは、ドワーフダンジョンでの出来事をかいつまんで説明した。
「なるほど、それは大変でしたなぁ……。たいそうお疲れになったでしょう。しかし、未発見の転移陣に隠し部屋、おまけに未知のモンスターですか……。調査隊を組織して再調査に向かわせないと……。」
老人はそう言うと、メダルと一冊の書物をカウンターに置いた。
「虹色のメダルについてですが、過去に一例だけ発見例があります。」
初老の紳士は、手元の資料をぱらぱらとめくると、あるページでその手を止めた。
「数百年前の話になります。パーティーを組まず、ソロで活動していたある冒険者が、ダンジョン内で隠し部屋を発見し、そこで一枚の奇妙なメダルを発見したと、この資料には書かれています。」
老人が枯れ木のような指で指示したページには、ドロシーが見つけたメダルと同じものが描かれていた。
「それで、このメダルはいったいなんなんですか?価値のあるものでしょうか?」
ドロシーは興奮を抑えきれず、カウンターに身を乗り出し、わくわくしながら答えを促した。
「残念ですが、メダルの用途や価値については何もわかってはいません。」
老人は静かに首を振って答えた。
「そう……ですか……。」
ドロシーは落胆し、がっくりと肩を落とした。
「しかし、これら用途不明のアイテムを研究している者なら、何か知っているかもしれません。」
「用途不明のアイテムの……研究家……。」
「紹介状を書いてあげましょう。彼女ならなにかわかるかもしれません。」
これが、後にドロシーのパトロンとなる少女「アリス・デザイア」との出会いのきっかけだった。
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