第6話 隠しボスと戦闘だ!
ドッゴオォォォォォォォォォォォン!!!!!!
鋼鉄蜘蛛の渾身の体当たりを受け、遺跡の壁が砕け散った。
さっきまでわたしたちがいた場所に大きな穴が開いている。
とっさに回避行動をとらなければ、わたしたちは押しつぶされていただろう。
「ロボ丸!ステラ!怪我はない?」
「大丈夫ロボ!でもちょっとやばかったロボ……。」
「ステラもだいじょーぶ!」
みんなの無事を確認した後、敵の方を見やる。
蜘蛛は、壁に突っ込んだ頭を引き抜き、まるで水に濡れた犬のように全身をぶるぶると振るわせ、身体に積もった瓦礫を振り落としていた。
そして、複眼のレンズがぐりぐりと動き、こちらに向かって焦点を合わせる。
蜘蛛ははこちらに向き直ると、姿勢を低くし、跳躍体制に入る。
ジャンプして、そのまま押しつぶすつもりなのだろう。
「どうするロボ?このままじゃぺしゃんこロボ!」
「落ち着いてロボ丸!冷静さを失ったら終わりよ!」
わたしは深く深呼吸し、混乱する頭を落ち着ける。
そして、冷静に、注意深く敵の状態を観察する。
よく見ると、敵の装甲のあちこちにはひびが入っており、所々に錆が浮いている。
それに、関節からは火花が散り、黒煙が噴出している。
経年劣化によるものだろうか?
数秒の溜めののち、鋼鉄の蜘蛛は、まるでバッタを思わせる動きでこちらに向かって跳躍してきた。
「ご主人、来るロボ!」
「みんな!散開して!」
そう言い終わるやいなや、わたしは前転回避し、蜘蛛のストンピング攻撃から逃れた。
ステラとロボ丸も無事に逃れることができたようだ。
少し先までわたし達がいた地点の床が大きく陥没し、穴の底では蜘蛛がうねうねと脚をうごめかせている。
脚がつっかえて、穴の底から出られないようだ。
どうやら、このエリアの床面は相当もろいようだ。
あるいはこの蜘蛛が重すぎるのか?
どちらにしろ、この機を逃す手はないだろう。
敵は身動きが取れない。
攻撃するなら今がチャンスだ!
「ロボ丸!蜘蛛野郎の脚の付け根にロケットパンチ発射!」
「合点承知の助ロボ!ロケットパンチファイア!」
掛け声と共にロボ丸の肘から先が切り離され、爆炎を上げて拳が宙を舞う。
ロボ丸の必殺武器「ロケットパンチ」だ!
附呪魔法により、スピードと破壊力を大幅強化された鉄の拳が蜘蛛の脚の付け根に正確に命中し、これをうち砕く。
「GRRRRRWWWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!」
二本の脚が胴体から切り離され、蜘蛛野郎は苦悶に満ちたうめき声をあげる。
「ロボ丸!第二射用意!合図とともに発射!」
わたしはウエストポーチから予備のロケットパンチを取り出し、ロボ丸に投げつけた。
「ご主人はロボ遣いが荒いロボ!」
悪態をつきながらも、ロボ丸は飛来するロケットパンチを器用に肘に接続し、再び発射の構えを取る。
「ロボ丸!撃て!」
「ロケットパンチファイア!」
合図とともに、再びロケットパンチをが発射される。
爆音、飛来、そして命中。
また脚が二本切り落とされ、残る脚は四本となった。
この調子で脚を切り落としていけば、蜘蛛は穴の底から出るすべを失い、そのまま穴の中で朽ちていくだろう。
しかし、これまでの攻撃が返って裏目に出てしまったようだ。
わたしは手負いの獣を甘く見ていたのだ。
脚を失い、却って身軽になったことで、蜘蛛野郎はつっかえていた脚を引き抜くことに成功してしまったのだ。
ロボ丸のリロードモーションが終わらないうちに、蜘蛛野郎は残った脚を使って跳躍し、穴の底から飛び出してきた。
「しまった!?」
「GRRRRWWWWWWWWWWWWWWWGAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!]
憎悪と怨嗟に満ちた叫び声をあげ、蜘蛛野郎はロボ丸を思い切り蹴り飛ばした!
壁面に勢いよく叩きつけられ、ロボ丸の身体が上下真っ二つに砕け散る!
「ロボ丸!」
「……ロ……ボ……ご主……人………、逃げ……ロボ……。」
上半身だけになったロボ丸が、かすれた声でわたしに語り掛ける。
わたしはロボ丸を救出するために駆け寄ろうとしたが、その行為は途中で遮られることとなった。
「GRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!」
「ぐぇっ!!??」
いきなり背後から首を締めあげられ、ほんの数秒だが意識が飛んでしまう。
一瞬何が起こったのかわからなかったが、徐々に持ち上げられる身体を見て、ようやく今の状況を察することができた。
どうやら、蜘蛛野郎が脚の先端にあるマニピュレーターを使い、わたしの首根っこを掴みやがったらしい。
「くっ!はなせ!このくず鉄野郎!」
わたしの罵声に耳も課さず、蜘蛛野郎は、私を掴んだ脚を大きく振りかぶった。
そしてそのまま、勢いよく壁に叩きつける!
「げぼっ!」
再びわたしの意識が飛ぶ。
肺に残った空気が全て吐き出され、思わずむせこんでしまう。
さらに蜘蛛野郎は執拗に、二度、三度とわたしを壁へと叩きつけていく。
壁に叩きつけられるたびに、わたしの皮膚と肉は裂け、身体の骨が悲鳴を上げて軋み、内臓へのダメージが蓄積していく。
あれから何分経っただろうか?
どうやら蜘蛛野郎は、わたしを嬲ることに飽きたらしい。
わたしの身体を壁へと押し付け、そのまま首の骨を折ろうとしているようだ。
冷たいマニピュレータに徐々に力が籠められ、わたしの意識が徐々に遠のいていく。
薄れゆく意識の中、わたしは視界の端に小さな人影をとらえた。
ステラだ。
「ますたー……!ろぼ丸……!」
ステラは、小さな肩を震わせ、その美しい顔は絶望と恐怖に歪んでいた。
「ステラ……。あんただけでも……逃げ……て…………。」
そう言い終わらないうちに、わたしの意識は暗闇へと沈んでいった。
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