第5話 隠し部屋から脱出だ!
「……う~~ん……あまりいいものがないなぁ……。そっちはどう?ロボ丸。」
「ガラクタばかりロボ。金目の物はないロボ。」
ステラを起動させてから数時間後、わたしたちは隠し部屋の中を探索していた。
しかし、これといって目ぼしいものは見つからず、そろそろ探索を打ち切ろうと考えているところだった。
「手つかずの隠し部屋だから何か見つかると思ったけど、収穫はこの子だけかぁ……。世知辛いなぁ……。」
「世の中そんなもんロボ。さっさと帰ってギルドに報告するロボ。」
がっくりと肩を落とし、うなだれるわたし。
いい加減あきらめてここから出ようか……。
そんなことを考えていると、ガラクタの山の中からステラがひょっこりと顔を出した。
「ますたー、なにかみつけた。」
「え?なになに?お宝発見?」
わたしは喜び勇んでステラのいるほうへと駆け出していく。
「ますたー、これあげる。」
そういってステラが差し出したのは、小指ほどの長さの小さな魔法のステッキだった。
ドワーフが作ったおもちゃだろうか?いずれにせよわたしがもとめているものではない。
ちょうどステラにぴったりの大きさだし、この子が持っているのが一番いいだろう。
「ステラ、それはあなたが持ってなさい。」
「いいの?ますたー?」
「いいわよ。そのステッキわたしには小さすぎるしね。あなたにはぴったりじゃないかしら?」
「ありいがとう!ますたー!」
ステラの顔に、パァッと笑顔の花が咲いた。
やばい、この子殺人的にかわいいんですけど。
「ご主人、顔真っ赤ロボ。」
「うるさいわね!とっととここから出るわよ!」
「はいはい、りょーかいロボ。」
「りょーかい、ますたー。」
わたしたちは出口を探すために再び探索を始めた。
わたしたちは転移魔法でこの部屋まで飛ばされてきたのだ。
恐らく、あの魔法陣はこの隠し部屋への入り口の役目をはたしているのだろう。
それならば、この部屋のどこかに、ここから出るための魔法陣があるに違いない。
まさか入り口はあっても出口はないなんてことはないだろう……多分。
探索を開始してから数十分後、ロボ丸が瓦礫に埋もれた、転移用の魔法陣を見つけ出した。
わたしたちは協力して、魔法陣の上に堆積したガラクタを片付けた。
瓦礫の山と奮闘すること数十分後、ようやく古代の転移陣を白日の下にさらけだした。
「動いてないロボ。」
ロボ丸の言う通り、転移陣は稼働していない。
通常、魔法陣が効力を発していない理由として挙げられるのは、魔法陣が正しく描かれていないか、魔力が流れていないかのどちらかである。
見たところ、魔法陣には傷一つついておらず、陣形の損傷による効力の喪失ではないと思われる。
何らかの理由で転移陣に流れる魔力の流れが阻害され、、効力を失ったのだろう。
となると、やることはただ一つだ。
「ステラ、ロボ丸!すこし下がって!」
「何するロボ?」
「今から転移陣に魔力を流し込む!」
未稼働の魔法陣を再起動させるには、この方法が一番手っ取り早いのだ。
まあ、少々強引で、危険なやり方ではあるのだが……。
ロボ丸とステラが後ろに下がったのを確認すると、わたしは転移陣に両手をかざす。
一度深く深呼吸すると、両手に大量の魔力を一気に流し込む!
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
わたしの掛け声に応えるかのように、魔法陣に光が走り、失われた力を取り戻していく。
やがて、転移陣は蒼く力強い光を発し始めた。
再起動は成功だ!
「よし、それじゃあとっととこんなところはおさらばしちゃおう!」
「ご主人、気を付けるロボ。罠かもしれないロボ。」
「大丈夫だって!フロアの罠はさっき全部片づけたんだから!雑魚的だっていないし平気平気!」
「ご主人、それフラグロボ。」
ロボ丸がそう言い終える前にわたしは転移陣の中央に立った。
ステラとロボ丸も私の後に続き、転移陣に入る。
転移陣から発せられる光が強さを増していき、わたしたちの身体をつつみこんでいく。
そして、視界が光だけで満たされる。
わたしたちの身体は光の粒子に還元され、どこか別の転移陣へと転送されてゆくのだ。
いったい何分が過ぎただろうか?
周囲を満たす光が徐々に弱まっていき、徐々に視界が開けてくる。
気が付くとわたしたちは、広大で薄暗い空間にぽつんと立っていた。
「脱出……できたのかな?
「少なくともさっきまでいた場所とは違うロボ。」
わたしは懐から魔法のランタンを取り出し、周囲を照らし出す。
壁面に描かれた回路基板めいた紋様から察するに、ここはドワーフダンジョンの一室らしい。
しかし……。
「ダンジョンの大一層にこんな部屋あったかしら?」
「ここも隠し部屋ロボ?」
「ますたー、あれ見て!」
その時、ステラが部屋の中央を指さして叫んだ。
ステラが指さすほうに視線を向けると、何やら巨大なものが蹲っているのが見える。
「モンスター?!ロボ丸、戦闘準備!」
「了解ロボ!」
ロボ丸が両手を構え、必殺のロケットパンチ発射体制に入る。
わたしたちの殺気に呼応するかのように、蹲っていたものが頭をもたげ、赤い目を光らせる。
それは、八本の脚を持つ、巨・大・な・機・械・仕・掛・け・の・大・蜘・蛛・だった。
鋼鉄の大蜘蛛は、折りたたんでいた脚を伸ばし、ガチャガチャと音を立て、こちらに這い寄ってくる。
赤く光る不気味な複眼には、わたしたちへの殺意と敵意がありありと満ちているのがわかる。
「もしかして、ダンジョンの隠しボス……ですかぁ?」
「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!!」
狂気じみた咆哮をあげ、大蜘蛛はわたしたちに向かって突進してきた。
―To Be Continued―
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