第4話 あなたの名前はステラで決まり!

「……ほぇ~~……。」


「ご主人?ちょっとご主人?大丈夫ロボか?」


「……はっ!!」




ロボ丸に声をかけられ、わたしはようやく我に返った。


しばらくの間、この人形の美しさの虜になっていたらしい。




「その人形どうするロボ?」


「どうって……?」


「ドワーフの宝はいい金になるロボ!美術商か大学に売れば大儲けできるロボ!」




この子を売る……。


ロボ丸の言う通り、この人形には大した価値がつくだろう。


うまくいけばひと財産気付けるかもしれない。


実際、ドワーフの宝を手に入れた冒険者が、郊外に大きな屋敷を構えたり、新たな事業を起こして成功した例は枚挙にいとまがない。


しかし……。




「ロボ丸、わたし決めたよ!」


「何をロボ?」


「この子はわたしのものにする!」


「売らないロボ?」


「……うん!」




わたしは力強くうなづくと、人形に向かって手の平をかざした。


そして指先に魔力を集中させる。


これから「人形使い」の固有スキル「入魂の儀」を発動させ、この人形に魂を与えるのだ。




かざした手の平に魔法陣が現れ、そして青白い光の玉が錬成される。


この光の玉こそが、これから人形に注入する魂なのだ。




「スキル発動!一発入魂!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


わたしは気合を込めた掛け声と共に、人形の体に魂をねじ込んだ。




人形は関節部から光を発しながら、ビクンビクンと二、三度痙攣する。


そして、白い頬が薔薇色に染まり、人形うはうっすらと瞳を開いた。


人形に魂が宿った。儀式は成功だ!




よっしゃ!とわたしは小さくガッツポーズを決める。


さて、儀式は無事成功したが、これだけでは終わらない。


使役するには、人形に名前を付けなければならないのだ。




人形はぼんやりとした顔でこちらを見上げている。


その瞳は、夜の星の瞬きのように美しかった。




「あなた、だぁれ?」


人形の口から言葉が漏れた。


その声は鈴のように軽やかで、ハチミツのように甘い。




「わたしはドロシー・アプリコット!あなたのマスターよ!」


「ますたー?」


人形は幼児のような愛らしい仕草で首をかしげた。




「そう、マスター。あなたの名前は……そうね……?」


しばしの逡巡ののち、脳裏にひとつの言葉がよぎった。


目の前の少女人形にふさわしい、美しい名前。




「あなたの名前はステラ!ステラで決まりね!」


「すてら……?わたしのなまえ……。」




ステラは不思議そうに、自分の名前を反芻したのだった。




☆『魔導人形「ステラ」が仲間になった!』

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