第3話 かわいいお人形を見つけたよ!

「……しゅじん……ご主人!起きるロボ!」


ロボ丸がバシバシとわたしの頬を叩いて起こしに来る。




「……う~~ん……あと10分……。」


「寝ぼけてる場合じゃないロボ!とっとと起きるロボ!」


わたしがまだ起きないとみるや、今度は頭をゲシゲシと蹴り始めた。




このブリキ野郎……よりにもよってご主人様の頭を足蹴にするなんて……。


今度スクラップにして、粗大ごみ置き場に捨ててきてやろうか……(#^ω^)




わたしがまじでそんなことを考え始めたころ、ようやく脳が周りの状況を認識しはじめた。


どうやら、頭に血が上ったのが幸いしたらしい。




どうやら、さっきの転移魔法に巻き込まれた際、しばらく気を失っていたようだ。


「まったく……、主人の頭を足蹴にすんじゃないわよ!」




わたしは頭をぶんぶんとふり、わずかに残った眠気を吹き飛ばす。


そして顔を上げ、周囲を見渡す。




そこは、ちょうど学校のグラウンドほどの広さがあるドーム状の空間だった。


周囲は明るいが、天上には照明の類はない。


どうやら、構造材それ自体が光を放っているようだ。


ここはもしかすると……。




「もしかしてわたし、隠し部屋みつけちゃいました?」


「そうみたいロボ。」


「やったーーーーー!!!!!」




思わずガッツポーズをちってしまうわたし。


ダンジョンの隠し部屋とくれば、当然隠しアイテムや宝箱があるはずだ。


しかもここにいるのはわたしとロボ丸の二人のみ。




したがって、仲間と財宝を分け合う必要もない。


宝は全部ひとり占めだ。




「えへへ……❤お宝お宝……❤わたしが独り占め……❤」


思わぬ発見に頬の筋肉が緩み、口角があがってしまう。


「ご主人いやしいロボ……。」


わたしのだらしない表情に、ロボ丸があきれたような声を出す。




わたしは両頬をパンパンと叩いて気合を入れなおす。


よし、さっそく探索だ!




「ロボ丸、索敵をお願い。」


「ご主人が眠ってる間に済ませたロボ。周囲に敵影なしロボ。」


「さすがロボ丸!頼りになる~~!」


「ご主人調子よすぎロボ。」




ロボ丸と軽口をたたきながら、わたしは探索を進めた。


周囲を見渡すと、あちこちに巨大なコンテナや、用途不明の機材が所狭しと並んでいる。


中には、作りかけと思しき何かの機械装置が、ゴロゴロと散乱していたりもする。


床にはパイプや配線らしきものが縦横に走っており、時折、足を取られ転びそうになってしまう。




「ここは……ドワーフの研究所か何かかしら?」


「ご主人、あれを見るロボ!あっちになんかあるロボ!」




ロボの指さすほうを見ると、ちょうど広場の中心部に何かの台座らしきものがある。


「ここからじゃよく見えないな……。ちょっと行ってみよう!」


「ご主人、気を付けるロボ!」




わたしは好奇心の赴くまま、台座に向かって歩き出した。


台座に近づくにつれ、床に走る配線の密度が濃くなっていく。


どうやら、これらの配線は中央の台座につながっているようだ。




配線や、横倒しになった機材を乗り越え、ようやく中央の台座へとたどり着いた。


それは、台座というよりは、ある種の作業台に酷似していた。




大きさはちょうど、外食店によくある大きめの丸テーブルと同程度。


天上からは、先端に尖った機械装置を備えたロボットアームが何本もぶら下がっている。


アームの先端についているのは、おそらく何かしらの工作器具だろう。




ふと台座の中央に目をやると、あるものが目に留まった。


エメラルド色の輝きを放つ、半透明の円筒形の物体。


大きさは丁度、竹筒でできた水筒ぐらいだろうか。


よく目を凝らすと、円筒の中に何かが収められているのがわかる。




「これは……妖精?標本か何かかしら?」


中には妖精の少女らしきものが収められている。


わたしは標本(?)を台座から取り外し、手に取ってよく見てみた。


どうやら妖精ではないらしい。これは……人形だ!




「お人形……これがお宝かしら?……ん?」


ふと、指が何かに触れた。


円筒の底にボタンらしき突起がある。


わたしはボタンを押してみた。




ぷしゅー!


圧縮蒸気を吹きながら円筒がスライド展開し、中に収められていたものがあらわになる。


雪のように真っ白な肌と髪の毛、マシュマロのように柔らかそうな頬っぺた。やや幼い顔つきの、絶世の美少女。




「キレイな女の子だなぁ……。」


その美しさに、わたしは思わず息をのんでしまう。




これが、わたしと魔導人形「ステラ」との最初の出会いだった。


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