第一章
第2話 ダンジョンでなんか見つけた!
パーティーをクビになってから数日後、わたしはギルドからソロプレイヤー専用クエストを受注して、日々の糧を得ていた。
今回請け負ったクエストはスライムコアの採取。
スライムコアとは、スライムの体内にあるゼラチン質の塊のことで、主にポーションの材料や錬金術の素材として重宝されている。
効率よく採取を行うには、スライムの群生地に赴く必要がある。
今回採取場所に選んだのは、共和国近郊にあるドワーフ遺跡の地下一階。
主に初心者のレベル上げや、低難度のクエストの舞台となる場所である。
今回の採取目標数は30個。
今採取用のアイテム袋には24個のスライムコアがある。
あと少しで目標達成だ。
スライムコアを入手するためには、当然スライムを倒さなければならない。
30匹もスライムを倒すのは大変だろうと思うだろうが、わたしにとってはそこまで苦でもない。
なぜならわたしには人形たちがついているからだ。
薄暗い通路の奥からガチャガチャという音を立てて、小さな人型の物体がこちらに向かって歩いてくる。
当然、敵ではない。いや、敵であるはずがないと言い直すべきだろうか。
なぜなら、遺跡内部のスライムはすでに彼・女・の・手・に・よ・っ・て・掃・討・済・み・だ・か・ら・だ・。・
「ご主人~~!スライム退治終わったロボ~~!コアの回収頼むロボ~~!」
赤い小さなロボットの人形がこちらに向かってぴょこぴょこと手を振る。
彼女の名は「ロボ丸」。
わたしの使役する人形の一体だ。
彼女は主に雑魚敵の掃討やトラップ解除を担当している。
今回のクエストでは彼女にダンジョン内を先攻させ、遺跡内の全スライムを掃討させる。
しかる後、わたしは安全にダンジョン内のスライムの死骸からコアを回収するというのが今回の作戦だ。
「ごくろうさま、ロボ丸!けがはしてない?」
「ボディの塗装がちょっとはげたロボ。後で塗ってくれロボ。」
ロボ丸は塗装のはげた部分をアームでバシバシと叩いて示した。
「わかったわ。後で塗ってあげるね。よしよし。」
わたしはロボ丸を抱き寄せ、頭を撫でてあげた。
「ところでご主人。」
「ん?どうしたの?」
「ちょっと気になるものを見つけたロボ。」
「何か見つけたの?」
ロボ丸はこくこくと首をふって答えた。
ロボの話によると、戦闘中に壁の一部が崩落してしまい、その中から奇妙な壁画が現れたという。
遺跡の地下二階までは、大学の調査隊や冒険者の先輩方にあらかた調べつくされており、目新しいものは何もないという話だった。
もしかかしたら、なにか歴史に残る新しい発見をして、皆から称賛されるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ、わたしとロボ丸はコアの回収がてら、壁画のある場所まで行ってみることにした。
「もしかしたらお宝かな?」
「ご主人いやしいロボ。」
そんな軽口をたたきながら二人で遺跡の奥へと進んでいく。
途中で何匹かのスライムの死骸からコアを回収。コアの数は目標数に到達した。
しばらく歩いていくと、問題の場所にたどり着いた。
ロボ丸の報告通り、通路の行き止まりの壁が崩落しており、中から奇妙な紋様の刻まれた壁画が顔をのぞかせている。
描かれているのは、古代の魔法陣の類だろうか?
壁画の中心部には淡い輝きを放つクリスタルが埋め込まれている。
「トラップかもしれない。慎重にいかないと。」
わたしは懐から計測器具を取り出し、周囲の魔力の流れを探る。
どうやら、中心部のクリスタルに向かって、魔力の流れが集中しているようだ。
しかし、わたしは壁画の調査に夢中になって、足元がおろそかになっていたようだ。
「うにゃっ!!??」
足元にあったスライムの死骸を踏んづけてしまい、すっころんでしまう。
そして、転んだ拍子に、思わず壁画に手が触れてしまう。
その瞬間、壁画の魔法陣に光が走り、クリスタルがより一層強い光を放った。
クリスタルの青い輝きが空間を満たし、わたしの身体を包み込んでいく。
これは転移魔法だ!
「……しまっ……」
しまったと言い終わらないうちに、わたしたちの体はどこか別の場所へと飛ばされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます