第10話 魅惑的な彼女
「エレノアさん、どうかなさいました?」
「さっきのタオルです!さっきのタオルってどのような効果が?」
「大した事ありませんよ、ちょっと涼しくなるだけですわ、濡れたり湿っただけで周りを冷やすだけですよ。汗を吸収してもに臭いが出ないように消臭効果もありますけど。濡れた状態で部屋に掛けて置けば、部屋全体を多少なりと涼しくできたりしますね」
「それも売ってください!」
やれやれです。
エレノアさんは商魂逞しいのですね。
「いやあ、それにしても、エリンさん見つけた時に『こんな子どもを』って言った時は突っ込むべきか悩みました」
「どういう事ですか?」
「だって、エリンさんってシャーロット様と同じくらいの背丈でしょう?胸は明らかにエリンさんの方が大きいですし。なのに子どもって言うから、それって自分の事を子どもって認めているような──」
「エレノアさん?」
「は、はい!」
何がいいたいのかなんとなく、なんとな~くわかります。
でも、わたくしは心が広いので全然気にしません、全然です。
「ふふふ」
「出過ぎた事を言ってしまいました反省していますごめんなさい忘れてくださいなんでもします取引停止だけはご勘弁をっ!」
「そんなに怖がらなくても…」
「だってぇ~~、今すっごい顔していましたよ!普段はこんなに可愛らしいお顔なのに、まるでオークの様な……、あっ」
「オークは言い過ぎですよ。まったく…。そんな事くらいで取引停止にはしませんからご安心くださいな」
エレノアさんとの取引の話なんてどうでもいいのです。
わたくし達はもう一度、ルーカス様の言い分を聞いてみる事にしました。
食堂を経由して男子寮に行こうとしたのですが、食堂のテーブルで塞ぎ込み震える男子生徒が居ます。
「あら?あれはモーガンさんじゃないですか、どうかなされましたか」
「エレノア、俺どうしよう…」
「エレノアさんのお知り合いですか?」
「ええ、ロング準男爵家のご子息で、うちが平民の頃からのお客さんです。そういえば、ルーカス様と同室でしたね」
「へぇ同室なんだぁ……モーガン君、人に言えないとんでもない事をしでかした…」
「ひっ」
「…なんて事ないですよね?」
「ななな、ない、ないですよ?」
なんというか、わかりやすい人代表選手権でぶっちぎり優勝しそうな人ですね。
「ですよね、今なら救いの手を差し伸ばす事もできますが、ないのでしたら必要ありませんね」
「え?救い?」
「ないのでしょう?まさか王族を罠に嵌めて、お咎めなしなんて都合の良い展開なんてあると思います?あ、いえ、ないのでしたよね?」
「おおお、おれ、おれがやりましたっっっ」
「いいのですよ、正直に言ってごらんなさい、誰に脅されたのかちゃんと言えれば、わたくしが保護して差し上げますわ」
「実は──」
まぁ、犯行するにしても駒は選べって感じですよね。
答え合わせにはルーカス様と話さないとですね。
コンコン
「ルーカス様入りますよ」
と、言う言葉と同時に、部屋のドアを勢いよく開くとルーカス様が見知らぬ女子と抱き合っているではないですか!
「なななっ、何してるのですか!真昼間から!」
「時間関係ないですよねっ、あれ?あの人…」
「エレノアさんのお知り合いの方?」
「えっと…、ネタバレになりますが良いですか?」
「あぁ、なるほどそういう事ですか。ネタバレは言わなくていいですから名前だけ教えてください、呼称が面倒なので」
彼女の名前はヴァイオレット、バトラー公爵のご令嬢だそうです。
思っていたよりも大物ですね。
爵位だけでみれば対等ですが領地面積だと圧倒的にアルヴァレズ領の方が大きいですね。
「シャーロット姫、僕は真の愛に目覚めてしまったのです」
「は?……ほほう?聞きましょう聞きましょう」
「シャーロット姫が彼女、ヴァイオレットに数々の暴行や嫌がらせを行っていたと聞きました」
「ええ!その通りです!」
いえ、してませんよ?彼女とは初対面ですし。
でも肯定したほうが楽しそうじゃありませんか。
「え、え?」
「「え?」」
「ええ、その通りですですので、続けて続けて?」
騒ぎを聞きつけて来たメイソン君にジェームス君、なぜか駆け付けたクレアさんが部屋に入る事も出来ずに隠れて聞いています。
さらにモーガン君、マーティン様、エリンさんまで集まって部屋の外は大繁盛です。
だれも声を出さないでくださいよ?
折角のおもしろいシーンを台無しにしないでくださいよ?
「そんな婚約者は僕にはふさわしくない!よってこの場で、婚約のは──」
ドンガラガッシャーン!
「きゃああ」
窓の外が光に包まれ青々と茂っていた木が真っ黒になっていました。
天候が私達の仲を引き裂く邪魔をしやがるです!
これは神の悪戯でしょうか。
「大丈夫かい?ヴァイオレット」
「ええ、ルーカス様、これもシャーロットの嫌がらせですわ」
エレノアさんがひそひそ声で聞いてきました。
「(シャーロット様なにかしました?)」
「(してないわ、あなた達の誰か…じゃないわよね?)」
「(違いますー)」
じゃあ本当に神の悪戯?
「じゃあテイクツーを始めてくださる?」
「あ、ああ…(テイクツー?)」
「ルーカス様っ、がんばっ」
「ああ、ヴァイオレット、僕は頑張るよ!」
「その意気です!」
私の応援にも熱が入ります。
「え、え?えっと、つまりだ、シャーロット姫との婚約を破──」
ザアアアアアアアアアアアアア!
突然の局地的な豪雨がルーカス様だけを襲った。
室内なのに…。
「シャーロット!?貴女でしょう!?魔法でこんな嫌がらせをするのは」
「いえ、わたくしではありませんよ、詠唱してませんし」
「じゃあ他に誰が居るというのですか!」
「そんな事知りませんよ。ルーカス様?言いたい事があるのでしたら、何事が起きても最後まで言い切る事が大事ですわ」
「そんな事はわかっている!言うぞー言うぞー、今すぐちゃんと最後まで完璧に噛まずに言い切るからなっ、婚──」
ボワッ
一瞬にしてルーカス様の頭が炎に包まれた。
「あちあちちちあちいい、ハァハァ、なんて卑劣な!」
ちりぢりになった髪の毛が見事なアフロを形成しています。
この髪型は物語の中の挿絵でしか見た事ありませんので、少々感動物です。
それにしてもルーカス様の髪を焦がす程の神の悪戯、髪を…神だけに……うぷぷ。
いけません、ここは真面目なシーンです。
「ではこうしましょう、わたくしはハンカチで口を塞いで後を向いて居ますので、最後まで言ってくださりますか?」
「お、おう、わかった、準備はいいか?」
「ふぁいふぉーふふぇふ(大丈夫です)」
「では、僕はシャーロット姫とこ──」
ボコボコボコボコっ
「うわぁぁぁぁあ」
床から土が生え一気に盛り上がり、ルーカス様が降りれなくて焦りだした。
天井との間に挟まって降りれないだけかもしれません。
でもここ、二階なのですよね、土って不思議ですわ。
一階はどうなっているのでしょうね?
「高いの怖いよおお、うわああああん」
「ルーカス様!なんという事でしょう!シャーロット!いい加減にして早く降ろしなさい!」
これでもわたくしを犯人だというのですか。
「じゃあ盛り上がった土をわたくしが消しますから、貴女がルーカス様を受け止めてくださいね」
って言った傍から盛り上がった土が消滅、ルーカス様は一瞬の無重力体験の後、床に落下した。
「ヴァイオレット~!助けて~!」
「ルーカス様!必ず受け止め──ぐえぇ」
ヴァイオレットさんはルーカス様の体重を支え切れず、そのまま押しつぶされた。
まぁ、あの体重は普通の女子生徒では受け止めれないでしょうね。
「はっ、僕は何をしていた?女子が下敷きに?」
「ルーカス様っお忘れですか!?私の事を忘れたのですか?……それよりどいてくださいっ重いのよっ」
「ご、ごめんなさい」
「こほん、ルーカス様はもう、私の物よ!シャーロットは婚約破棄されるのよ!ザマァ見ろだわ!さっさと自分の領地にお帰りなさい!」
「え?君、誰なんだい?」
酷く長い沈黙が続いた。
固まったヴァイオレットさんに状況が理解できないルーカス様。
そしてどうでもいいから誰か説明してくださいよとばかりに待ちくたびれた、わたくし。
「あれ?ヴァイオレットさんのペンダントが壊れたみたいですが、大丈夫ですか?」
「ああああ!」
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