第4話 昼食は情報収集の場ですね
魔法の実技の担当をしていた教師ですが退職したそうです。
何か怖い目にあったのでしょうか?
まぁ復元魔法は嘘で、似たような色のハリボテの腕輪を魔法で生成しだけなのに、腕輪を付けた瞬間に気絶したのです。
もうちょっと遊びたかったのに…。
復元魔法はかなり上級魔法になるので、こっそり出来る物ではなかったのです。
そんな事も知らないで生徒に何を教えるのでしょうね?
そんな事より、ルーカス様の反応ですが、残念な事に恐れては頂けなかったのです。
その事は授業中に一瞬見えたルーカス様の表情でわかっていました。
あの時、他の生徒と同様に拍手しながら「すごいすごい」と喜んでいたのです。
やはり爆裂魔法をチョイスすべきでした。
いえ、いっそ暗黒魔法の方がよかったでしょうか。
そうこうしている内にお昼休みになり、屋上でクレアさんも含めて三人で昼食を頂く事になりました。
「昨日はわたくしの拙い料理を食べて頂き、ありがとうございます」
「いえ、美味しかったです、確認しないで食べちゃってごめんなさい。お昼休みの時間中、探して見つからなかったので、勝手ながら…。すみません、僕の姿が醜いからショックを受けたんだよね?」
「いえ、そんな事はありません、ただ少し印象が違いすぎたというか…」
「それって醜くてショックを受けたと言っていません?」
「クレアさん!違います、本当に違うんです」
いえ、その通りです、ごめんなさい!
でもそこを正直には言えないです。
「そうですよね、見た目で判断するようなお方じゃないですよね」
「あはは、勿論ですわ」
グサァァ!心に突き刺さるそのお言葉。
見た目で判断するって確かに酷い事です。
ですが事は結婚に繋がる話、見た目もある程度大事だと思うのですよ。
それに太った体形は自己管理の欠如ですし、手入れをしていない髪というのも対面する相手の事を考慮していない事になるので、そのような方と一緒になる事はわたくしの神経が持ちません。
ですが、そうですね。
わたくしがダイエットに協力するのはどうでしょうか。
どうせ、ジョギングを日課にしたところで長続きしないでしょう。
早朝に一時間のジョギングというのをわたくしの日課にしているのですが、ついてこれるのか試してみるのも悪くありません。
ついてこれないようでしたら、さげすんだ目で見てあげれば脅しとしては十分ですわね。
それに見た目です。
ボサボサの髪を誰も指摘しないというのも些か変な感じがします。
お付きの人は何をしているのでしょうか。
「ルーカス様は侍従が居ないのでしょうか。身の回りの世話をするというかですね、身だしなみを意識された方がよろしいかと」
「そうなんですよ、侍従いないんですよね。以前は仲の良かった侍従がいたのですが、毒殺されて以来、怖くなっちゃったんだよね?」
「クレア、その話は」
「本当の事でしょ。あれ以来、宮内で出された食事にも警戒するようになって、挙句に──」
「それって単純に、王宮内で派閥争いか何かありますの?」
「え~と、あるようなぁ~?ないようなぁ~?」
クレアさんの歯切れの悪い回答。
あるという事ですね、原因は、わたくしの可能性が高いのでしょう。
だから言いづらいのでしょう?
「あるのですね、それが生死にかかわっているのであれば、わたくしも黙っては居られないですわ。対抗勢力を教えて頂けます?ちょっと捻ってきますので」
「いえいえいえいえ、対抗勢力なんていません、大丈夫です。ですから、魔法は使わないでください。王都を滅さないでください」
「クレアさん、わたくしを何だとおもってらっしゃるの?歩く危険物みたいな扱い止めて頂けますか?絶対に怒らないのでわたくしに対する認識をちょっと教えてくださります?」
クレアさんが生唾を飲み込む。
ルーカス様と目をあわせ、意を決したように口を割り…話していただけました。
「停戦時に先王様が土下座した時にシャーロット様が頭を踏みつけたとか」
「肩車して頂いた事はありますが、頭を踏んだ事はありません、ない、はず、です、あれ?いえ、あれは違いますから無いです、少なくとも、土下座したシーンには立ち会っていません」
「シャーロット様が焼け野原にした土地をシャーロット様直轄地にして領地運営、奴隷を強制労働させてるとか」
「直轄地の範囲はその通りですが、ウチに奴隷はいませんわ。犯罪者を矯正して働かせてはいます。今では魔法の影響でマナに満ち溢れた一大農業地になっていますわ」
「王都に来る途中で山賊を十六グループも血祭に上げて生き残った奴らを奴隷にしたとか」
「王都までの日数は八日でした、それだと一日二グループに襲われた事になりますね、普通に考えて数がおかしいでしょう?実際は十グループですし、誰も殺さずわたくしの領地に連行しておきました。お陰で同行の騎士が次々に減って迷惑でしたわ」
「魔法を使いすぎたせいで身長と胸が全く育たないとか」
「調子こいて体形ディスるの止めてくださる!?あ、コホンっ。アルヴァレズ家はエルフの血が混ざっていて少し長命なんです、そのせいでちょっと成長が遅いだけなのですわ。たぶん」
「えっと、私の知っている噂は以上です、おこ…、怒らないって約束…でしたよね?」
「ええ、怒ってはいませんよ。ぜ~~んぜん怒っていません、ですが、最後の噂の出所だけ教えて下さる?別に危害を加えようとしている訳ではありません、ちょ~とお話をしたいだけですわ」
スキル威圧を発動しても、結局教えて頂けなかったのは残念です。
変な感じに脱線してしまいましたね。
路線を元に戻さなくては。
「食事が不安なのでしたら、わたくしがお料理しましょうか?」
「え、よろしいのですか?」
「ええ、ついでですので手間もかかりません」
「わ、私もよろしいですか!?」
食い気味にクレアさんが参加表明。
あなた別に毒殺とか無縁でしょう?
「二人分も三人分もかわりませんから、構いませんよ」
「やったぁ、昨晩の料理美味しそうだったんですよね、ルーカスぅ、良かったねっ。シャーロット様っありがとうございますっ」
クレアさんのテンションの上がり方がおかしい。
少し引いてしまいました。
それよりもルーカス様は食事が不安なのに、どうして太れるのでしょうか?
「ただし、一つだけ条件があります」
「はい、何でしょうか?何でもいってください」
「朝六時からのわたくしの日課に付き合って頂けないでしょうか」
「わかりました、ですが何をするのでしょう?」
「ランニングですわ」
「ええええええ、運動苦手なんだけど…」
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