第5話 いじめっこに絡まれてみた
今日は授業を真面目に受け、放課後となりました。
ボイコットしてもわたくしには全く影響のないような内容なので、退屈なのですけどね。
帰りにルーカス様が男子生徒2名と一緒に歩いている所を発見。
直ちに尾行を開始しました。
男子生徒Aに肩を抱かれるルーカス様。
美男子同士であれば、さぞ美味しいイベントスチルなのですが、今のルーカス様に期待してはいけません。
でも、脳内フィルターを掛ける事によって…。
そんな場合ではありません!
よくよく観察すれば、ちょくちょく小突かれたり、足を蹴られたりとめめっちい嫌がらせを続けています。
これが噂に聞く、貴族奴隷という物でしょうか。
貴族なのに言いなりになり奴隷の様に従う人の事をそう言うそうです。
学園系物語の書物で時々出てくるのですよね、流行りなのでしょうか。
絡んでいる男子生徒をよく見ると二人共、中々な美男子。
変に仲裁して恨まれるのも面倒です。
それに、わたくしにはそのメリットがありません、助けた事でルーカス様に依存されても困ります。
ですが、なんとなく尾行を続けていると、人気のない所に連れていかれました。
聞き耳を立てると会話が聞こえてきます。
「おい、デブ。俺達親友だよなぁ?」
「はい」
「ちょっとほしい物があるだよなぁ~。アイアンフォースで入荷した最新型クリティカル特化バスターソードが欲しいんだよねぇ」
「そうなんですね」
「いやいや、そこはそうじゃないよな?わかっているんだろ?ちなみに値段は三万九八百ドレルだ。ちょ~っと援助してくれるだけでいいんだ。返さない訳じゃないよ」
「い、今手持ちがないので…」
「セール期間は今日までなんだ、だからわかるよね?いいかなぁ?いいよなぁ?」
それにしてもルーカス様って王族ですよね?
この国には王族に対する敬意という物はないのでしょうか?
その話の後、ルーカス様は一人でどこかに行かれました。
恐らくは寮に置いてるお金を取りに行ったのでしょう。
二人の美男子は人気のない所で待っている様です。
折角なので少しお話を聞いてみましょう。
「こんにちわ、こんなところで何をなさっているですか?」
「これは公爵令嬢、こんな人気のない所にようこそ」
「アルヴァレズ様じゃあないですか、婚約者のブタが来るまで暇つぶしに付き合ってくれるんですかぁ?」
「そうですね、わたくしも暇をしていたところですの。所でお聞きしたいのですが、ルーカス様は王族なのでしょう?あなた方には敬意とかないのですか?」
「敬意も何も土下座王の孫ですよ。敬う必要ありますかね?でも、俺達友達なんで、社交界にも出てこない引きこもりのブタ君に貴族の仕来りを教えてやってるんですよ」
なるほど、土下座の一件で王族の権威が落ちたのですか。
それはそれで、わからなくもない事です。
「ちんちくりんの田舎貴族様は俺達と仲良くしたいのか?もうちょっと成長したら夜の相手をしてやるよ」
「へぇ、お前の好みってもうちょっと熟した感じなんだ?俺はコレでもイケルくちだけなぁ」
そんな事をいいつつ、好色Aさん(仮称)がわたくしの腕を掴んできます。
何のつもりか知りませんが、貴族としてレディーの手を断りもなく掴むだなんて無礼にも程があります。
それにちんちくりんって何でしょう。
聞きなれない言葉ですが、酷い侮辱を受けている感じがします。
「放しなさい、怒りますよ?」
「怒ったらどうなるんですかぁ??得意の魔法でも使うんですか?ははっ、俺達が喋れなくするのと魔法の詠唱、どちらが早いですかね」
その言葉と同時に、悪口Bさん(仮称)がわたくしの口を塞ぎ壁に押し付けてきます。
これで詠唱できなくしたつもりなんでしょう。
ですが、魔法を得意としている者が魔法しか使えないと誰が決めたのでしょうね。
「ほうら、詠唱できなくなりましたぁ~。ブタが来るまで遊ばせてもらうよ、それでお前も一生俺らの言いなりなっ」
何をどうしたら一生言いなりになるというのでしょうか。
ですが我慢も限界です。
もっと情報を引き出したかったのですけどね。
まだフリーになっていた片手で悪口Bさん(仮称)の手を掴み、魔力を流し込む。
「なんだぁ?なんか温まってきたんだが、癒してくれるのかい?」
その言葉と同時に悪口Bさん(仮称)は倒れ込む。
好色Aさん(仮称)も同様に魔力を流し込んで、昏睡させた。
「護身術も知らないのですか。残念な人達ですね」
魔力を相手に流し込む、それだけだと魔力の譲渡にしかならない。
ですが魔力にも色々な属性や性質があり、先ほどわたくしが流し込んだのは闇属性を帯びた魔力。
およそ人類の九割以上が闇属性と無縁であり、闇属性に対する抵抗力がありません。
しかもそんな魔力を不協和音を性質を持たせて流し込めば、体温が上がり昏睡状態に陥ります。
最初は風邪の初期症状の様に体温が上がるのですが、これは所持する魔力と流し込まれた魔力が争いを起こすからで、それが流し込まれた魔力の圧勝で終わると、その魔力が全身に巡り三半規管が狂い酩酊状態になる、所謂、魔力酔いが発生するのです。
結果、立っていられなくなり、程度によっては嘔吐する、最悪、死に至る事も。
……王都で嘔吐……ぷぷぷっ。
この人達が吐いていれば口に出している所でした。
セーフ?
暴力で片づけても良かったのですが。
魔力酔いの方が痕跡が残らなくて都合がいいのです。
そのあたりの草木から魔法でロープを生成。
二人を拘束して吊るし上げ。
もちろん、頭が下です。
「おや、気づきましたか?」
「テメェ、う、動けねえ!何をしやがった」
「えーと、君達は完全に放置されている。質問をするので速やかに答えてください。宙吊り状態の人間はおよそ三時間くらいで意識を失います。血液が頭の方に集まってその圧力でそうなるそうですよ?その後放置すると確実に死ぬそうです。あぁ、恐ろしい恐ろしいですわ」
「畜生めっ、俺達を誰だとおもってやがる、ただで済むと思うなよ?」
「何方なのです?本当に知らないのです、誰なのか教えて頂けますか?」
「俺がメイソン・ゴンザレスだ、父は伯爵で軍務長官だぞ、降ろさないと父に言いつけるからな!」
「私はジェームズ・キャンベル、父は侯爵家で軍務次官です、お願いです助けてください」
好色Aさんがジェームズ、悪口Bさんがメイソンと。
その父親が何をしてきても怖くはないのですけどね。
「では、メイソン君にお聞きします、ちんちくりんとはなんでしょう?」
「せ、背が低いって意味です」
「それだけではないでしょう?語感にはもっと悪意が込められていましたよ」
「
「なるほど。ふむ、勉強になりますね。言葉で愚弄して語感でも愚弄したという事ですか…。よし、殺しましょう」
「ひえぇっ、おやめください。何でも喋りますから」
「そもそもですが、人の容姿の悪口は紳士の風上にも置けない最低な行為ですよ?」
「わかっています、ごめんなさい!」
あれ?
これ私の事だ。
いや、いやいやいや、私は口に出してはないから違う、違うよね?
「ま、まぁ、その事はいいですわ、質問はこれからです」
「「はいっ」」
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