第118話 (閑話) イケシルバーの諸用

 イケシルバー関連の閑話です。特別重要な話ではないですが、あった方がいいかなぁと。

 ※今後別にリアルの方がゲーム内にかかわってくるような展開はないです。リアル回でちょっと触れる程度です。読み飛ばしても問題ないと思います。

 ―――――


 

「ちょっと良いかの」


 ミヨが第8エリアに入る少し前、第8エリアにある一番発展している大きな街のメイン通りから外れた場所にあるカフェ。まだそれほどプレイヤーたちが辿り着いていないその場所で、イケシルバーとエティテプが対面していた。


「何かしら。こんなところに呼び出して」

「ちょいと相談したいことがあっての」

「相談?」


 普段、同じクランに所属している2人は結構な頻度で情報のやり取りをすることがある。しかし、それはフレンドチャットなどで行われることで、このように対面してやり取りをすることはほとんどない。


 他のプレイヤーを交えてやり取りする場合はまれに会うこともあったが、プレイ時間のこともあって、このように対面して会うことも割と久々なであった。


「チャットなしに相談してくるってことは結構個人的なことなのかしら」

「そうじゃのう。まあ、アレに関してのことなんじゃが」

「あれ…ね」


 イケシルバーからアレと聞いて、ゲーム内ではほぼ素を見せないエティテプが顔をしかめた。


「とりあえずプライバシーモードに切り替えるわね」

「おお、そうじゃな」


 FSOに最近実装されてた、プレイ中の会話と動きを他プレイヤーから隠す機能を使って、2人の会話が他のプレイヤーに聞こえなくなった。


「あれ関連ということはようやくごたごたが終わりそうということか?」

「うん。そう」


 プライバシーモードに変わった瞬間、2人の口調が反転した。イケシルバーの中の人物は女性。エティテプの中は男性なのだからおかしくはないが、アバターの見た目に反した口調に、もしこの会話を他人が聞いていたら混乱必至の状況だろう。


「めどが立っただけで、すぐに終わるってわけではないんだけどね。ようやく、あっちが折れてさ」

「折れたって、あれはただ悪あがきしていただけだろ」


 イケシルバーの中の人物はある業界ではなかなか有名な存在だった。しかし、そのせいでいろいろと問題が起き、今ではほとんどその意業界から距離を取って生活している。


「うんまあ、そうとも言うかな」

「そうとしか言わねぇよ」


 そのいろいろの問題の│ぬしが諦めが悪く、何かにつけて責任をイケシルバー側に押し付けようとしていた。当然だが、イケシルバー側に非はほとんどなかった。全くなかった、というわけではないのが厄介なところなのだが。


「とりあえず、それの後処理……をするから、ちょっとの間ゲームから離れる予定」

「そうか。ということは、サブマスしているから、その穴埋めとしてよろしくってことか」

「そうそう。他の人もどうにかしてくれるって言ってくれているんだけど」

「まあ、お前がウロボロスのサブマスしているのは俺が押し付けたってところもあるから、やらせてもらう」

「よろしくね。お兄ちゃん」


 渋い初老男性のアバターが甘え、背の高い女性がそれに応えるという、見る人の多くが目を疑うような光景ではあるが、2人の中ではアバターの中の人物が誰かわかっていることで


「こういうときだけそういうことを言うのは反則だろ」

「こういうのは、こういうときじゃないと使えないからしょうがないでしょ?」


 エティテプがやれやれといった面持ちでイケシルバーのことを見る。


「……今更だが、今の俺たちの見た目と声で、このやり取りはかなりシュールな光景だよな?」

「んふっ」


 エティテプが漏らした言葉にイケシルバーが笑いをこらえられず声を漏らした。


「んふふふっ、そ、それは今更過ぎじゃない?」

「いやま、そうなんだが」


 自分の発言に耐えようとしながらも笑い続けているイケシルバーの姿をエティテプは少し呆れた表情を向けていた。


「とりあえず、お前はやるべきことをしっかり終わらせて来い。今まであのことで集中できていなかっただろ」

「うん」

「さて、時間もそろそろか」

「そうだね」


 そのやり取りを最後に2人はいつも通りの雰囲気に戻るとプライバシーモードを解除した。


「それじゃあ、すまぬがよろしく頼むぞい」

「ええ、わかったわ」


 そうして2人は何事もなかったようにそのカフェから退店していった。




 ―――――

 イケシルバーとエティテプはリアル兄妹。変わり者兄妹。

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