第117話 第8エリアは寂れている
第8エリアに着き近くの街でリスポーンポイントを書き換えた後、イケシルバーと連絡を取ろうとしたのだが……
「ごめんなさいね。あの子今ちょっと立て込んでいて、しばらくはログインできないと思うの」
「マジか」
リアルで用事があるのは仕方がない。俺みたいにリアルをほぼ捨ててプレイしている廃人なんてごく少数だろうしな。
居ないのはどうすることもできないので、イケシルバーの代わりに対応してくれたエティテプにダンジョンマスターの情報について聞いてみたが、残念ながらこれといって新しい情報は上がってきていないようだった。
「こっちも欲しい情報ではあるんだけど、まだダンジョンマスターの職に就いたプレイヤーって少ないのよ。うちでもまだ2人だけだし、ミヨちゃんみたいに廃課金で、それでいてダンジョン開拓している子なんて他の知り合いどころか噂でも聞かいないし」
「これはあれか、先駆者の弊害か」
「そうねぇ」
誰よりも先に新しいものを見つけられる楽しさはあるが、こういう時に情報を得られないのは少し厄介だな。別に人より先に立って優越感に浸るような趣味もないし、誰でもいいから俺より先にダンジョンマスターを極めてほしいんだが。
もしかしたら俺よりも先に居るダンジョンマスターがいるかもしれないが、いたとしても小数だろうし今ウロボロスに情報がないとなれば、今後も情報を進んで出してくる相手ではないだろうな。
一応、時間がかかるが調べることはできると言われたが、そこまでして知りたいかと言われればそうでもないので断った。
「さて何をするかね」
「です?」
エティテプと別れ、第8エリアの町の中を独り言ちながら歩く。
シュラが俺の隣に、他のテイムモンスターたちは体の大きな朱鞠の体の上に乗って移動しているため少し目立つが、他のプレイヤーにじろじろ見られるのもそこそこ慣れたな。
今いる町というか第8エリアにある町は周囲が荒廃した土地だからか、町の中もあまり発展していない場所が多く、今いる街も店の数はあまり見当たらない。
ゲームだから最低限、武器屋や進行上必要な店はあるのでプレイヤーはそこそこ見るが、住民がちらほらしか見当たらずあまり活気が良いようには見えない。道もあまり舗装されていないからちょっと歩きにくいし。
「ウロボロス内でも情報がないとなれば、ダンマスのことはアンゴーラに聞くしかないとして」
このままだらだらと町の中を歩き回っても進展はなさそうなので、すでに情報を手に入れている第8エリアにあるダンジョンにでも行ってみるとするかな。
ウロボロスから聞いた話だと第8エリアには結構な数のダンジョンがあるらしい。
そのうちの2つが、素材集めとしてもレベル上げの場所としても有効で、結構な数のプレイヤーが利用しているとのこと。
俺のレベルを上げるのにも有効だし、シュラたちのレベルを上げるためにいい素材を手に入れる必要もあるしで、一石二鳥なダンジョンだな。
まあ、素材に関しては金策で売られているので、そこまで手に入れなくても問題はないのだが、自力で手に入れられるならそれに越したことはない。
「ここから近いダンジョンって確かアガルタダンジョンだっけ」
「ダンジョン、いくです!?」
「シュ?」
そう呟きながら、マップのマッピング機能を使って記録していた場所を確認しているとシュラがうきうきした表情で俺の顔を見上げてきた。
「そうだな」
「やったです!」
なんか最近シュラが戦闘狂じみてきたんだよなぁ。他の子たちはそういう感じではないんだけどな。朱鞠に関しては表情がわからないからおそらくでしかないが。
しかし、元スライムなのにシュラはどうしてここまで戦うのが好きになったんだか。
とりあえず、前のエリアで素材集めをやったダンジョンではあまり戦わせることが出来なかったから、今回のダンジョンで存分に戦わせてあげるとするか。
―――――
次話は閑話になります。
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