第110話 費用対効果

 


 さっそくボス戦……の前に、ぷらてあと朱鞠に協力技を戦闘中に使うことを説明した。

 今まで一度も使ったことのない技である以上、上手く指示が通るかわからないので、俺としてもぷれてあたちの反応を見ておきたかったのだ。


 しかし、協力技を使うことを説明した時の反応はかなり薄かった。

 初めて使う技だったから驚くとか、理解できないといった感じの反応が来ると思っていたのだが、どうやらぷらてあと朱鞠どちらも協力技の内容をしっかり把握しているようだ。


 どうやってテイマーが覚えたスキルを把握しているのかも気になるが、一々詳しく説明しなくていいのは楽でいい。

 ちょっと拍子抜けな感じもするが、まあ、しっかり指示に従ってくれるのはわかったので問題はないだろう。

 

 事前の確認も終わったし、それじゃあボスエリアに入るとするかな。



『ボス:ダンジョンマスターとの戦闘エリアに入りました。ダンジョンマスターとの戦闘が開始されます』


 ボスエリアに入ったことで、戦闘開始のアナウンスが目の前に現れる。そして、今まで一切動いていなかったゴーレムが立ち上がり雄たけびの代わりに体を軋ませた。


 距離はまだ離れているとはいえ立ち上がったことで、その体が優に3メートルは超えていることが分かった。


 とりま看破でゴーレムのステータスを確認。



 [(ダンジョンマスター)グランドゴーレム LV:28 属性:土]

 HP:5800

 MP:100

 総合攻撃力:250

 総合防御力:550

 スキル:不明



 いや、めっちゃ硬いわ! 総合防御力550とかどんだけだよ。今まで戦ったモンスターの中で一番高かったやつでも300越えが精々だぞ。まあ、ゴーレムだからほぼ物理防御の方に偏っているんだろうが、それを考えるとVITだけで800越えとかも普通にあり得そうだ。


 これは物理メインの朱鞠の攻撃はほぼ通らないと考えた方が良いだろうな。毒とかの状態異常も効くとは思えないし。今回は協力技を使ってもらうから、攻撃する機会は少ないと思うが下手に近付いて攻撃されたらVITが低いから危険だ。


 そうなると攻撃のメインは、俺とシュラ、キャラメルとやちゃるか。

 いや、キャラメルとやちゃるに戦闘経験を積ませるために来ているのだから、魔法での火力が高めの俺とシュラは危なくならない限り攻撃は控えるべきだな。ボスとはいえ、グランドゴーレムのMND次第じゃ数発魔法を叩き込んだら終わりなんてことになりかねない。


「予定通り、攻撃する前にぷらてあと朱鞠の協力技を使うぞ。攻撃はそれが終わってから、キャラメルとやちゃるがメインで、俺とシュラは様子見しつつ危なくなったら攻撃で」

「…です」


 率先して攻撃ができないことでシュラがちょっと不満げな声を上げていたが、俺の掛け声でシュラたちが一斉に動き出す。


 ぷらてあと朱鞠が動き始めたゴーレムの近くまで移動し、そこから協力わがの発動エフェクトらしき黄色いモヤが2匹の体を包む。

 そして、ぷらてあが地面に手をつくと同時に植物のつるがゴーレムに向かって伸び、朱鞠が高速でゴーレムに向かって糸を伸ばす。 


 徐々にツタや糸がゴーレムに絡みつき、ゴーレムの動きを封じていく。しかし、完全に動きは封じることができないらしく、固定しているツタや糸がぶちぶちと切れていく音が聞こえてくる。


「これは協力技のレベルが低いからなのか、ゴーレムの力が強いからなのか。どっちもか? 動き自体は制限できているが、微妙だな」


 実は協力技は俺のMPを消費して発動している。どうして技にかかわっていない俺のMPが消費されるのかと思うが、ゲームだからと言われればそれまでだ。


 ついでにこの協力技の名前は、糸縛り無限地獄、という割と中二病的なネーミングだ。もうちょっとまともな技名にできなかったのかと思わなくもないが、技名を叫ばなければならないわけではないので、そのあたりは問題はない。これが言わなければならなかったのなら、使う気にもならなかっただろうが。


 とりあえず、MPの消費と効果を鑑みると、あまり使い勝手のいいスキルとは言えないな。一回で俺の総MPの6分の1。200も消費されるとなるとコスパはかなり悪い。


 協力技についてそんな評価を下しながら、動きが鈍くなっているボスに対してキャラメルとやちゃるがちまちまと攻撃をあて続け、完全に拘束が解けたところで俺とシュラが攻撃に参加した。

 そこから1分も経たない内にボスであるグランドゴーレムはHPが尽き、その巨大な体は虚空に溶けていった。





 ―――――

グランドゴーレムくんの魔法攻撃力は0、魔法防御力はギリ200を下回るくらいです。とはいえHPが割と高めなのでシュラの全力攻撃でも10発は耐えられます。

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