第109話 新技能

  

 サクサクとダンジョンの中を進んでいく。


 どこかのタイミングで足が止まると思っていたのだが、シュラのと朱鞠の攻撃で悉くモンスターが撃破され、俺が攻撃する出番がほとんどない。そのため、殆ど足を止めることなくダンジョンの中を進んでいる。


 階層が変わる手前にいるゲートキーパー戦では、鉱石系ダンジョンのゲートキーパーらしく高い防御性能を持った相手だけあり、朱鞠の攻撃の通りが良くなく俺も戦いに参加することもあった。

 しかし、それ以外の相手では本当に俺が必要ないくらいにシュラと朱鞠の無双がひどい。


 シュラも元はレアスライムとはいえ、雑魚モンスターだったはずなのにどうしてここまで強くなったのか。

 霊泉が言うには、シュラの進化はかなり特殊らしく、他にスライムガールどころか、ヒューマスライムまで進化させることができたテイマーはいないらしいが、特殊な進化をしたからと言って、元の強さから逸脱しすぎではないだろうか。


 特別なことをした記憶はないんだが、何が進化の条件だったのだろう。霊泉からいろいろ聞かれて話はしたが、その内容を検証しても同じように進化しなかったらしいからなぁ。

 マジでわからん。



 ダンジョンの攻略も順調に進み、最下層までやってきた。

 第5エリアにあるダンジョンの最下層は総じて7層目だそうだが、エリアの強さの割にダンジョンの階層が少ないのが気になる。


 仕様が違うのだろうが、プレイヤーメイドのダンジョンが第2エリアでも少なくとも20層目まで作れるのだから、10層くらいあってもいいような気はする。


 まさか、FSOのダンジョンって階層浅めなのか? ダンジョンメインのゲームではないのだから、そんな物だ、と言われればそうかもしれない。しかし、いちコンテンツとして考えるとしょぼいと思う。


 ま、先に進めば階層は増えるのだろうが、どこまで増えるのか。いや、そもそもFSOのエリア数がどの程度なのか、そこはまだプレイヤーの知るところではないわけで。だから、もっと先のエリアであれば階層が100になるようなダンジョンがあるかもしれない。

 やり込み要素は多に越したことはないので、そうであって欲しい。


「あれ」


 隣を歩いていたぷらてあが少し先を指しながら俺に声をかけてくる。先を歩いているシュラたちはぷらてあが指したところで立ち止まっていた。


「ん? ああ、ボス部屋のところまで来たのか」

 

 シュラたちが先駆けで出てくるモンスターを悉く倒しているから、いつの間にかボスがいる場所の手前まで来ていたようだ。


「です?」

「シュ?」


 俺がシュラたちがいた場所から少し手前で止まったことで何かあると思ったのか、シュラと朱鞠が俺の元に移動してきていた。


「ああ、ごめん。別に何かあって止まったわけじゃない。ボスの前だから少し確認しようと思っていただけだ。シュラたちは先にいても……いや、そういえば」


 シュラ、ではなく朱鞠を見たことであることを思い出した。


 俺は少し前に職業をミドルテイマーに変更したわけだが、その際にいくつか新しい技を覚えた。その中に、テイマーとテイムモンスター、またはテイムしているモンスター2体で協力技を使えるようにする、というものがあったのだ。


 ただこの技、どのモンスターでも使えるというわけではないようで、俺とシュラ、もしくはやちゃる、テイムモンス同士ならぷらてあと朱鞠でしか使うことができない。

 キャラメルだけがハブになっている感じがするがこればかりはどうしようもないので、今後仲間になるモンスターに期待しておこう。

 

 この技を取得してから一切使うタイミングがなくて忘れかけていたが、この際だからここで使ってみるのも有りかもしれない。フィールド上に居る雑魚モンスだと過剰だろうし、他のプレイヤーも居る。こういうのはなるべく誰にも見られていないところで試したいところだ。


 それに、ここのボスは物理火力が高めの超耐久型で、これまでに出て来たゴーレム以上に鈍足なのは事前に調べているので知っている。

 この相手なら変なミスをしても事故を起こすようなことはそうそう起きないだろうし、サンドバッグとして扱っても問題はないだろう。当然、油断しすぎれば重大なミスにつながるので、十分に気を付けてするのは当たり前だが。


 さて、となればどの技を使うべきか。

 現状使える協力技の内、ぷらてあと朱鞠の協力技を除けば技の説明からして、通常よりも強い攻撃技といった感じだ。

 耐久値の高いダンジョンボスに使うには丁度いいかもしれないが、戦闘が早く終わってしまうのはここに来た目的である、キャラメルとやちゃるに戦闘経験を積ませることができなくなってしまう。道中の雑魚モンスターを瞬殺しているから今更かもしれないが。


 ぷらてあと朱鞠の協力技は敵を拘束する技だ。ぷらてあも朱鞠も個別で相手を拘束するような攻撃を持ってはいるが、ボスクラスになればそんな攻撃はほとんど効かないのが普通だ。しかし、協力技であればそれ以上に相手の動きを封じることが出来るだろう。

 これなら相手の動きを封じて、その間に相手を攻撃する、という形でキャラメルとやちゃるを戦闘に関わらせることができる。


 まあ、やちゃるだけ戦闘に関わらせるなら協力技を使えばいいだけなのだが、そうなるとキャラメルが関われなくなるからな。

 満遍なく関わらせる、となると拘束攻撃の方が向いているだろう。


 そうと決まれば、さっそくこの先に進んでボスとの戦闘を開始しよう。





 ―――――

野良ダンジョンの階層限界について知りたい方は、基本情報の所にちょろっと追加しておきました

知っても知らなくても問題はないので、気になる方はどうぞ

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