第105話 ダンジョンへ行く前に
「ここでもできるのかよ」
目的のダンジョンに向かう前に、そこから一番近くの村に立ち寄った。
ここはダンジョンを監視する目的のために作られた村らしいので、NPCが住んでいる家の数はそこまで多くはなく、規模としてそこまで大きくはない。
良くあるダンジョンメインの小説では、ダンジョンの近くに大きな村が栄えていたりするのだが、FSO内のNPCはあまりダンジョンには近寄らず、むしろ厄介な存在として見られているようだ。
それで既に町で準備を整えているのにどうして村に寄ったのかといえば、この村にあるギルドで依頼を受けるためだ。
ギルドで受けられる依頼には何処のギルドでも受けられる共通依頼や、特定のエリア内で受けられるエリア限定依頼など、いくつかの種類があり、その中で今回目的としていた依頼はギルド限定依頼。
ギルド限定依頼は1つのギルドのみで受けられる依頼で、そのギルドの付近に関する依頼が主だ。そのため、近くにダンジョンがある村などにあるギルドには、ダンジョン関連の依頼が多く存在している。
基本的にダンジョン関連の依頼は常設依頼に当たるので無くなるということはない。そして、ダンジョンへ向かうプレイヤーの大半がこういった依頼を受けるために近くの村にあるギルドに訪れることになる。
まあ、俺もその内の一人ということだな。
ぶっちゃけ、Fsに関しては課金しているからそこまで必要としていないのだが、ギルドポイントに関しては課金ではどうすることも出来ないので、こうやってこまめに依頼を受ける必要があるわけだ。
あぁ、ついでだがダンジョンの近くにある村のギルドの受付は大体腕っぷしの強いおっさんが担当している。
理由としては、ダンジョンに向かうNPCの多くはゴロツキなどのがらの悪い人間が多いらしく、女の受付だとそういう奴らに絡まれたりしやすいし、突発的に起きる喧嘩の仲裁や鎮圧をするには女より男の方が向いているってことらしい。中には女の受付もいるが、そういう存在は当然腕が立つ。
話を戻すが、まあそれでその依頼を受けに来たわけなんだが、さっきの言葉はその後に知ったことが原因だ。
「セカンド職ってここのギルドでも設定できたんだな」
町にあるギルドでやろうとしていたセカンド職の解放がここでも出来るのは知らなかったな。よく見ればセカンド職を解放しているような動きをしているプレイヤーあちらほら居る。
俺が掲示板を見た時にはそんな情報は一切出ていなかったんだが、もしかしてあの後書き込まれたのかもしれない。
「ああ。それとメイン職の変更も可能だ。ミヨさんの場合、ギルドランクがDだから条件は満たしている。この場でセカンド職の選択ができるぞ」
「ん? 村のギルドでも職業の変更って出来たのか? 前は出来なかった気がするが」
俺は最初から職を変更する気がなかったから、他の奴が掲示板に書き込魔れていたのを見ただけなんだけどな。ま、その後確認はしていないし実際どうだったかは知らないのだが、もしかしたら最初から変更出来たのかもしれない。
「少し前まではできなかったが、いくつも要望が来ていたからな。それで最近できるようになったんだ」
「なるほど」
元からじゃなくこの前のアプデで追加されたってことか。まあ、状況に応じて職業を替えているプレイヤーも居るらしいし、大きな町のギルドでしか職の変更が出来ないっていうのは、そんなプレイヤーにとって不便だからな。
今まで俺にはほとんど関係ない話だったが、町のギルドの混雑具合を見た限り悪くないアプデだったな。しかし、町のギルドでの光景を思い返す限り、俺と同じように気付いていないプレイヤーは多かったようだが。
まあ、セカンド職を解放することで混雑が生まれるのを見越しての判断かもしれない。
「職業の設定はどうする。今するのか。たぶん初めてだよな?」
「ああ、セカンド職の方を」
「了解。ギルドカードの提示とこの水晶に触れてくれ。触れれば適性のある職業が目の前に表示されるはずだ」
「わかった……が、適性?」
俺の対応をしているギルド職員にギルドカードを渡しつつ、疑問を投げかける。
FSOはステやスキルで就ける職業が制限されるようなゲームではなかったと記憶しているんだが、セカンド職に関しては違うのか?
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