第97話 情報提供

 

「先にイベントの報酬で得た卵から孵ったモンスターを見せてもらいたいのじゃが」


 予定していた店に入るとイケシルバーは一緒に来ているゴスロリさん(仮)の自己紹介を後回しにしてそう切り出してきた。ゴスロリさん(仮)も同意しているのか単に俺に興味がないだけなのか、特に何を言うわけでもなく話を聞いている。


「ああ。卵から孵った奴はさっきから見えていたと思うがこいつだ。やちゃる」

「ちゃー……」


 俺が呼びかけたことでやちゃるは俺の腕の中から顔を出した。そして警戒しているのかイケシルバーたちの顔を恐る恐る伺っている。


「まさか、とは思っておったがやはり人型モンスターか。種族は何じゃ?」

「種族は精霊だな。卵から孵った後に1回進化させている。元は妖精だった」


 やちゃるの種族を説明しながらイケシルバーにやちゃるが孵った時のステータスと、精霊に進化した時のステータスを写したSSを送る。


「ふぅむ。生まれたばかりとは言え、偏りはあるがステータスはやや高めと言ったところかの」

「高い、というか卵から孵った段階で1度進化しているんだと思うぞ。シュラたちが1回進化した後、2段階目のステの合計に近いし」

「そうかもしれんの。ただ、妖精は未発見故、何とも言えないがの」


 やっぱり未発見なのか。霊泉に素材の事を聞いた時に上がらなかったからそうかもしれないと思っていたが。


「卵から孵った他のモンスターはどうだったんだ?」

「まちまちじゃ。進化済みの個体もいればそうでない個体もいる。何か条件があるのかもしれんと話し合っているところじゃ。それについてはある程度の見当はついているがの」

「ふーん。なるほどな。って、おいやちゃる。背中の方に行っても隠れられないから、元の位置に戻れ」


 やちゃるは警戒心が強いというかビビり何だよな。何かにつけて隠れようとするし、他のプレイヤーに見られるのも嫌っぽい。


「っ!?」


 背中に回ろうとしていたやちゃるを腕の中に戻した瞬間、イケシルバーの隣で静かにしていたゴスロリさん(仮)が反応を示した。


「何か?」

「いえ、なにも」

「そうか?」


 どうやら今の反応はなかったことにしたらしい。本人がそういうなら追及はしないがなんか嫌な予感はしている。さっきと違って視線に熱がある気がするからな。


「それで、ミヨ殿。今回の卵から孵ったモンスターで何か気付いたことはあるかの」

「どういう意味だ?」

「今回、卵から孵るモンスターはランダムのはずじゃった。しかし、それにしては各プレイヤーに合わせたモンスターが生まれていることが多い。故にウロボロスでは各プレイヤーに合わせたランダムテーブルがあったのではないかと考えているんじゃよ」


 プレイヤーに合わせたねぇ。たしかに3000ポイントも掛けて取った卵から自分に合わないモンスターが生まれて来たら嫌だよな。運営がその辺を気にして何かしていてもおかしくはないかもしれない。


「どうだろうなぁ。あ、いや、でも属性被りはしてないな。俺もなるべく被らないようにテイムしていたし、その意図を汲まれた可能性はあるか」


 まあ、まだ5体目だからそうそうに被ることは無いと思うがな。


「なるほどの。確かミヨ殿のテイムモンスターは水・植物・毒・風じゃったな。ついでにミヨ殿が光と。それで、今回が闇じゃな」

「そうだな」


 俺自身の属性も考慮されるのかわからないが可能性はありそうだ。


「霊泉のモンスターも今のところ霊属性のみじゃしの、各プレイヤーのテイムモンスターをテイムする基準を参考にしている可能性が一番高そうじゃ」

「進化しているかどうかはどうなんだ?」

「それは単純にテイムスキルのレベルによって変わってそうじゃな。参考にしているプレイヤーが少ないから確実とは言えぬが」

「あ、あー」


 有りそうだな。確かにそこがランダムだとテイムスキルが低くい状態で進化したモンスターを手に入れられるのはな。大したことではないがちょっとモヤるな。


「話は終わったの?」


 イケシルバーとの話に区切りがついたところで、ゴスロリさん(仮)が声を掛けて来た。他に話すことが無いかイケシルバーに視線を送ってみたが、これ以上聞きたいことはないらしい。


「報酬については先に話しておるしの。終わりと言えば終わりじゃのぅ」


 そう言ってイケシルバーはこちらに視線を向けるが、俺も聞きたい話は今のところないので問題はない。


「なら次は私の話、で、良いわよね?」

「あ、はい」


 ゴスロリさん(仮)はそう言いながら俺の方へ身を乗り出してきた。

 なんかちょっと凄まれたんだけど……



―――――

そろそろ装備更新かな

ついでに妖精の進化前は小妖精です。光る球体

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