第96話 第5エリアの町で転移登録してイケシルバーに会う


 

 第5エリアの主要都市に到着した。


 この街でイケシルバーに会う約束をしているが、その前にギルドに寄り、その後この間のアップデートで実装された転移装置へ登録をしに行く予定だ。


 転移装置はリスポーン地点と同じ場所だ。そういうわけなので街のほぼ中心に位置している噴水広場へ移動する。


 この街に到達しているプレイヤーの数はそこそこ居るらしい。

 まあ、余程ログイン率が低かったり、攻略に重きを置いていなかったりするプレイヤーも居るだろうからそうプレイヤー数の半数は超えていないようだが。


 噴水広場に着いてリスポーン地点の更新と転移の登録を済ませた。


 さて、これからイケシルバーに会うわけだがその場所がよくわからないんだよな。指定された場所はあるんだが、店舗名だけ示されても初めて来た街でそれを探すのはなかなかに苦労する。

 前の時はマップも送られてきていたんだが今回はなかったんだよ。その後に聞かなかった俺も駄目だが、とりあえず街に着いたと連絡はしておこう。



 街の中をぶらぶらと歩く。この街の名前は……確認するのを忘れていたな。まあ、知らなかったところで不都合はないからいいか。


 それなりに街の中を見回してみた感じ、今までの街よりも発展しているように感じられた。今までの街は路地や裏道に入ると道が土そのままだったり砂利が多かったりしたのだが、この街は裏道までしっかりと石畳の道が続いていた。


「金がある街なのか。単にエリアが進んだから発展しただけなのか」

「……です」


 隣にいたシュラが石畳を踏みしめながら不満そうな声を上げる。どうやら石畳よりも土そのままの道の方が好きなようだ。


 荒野出身のキャラメルは気にしていないようだが、森でテイムしたぷらてあたちもシュラと同じ反応をしているところからして、もともと森や平原のフィールドで生きていたテイムモンスターは石の上というのが好きではないのかもしれない。まあ、岩場に生息しているようなモンスターなら嫌な反応はしないだろうが。


「この辺りのはずじゃが……」

「ん?」


 知覚からイケシルバーらしき声が聞こえて来た。しかし、周囲を見渡すもイケシルバーの姿は確認できない。


「こちらではないですか?」

「うん?」


 今度は知らない声が聞こえて来た。今回も同行しているプレイヤーが居るのか?

 前回は霊泉で、その前はエティテプ。今回はどんな奴なのか。


「こちらですね」

「そのようじゃの」


 声がさらに近付いてきた。どうやら何かを確認しながら俺の方へ向かって来ているようだ。


「ぬ、おお。ようやく見つけたぞい」

「よかった。でもどうして路地裏に……」


 裏道から本通りに続く曲がり角からイケシルバーが姿を現した。その様子と反応からしてやはり俺を探していたようだ。

 路地裏、というか裏道に入ったのは単に探索をしていたからだな。しかし、よく考えてみれば会う約束をしているのに探索するとか、阿保じゃないか俺? 少しは指定された場所を探すとかすればいいじゃないかよ。


「すまん。初めて来た街だったから探索をしたくなってな。わるいな」

「まあ良い。儂も連絡をした際にマップをつけ忘れておったしのぅ」


 お互い様、と言いたいところだが、状況的に俺の方が悪くないか? 意図していなかったとはいえ、約束をほっぽり出そうとしていたわけだしな。


「とりあえず予定の場所に移動しません? ここで話していると何か後ろ暗い事を企んでいるように見えますから」


 イケシルバーの後ろに控えていた女性アバターのプレイヤーがそう言う。

 低身長のゴスロリ衣装か。完全に狙っている装備だな。しかし、既存の装備にはこういったものはないから、完全にプレイヤーメイドの装備になるはずだが、どれだけFs掛かっているんだろうな。


「そうじゃの。移動しようぞ。良いかのミヨ殿」


 ゴスロリさん(仮)はあまりこういう場所に居たくないのだろう。俺が返事をするよりも先に本通りの方へ行ってしまった。


「ああ、問題ない」


 俺はすぐに返事をしてイケシルバーと共に、先に行ってしまったゴスロリさん(仮)の後を追った。

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